【極感謝】★1700記念SS ①
駅に向かって早歩きで急いでいるときに、ポケットから伝わるスマホの振動。
三崎海斗は反射的にポケットからスマホを取り出し、タップして電話に出た。
「はい、三崎です」
すこし息が上がった声で話した。
「よお、海斗ひさしぶり。よかったら、今から遊ばないか?」
電話の向こうから聞こえる声は、松島リク。高校の時からの友人である。
「なんだ、リクか・・・」
「なんだ・・・って、ひどいなぁ。カラオケにでも行こうぜ」
「ごめん、今からバイト。遅刻しそうだから急いでいるんだ。また今度にしてよ」
「はぁ・・またか。海斗、最近ぜんぜん会ってないじゃん。付き合い悪いぜ」
不満げな声。
実際、高校を卒業してからリクとはほとんど会っていない。それぞれ別の大学に入ったので、普段顔を合わせることはなかった。
やれやれ・・と思いながら、海斗は答える。
「だって忙しいからしょうがないよ。大学の課題も大変だし。バイト忙しいしね」
それに、彼女との時間も大切にしたいし・・・とは言わなかった。
それが一番の優先事項ではあるのだけれど。
「バイトが忙しいって、なんのバイトしてるんだよ。コンビニとかか?」
「カメラマンのアシスタントだよ。じゃあ、もう駅だから切るね」
「じゃあ、今度時間があるときに会おうぜ。連絡くれよ。絶対だぜ!」
「あぁ。わかったよ」
海斗は通話を切り駅の改札にスマホをタッチした。
階段を駆け下り、ちょうどやってきた電車に乗る。
”ふう・・・ぎりぎり間に合いそうだ”
比較的すいている電車の車両の中で、海斗は深く息を吸い、息を整えた。
そして、さきほどの松島リクとの会話を思い出す。
最近、何度か松島リクからメールが来ていた。
映画に行こうだの、カラオケに行こうだの遊びにさそってくるのだ。
”・・・奏良と付き合っているのだから奏良と遊びに行けばいいのに”
海斗は、小さくため息をついた。
「くそっ・・・なんだよ・・・」
松島リクは顔を歪めてスマホの画面を見つめる。
「海斗のやつ・・・メッセージアプリを使っていないから、せっかく電話をしたのに
!」
繁華街近くの路上で、 ぶつぶつと文句を言いながらスマホをいじっている松島リク。高校時代はイケメンと呼ばれていた端正な顔が・・ゆがんだ表情のためすっかり見る影もない。
大学に入ってから、海斗は付き合いがものすごく悪くなった。
芸術系の大学に入ったので、課題が多く授業も大変だとメールで連絡は来ていた。しかし、まだ大学一年目である。そんなに違うものなのか?
それとも、あの年上の彼女に貢ぐためにバイトをしまくっているんじゃないのか?
リクの中では、海斗が年上の女性に騙されているのではないかという疑念が払しょくできていないのである。
リクは、スマホを操作してメッセージアプリを立ち上げる。
「くそっ・・・どいつもこいつも・・・・」
独り言にしては大きな声。
いらだった声の独り言。顔に浮かぶ表情には怒りが浮かんでいた。
その様子から周囲の通行人は避けるようにリクから距離を取る。
メッセージアプリに表示されているのは、松島リクが付き合っている彼女であるはずの山中奏良にあてたメッセージ。
2時間前に送ったメッセージは、未読のままであった。
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