【超超感謝】★1250記念SS ②
「初めまして。三崎海斗です。今日はよろしくお願いします」
「あぁ、M教授が言っていたのは君か。よろしく頼むよ」
その男性は小太りで顎髭を生やした30代後半くらいの男性だった。
胸ポケットから名刺を取り出して、海斗の方に差し出してきた。
そこには”株式会社STUDIO代表取締役 山野武司”と書かれている。
山野は海斗をジッと見て、ニヤリと笑った。
「まぁ、今日は本当のカメラマンの現場を見るいい機会だ。頑張ってくれよ」
「あ・・・はい。頑張ります」
海斗は、大学の教授からカメラマンの助手のアルバイトを紹介されて都内のある場所にやってきた。ここは、撮影スタジオとのことらしい。
教授に聞いた電話番号に電話をかけると、建物の外に山野が迎えに来てくれたのだ。
山野に連れられて建物の中に入ると、かなり大きな部屋になっていた。
足場が組まれ、白い布がかかっている。
足場にはたくさんの照明が設置されている。
室内には海斗のほかにも十数人の人物が集まっていた。
多くはアルバイトと思われるラフな格好をした若者であったが、中には背広を着こんだ男女が数名集まって話している。
山野はその背広の人たちの方に行き、何やら言葉を交わしている。
海斗はプロの撮影現場を見るのは初めてなので、緊張気味に周りをきょろきょろと見まわした。ほかのアルバイトと思われる人たちも所在なく立っている。
そんな中、2~3人が忙しそうに作業していた。彼らは山野のスタッフなのだろう。
背広の男女との話が終わったらしく、山野が部屋の真ん中に歩いていき、大きな声で呼びかけた。
「はい、注目!!それでは今日の撮影をそろそろ始める時間だ。今日は、Aコーポレーションのショッピングサイト用の写真撮影です。長時間の作業になるが、よろしくお願いします」
笑顔でみんなを見まわしながら話を続ける。
「注意事項だが、今回の撮影に使用するのは大切な商品だので、くれぐれも大切に扱うように。汚したり、傷をつけたりする事の無いように細心の注意を払ってください」
その時、扉が開いて誰かが中に入ってきた。
「おぉ、ちょうどモデルが来ました。紹介しよう・・・さぁ。こっちに来て!」
入ってきた2人の美女が山野のいる部屋の中心に歩いてきて並んで立った。
「今回モデルをしてもらう、河瀬ナナさんと山下カオリさんです。皆さん、よろしくお願いします。」
「「よろしくお願いします」」
笑顔でお辞儀をする。
「さぁ、では始めよう。河瀬さん・山下さん。控室はあちらだから、準備してください」
モデルの二人が控室の方に行くと、急に山野は真剣な表情になり指示を出す。
「じゃあ、そっちの5人。そう!君たち。君たちは商品を準備する係だ。その佐藤の指示に従ってくれ。こっちの女の子二人は着替えのサポート。こっちの4人はその田中の指示に従ってくれ」
それぞれのスタッフがアルバイトたちを集めて説明を始める。
「そして君。君は照明だ。安西ちゃん、教えてやってくれ」
山野は海斗を指さし、背の高い女性の方を向いて指示した。
「はい。じゃあ、こっち。私は安西、よろしく」
「はい、三崎海斗です。よろしくお願いします。」
海斗は、安西か照明の操作についてレクチャーを受ける。
どのスイッチがどの照明か。ダイヤルで光量の調整。それだけでなく、手で持つ照明もある。
その最中にも大量の段ボール箱が運び込まれてくる。
山野は他のスタッフとともに複数のカメラを三脚に設置したり、テーブルでPCを開いて作業をしたりしている。
あちこちで説明や指示の声が飛び、スタジオ内は喧騒に包まれていた。
やがて、スタジオに二人のモデルが再び入ってきた。
メークやヘアをセットしてきたのであろう。いっそう華やかになっている。
「それでは、始めます!!」
山野が大きな声で号令をかけた。
長い一日が始まった。
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