【大大感謝!】★800記念SS ②
”うう・・・どうしよう・・・”
オーナーとの面談を終え、ミキは家路についていた。
オーナーから提案された話は、本来は悪い内容ではなかった。それだけに、ミキには悩んでしまっていた。
やがて、自宅のマンションが見えてきた。
ミキの部屋の灯りは点いている。今日も、海斗が来ているのだ。
「ただいまぁ・・」
「あ、ミキさんおかえりなさい」
キッチンから迎えに出てくる海斗。夕食を作ってくれていたのだろう。
「ごめんね、遅くなって」
「お疲れさまでした。すぐご飯ができますからね」
そう言いながら、ミキを見つめてくる。
「あの・・・ミキさんどうしました?」
「あ・・・うん・・ちょっとね」
「何か心配事ですか?」
ミキは海斗を見つめた。
心配そうにのぞき込んでいる海斗。
きっと海斗なら、親身になって相談に乗ってもらえるだろう。
「海斗クン・・・そうね、ご飯を食べたら相談に乗ってもらえる?」
「はい、もちろんです」
夕食後、ソファに肩を並べて座る。
そして、ミキは今日起こったことを話した。
「今日ね、うちの店のオーナーから・・・」
――――
ミキが勤めるネイルサロンのオーナーがにこやかに話しを切り出してきた。
「実は、新しいお店を開こうと思うの。今度はネイルだけでなくメークもやるお店にしようと思っているのね」
「へえ。メイクもですか」
もしかしたら、店長がその店に異動?
だが、その予想は外れていた。
「それでね、高橋さんにそのお店の店長になってもらいたいと思うのよ。引き受けてくださらない?」
「え・・!?私が店長ですか?」
さすがに驚くミキ。
すると店長も嬉しそうに話す。
「ミキちゃん、学校でメークも習ってたんでしょ?ミキちゃんの友達のメークをしていたりするって言うしね。
それに、前にメークも仕事にできたらいいなって言ってたじゃない」
「はぁ・・確かにそうですけど」
もともと、ミキはメークを学校で習ってきていた。ネイルの技術はその一部であった。
ゆくゆくは、自分で店を持ちたいと思っていた時期もあったが・・・。
「まぁ、今日いきなり判断というのもあれでしょ。じゃあ、考えてみてね。今度、返事を聞きに来るから」
「あ・・・はい、わかりました」
突然のこと過ぎて、ミキは、頭なの中が混乱していた。
以前のミキならば二つ返事だったであろう。
だが今は・・・
――――
「へぇ、凄いじゃないですか。もともとミキさんはお化粧の仕事もしたいって言っていましたしね」
「うん、そうなんだけど・・・」
「何か、気になることがあるんですか?」
「・・・・」
ちょっと迷ったのち、ミキはため息をついて言った。
「だって・・・新規店舗の店長なんて絶対忙しいし・・・そしたら海斗君となかなか会えなくなるかもしれないし」
いつも明るいミキが、眼に涙をためて海斗を見つめている。
「もし、会えなくなったりして・・・それで・・」
チャンスなのは分かっている。
だが言葉にはできないが、ミキは心配なのであった。
今まで、男運が非常に悪かったミキ。
しかし、ようやく海斗という相手に巡り合ったのだ。
だが、もし仕事に追われて会えなくなり・・・
海斗と別れることになったりしたら。
そんなことが、頭の中をぐるぐると回っていたのであった。
「大丈夫ですよ。僕はいつも一緒にいますから」
海斗は優しくミキの肩を抱いた。
「ミキさんのおかげで今の僕はあるんです。今度は僕がミキさんの助けになれればいいと思ってますよ」
「海斗クン・・・」
涙を流して海斗の胸に顔をうずめるミキ。
そうするだけで胸のつかえが解けていくような気になるのであった。
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