【感謝!】★700記念SS ②

「海斗クン、本当に大丈夫?一緒に行こうか?」

「いや・・・大丈夫ですよ。それに、二人乗りできませんし」

「タクシーで後をついていくとか・・・」

「いや・・・ゆっくり帰ってくるので心配しないでください」


 早朝。

 バイクを取りに行く当日。

 海斗は、高橋ミキに相当心配された。

 ミキは、相変わらず海斗には甘々なのである。


「途中で連絡しますので、安心してください」

「うん・・・気を付けてね。事故に巻き込まれないようにね」

「はい。気を付けます」


 涙目のミキに見送られて、海斗はヘルメットを抱えて駅に向かったのであった。



――――


「ほいじゃあ、これが鍵じゃ。運転の仕方は分かるか?」

「多分・・・大丈夫だよ、じいちゃん」


 海斗は祖父からバイクの鍵を受け取った。

 父親はまだ入院している。

 このご時世、面会もままならない。

 土産と手紙を祖父に渡して、届けてもらうことにした。


「ちゃんと、近くのバイク屋で整備してもらったから大丈夫だと思うがな。気を付けて帰るんだぞ」

「ありがとう、じゃあ行ってきます」



 そうして、海斗はバイクを走らせた。



 最初のうちは、発進の際や停止するときにエンストを何度かしたが30分もすると運転のコツが分かって来た。

 幹線道路を通るときはトラックが脇を走り抜ける度に怖い思いをするが、田舎道を走ればそんなこともない。


 そして、海斗はバイクが気に入り始めていた。


 何しろ、気軽に停車することができる。

 気になる風景があった時には、路肩に停めてすぐに撮影することができる。


 小川のせせらぎ。

 緑の山肌。

 水をたたえた田園。


 カメラを構えてフィルムに収めていく。


 このバイクなら撮影の良い相棒になってくれそうである。



 停車するたびにミキにSNSでメッセージを送信しながら、都会に向かってバイクを走らせた。


 ゆっくりと。愛する人の待つ家に向かって。




◇◇◇◇◇

 SSはまだ3話くらい続きます。

 想像していたよりたくさんの人に読んでもらえてうれしいです。

 ありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る