アフターストーリー⑥ コンテスト

2月末。

今日は、1週間に一度の登校日。

もう、卒業式も近い。


海斗は一人、窓際の自席に座り外を見ていた。

周りは自習している。

海斗はもう第一志望に合格したが、他の生徒はまだ受験の最中なのだ。


視線に気づく。

奏良とリクからの視線である。


ミキさんと付き合うことになって、彼らに報告した。

すると、猛攻撃を浴びることになった。

いわく、”だまされてる”とか”うまくいくはずがない”とか。


チャイムが鳴った。昼休みである。

海斗はお弁当を持って屋上に上がろうと考えた。

その時、放送が入った。


”三崎海斗さん。至急、職員室まで来てください”



職員室に行くと、写真部の顧問の岩崎先生が待っていた。

「海斗、ちょっと聞いていいか?」

「はい、なんでしょう?」

「おまえ、A新聞社のコンテストに応募したのか?」

「ええ、しましたけど・・?」

「さっき、電話があって。お前に連絡つかないって言ってたぞ?」

「あぁ・・授業中は電源を切ってロッカーにしまってますので。

 どうかしましたか?」

「あぁ・・そうか・・」

先生が、学校の規則を忘れないでもらいたいなぁ・・

すると、岩崎先生は・・・

「お前。なんでも・写真が大賞になったらしいぞ」

「え?」

「HRで発表してもいいか?」

「え?」




「・・・というわけで、三崎君の作品がA新聞社のコンテストで大賞になったそうだ。

 みんな拍手するように」

まばらな拍手。まぁ仕方ないよ、受験中だから。


HRが終わった後。

「うわあ、三崎。これがその写真かよ」

スマホを見ながら話すクラスメート。

女子たちもひそひそと話している。

もう、Webサイトでは作品が掲載されているらしい。

「すげー美人じゃん」

「付き合いて~。大人の女性って感じで」

クラスメートの一人が聞いてきた。

「三崎、このモデルさんってプロのモデルなのかよ?」

海斗は隠す必要もないや・・と思い正直に答えた。

「いや、プロのモデルじゃないよ。僕の彼女だよ」


次の瞬間。

     しん・・・

と教室が静寂に包まれた。


誰かがつぶやいた。


「マジか・・・」


教室を誰かが、走って出て行った。

その後を、リクが追う。多分、奏良だろう。

茫然とする、クラスメートが見つめる中。海斗は鞄を持って教室から出て行った。



「おめでとう~~!大学合格に引き続いて、おめでたいね!」

ミキちゃんは嬉しそうに言った。

まだ、忙しいらしい。卒業シーズンだからとのこと。

もう、受験勉強の必要がない僕が夕ご飯を作る。お弁当も用意した。

「海斗君、これ美味しい!料理上手だね~」

「ありがとうございます。手の込んだ料理じゃないので申し訳ないんですけど」

「ううん、とっても美味しいよ!」

「うれしいです・・」

照れる海斗。

「それで、授賞式はあるの?」

「なんでも、今年は授賞式はないらしいんです」

「え~。残念」

ミキは残念がった。どうやら一緒に行きたかったらしい。


しかし、この時点ではミキは気づいていなかった。

この写真コンクールで大賞をとるということ。

これがミキの運命も大きく変わることになる。


「ミキさん、見ましたよ~。すごく素敵な写真!」

「え・・ありがとうございます」

ミキは不思議に思った。

写真?どれのことだろう・・・

「それにしても、コンテストの大賞に選ばれた写真のモデルがミキちゃんとは。びっくりしたわよ」

ミキは、ようやく海斗の撮った写真のことと分かった。

「恥ずかしいですね。どこで見たんですか?」


すると、ミキの想像を超えたこととなっていた。

「新聞に載っているわよ。あとつり革広告にも」

「え?」



その後も、ミキの勤め先のネイルサロンには写真を見たという女子が次々とやって来たのだった。


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