アフターストーリー⑤ 受験

成人式そして卒業式。

ネイリストのミキは年明けからは、物凄く忙しくなる。


そして


海斗の受験は2月。


つまり、お互い忙しくなるのだ。


でも、会わないという選択肢は二人にはなかった。

毎日、どちらかの家に泊まりに行く。


そこまではよい。


問題は・・


「海斗君は、家事・・夕食を作ったりはしなくていいからね。受験勉強に専念してね欲しいの。ね?」

「でも、ミキさんは今の時期忙しいのでしょう?無理しないでほしいんです」


夕食をどちらが作るかでもめている。

喧嘩というわけではない。

ただ、お互いが心配というだけ。

愛すればこそである。


ミキは、高校時代からの親友である美月に愚痴ってしまった。

「忙しいのは何とかならないかなあ・・海斗君の受験の助けになってあげたいだけなんだけど」


すると、美月は嬉しそうに言った。

「簡単よ、明日はどちらの家に泊まる予定なの?」

「ウチだけど?」

「こういうときはね。親友を頼りなさい」

「え?」


次の日。やはりミキは仕事で遅くなった。

21:00

ミキの家に海斗君は来ているはず。

鍵を開けてドアを開ける。

「海斗君ごめん。すぐにご飯作るわね・・・」

すると、料理のいい香りがする。


”しまった、海斗君に作らせてしまったか・・”


そう思ったときに、声をかけられる。

「おかえりなさい、ミキちゃん」

親友の、美月である。

「え?美月なんでいるの?」

「俺もいるよ」

美月の彼氏である早乙女健司がいた。

リビングに入ると、海斗君が困った顔で振り向く。

「勉強していていいって言われたんですけど・・」

テーブルの上には料理が並んでいた。

早乙女健司が言う。

「受験生は勉強に専念すればいいよ。こういう時は大人に頼るべきだ」

美月も言う。

「いつもミキちゃんに助けてもらってばかりだからね。困っているときは友達に頼ってほしいわ」


ミキは・・目頭が熱くなるのを感じた。


内心、結構困っていた。

海斗君をフォローしてあげたい。でも仕事が忙しい。

板挟みになっていて、どうすればいいかわからなかった。


そっか。親友が助けてくれる。

そのことがうれしかった。

困っているときにすぐさま、助けに来てくれる。

親友がいてくれて本当のうれしかった。


その後、美月と健司はたまに料理を作りに来てくれた。

そして、来れないときのために料理を冷凍しておいてくれた。


おかげで、2人はしばらく食事に困ることはなくなった。







2月のある日・・

その数字があることを見て、海斗は思った。

”意外と、冷静に見れるもんだな・・”


合格発表。


受験番号の数字を見て、狂喜乱舞するとか、雄たけびを上げるとか。

そういうことを想像していたが、実際にその場に立つと・・・

”あぁ・・数字があった”

くらいに冷静になれた。


でも、その後。

受かったことをミキさんの報告する段になって急にドキドキし始めた。

そっか・・・受かったことより、受かったという方が恥ずかしいな。


メッセージを送る。

すぐに電話がかかってきた。

「海斗君おめでとう!!」

その言葉を聞けたことが、一番うれしかった。


なぜなら、ミキさんのおかげで受かったも同然だから。


秋に、第一志望を変更して。写真学科に申し込んだ・・

かなり無謀だったと思う。

でも・・ミキさん。そしてその友達の美月さん・健司さん。

皆さんのおかげで合格できました。


ミキさんの声を聴いたことで、涙が浮かんできた。

ミキさん。本当にありがとう!

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