第9話 いじめが始まりました。

放課後、日課となりつつある地味子とのお茶会に向かうべく俺は家庭科室へ向かっていった。

まるでコーヒーに魔力でも伴っているかのように地味子の淹れるコーヒーなしでは生きられない体になっている。


やがて体のあらゆるところを隅々まで浸食され、待っているのは暗ーい暗い眼鏡の渦に包まれた奈落の底であることだけは確かだろう。


「あ、明君!待ってましたよ。もうコーヒーは出来てます。」


「ありがとよ。さて、飲むとするか」


心中文句を言いつつも何だかんだで飲んでしまう俺は、やはりある意味素直なんだなと自分でも思ってしまう。


「はぁ~、落ち着くなぁ」


「はぁ~、落ち着きますねぇ」


傍から見れば老年の夫婦が仲良く茶を楽しむ、のどかな光景に見えなくもないが、今更外聞なんて知ったことではないだろう。

とにかく今はこのコーヒーを楽しむ。

今日一日あった疲労をここで全て清算するのだ。


まったりまったり、良い気分やなぁ~


コーヒーに絆されたような愉悦を覚えながら、外から聞こえてくる大きな足音に耳を傾ける。

誰だか知らないけど急いでるのか?

全く、そなたもこの極楽浄土なコーヒー三昧を楽しんでみるといい。


やがて足音は次第に家庭科室の方へ近づき、とうとうその扉は開かれた。


「おお、明!、卯月さんもいるじゃん!やっぱここにいたんだな!いやぁ毎度毎度二人でどっか行くから何してんのかなって思ってたんだよ!」


守の登場である。


「守・・・、どうして」


「あ、五条さん。よかったらコーヒーどうですか?」


「お!マジっすか!いただきます!」


おい地味子、お前はなんてことをしてくれてるんだ。

各国の大富豪たちが訪れる晩餐会に所作の所の字も分からない庶民を連れてくるようなものだぞ。

なんて言って俺も同じく庶民の立場ではあるが、こいつを中に入れてやかまくしならない訳がない。


「うわっ、このコーヒーめっちゃうまい!卯月さんが淹れたんですか?」


「ふふ、そうですよ。あと同い年なのでタメ口で大丈夫です」


「分かった!いやぁ明、お前いつもこんな美味しいコーヒー飲んでるんだな!ずるいぞこの野郎!」


「分かったから頭ウリウリするのやめろ・・・」


雲一つない青空に暗雲が立ち込めるが如く、俺の頭には守の暑苦しい感情が木の根のように行き渡っていく。


地味子・・・お前はとんでもない奴を呼んでしまったぞ。



教室の隅へ移動した俺はとぼとぼとコーヒーを啜りながら、地味子と守が仲良く話してるのを引き上げられたまぐろのようにぼーっと見守っていた。


頭が変な奴同士、気が合うのかなあ。




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学生はいつの時代でも安定しない。

発作的なものなのか、環境がそうさせているのか。

時に優しくなれる時もあれば、簡単に残酷な道を歩むことも出来る。

ある程度歳をとった良識的な社会人ならしないような事も、この学生という身分の間であれば簡単にやりのけてしまうのだ。

良い意味でも、悪い意味でも、子供は残酷だ。


「何だこれ・・・」


自身の靴に入っているおびただしい量の画びょうを眼前に明はただ、うろたえることしか出来ないでいた。



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彼女が寝取られました。でも地味なクラスメイトがお世話をしてくれるので毎日幸せです。 タテモノタ @tatemonota4569

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