HAPPY BIRTHDAY

絃葉

第一章 独りの夜

深夜の十二時を告げるべく、時計の鐘は鳴り響く。いつの間にか日付は変わっていた。

部屋に鈍く輝くロウソクの火。それを取りかこうのは、僕だけだ。今この場で僕の誕生日を祝ってくれる人はいない。母は夜勤でいない。父は僕が幼い頃に離婚して以来会っていない。今年もまた、僕は一人で歳をとる。

今年で高校2年生だ。彼女の一人や二人位欲しいと願うが、叶わない。今年も好きな人から祝福の連絡はない。

僕が高校の合格発表に行った時、その場所だけ光輝いていた。振る雪は星の如く彼女を照らし、透き通るような白い肌は、雪の姫を連想させる。ふわふわと舞う黒髪は、凄く綺麗だった。一目惚れだった。その後クラスが同じになり、ある程度話せるようになった。距離が縮まりゆく中、二年生でクラスが離れてしまった。そのまま距離は開くばかりで、僕の入る隙はなくなってしまった。

画面の暗いスマホには、結局通知は来なかった。

「はぁ、なんで歳ってとるんだろ…」

そう言い僕はケーキを片付け、眠りについた。

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HAPPY BIRTHDAY 絃葉 @Noroshi-1003

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