32話 封印
一つ目の魔法陣を改良してより強力に発動するよう魔力陣を描くと、ポーションを飲んだにも関わらず先程より大量の魔力消費を感じる。目眩がしてきて冷や汗が止まらない…
(…過信してた。
ポーション飲まなかったら、過度枯渇で生死を彷徨うとこだった)
魔力量が桁外れに多い私は、今まで魔力の枯渇するほど魔力を使ったことがない。だから、自分は魔力が多いから大丈夫だという思い込みが確かにあった。
誠司さんが、ポーションを飲めと言ってくれなかったら…
この森の魔女薬師を名乗っているのに何という体たらくだ。
初めての魔力枯渇症状。
気を抜けば倒れそうなのをぐっと食いしばり、魔法薬陣の効果を観察する。
“呪い痣”は広がらず、少しずつ黒いモヤに変換されていた。上手く呪いを抑えられているようだ。
「誠司さん、呪いは今、抑えられてます。
さっきと同じようにクリスタルに少し魔力を流して呪いを誘導してください」
目眩でふらついた私を支えてくれていた誠司さんは、私を気にかけながらもクリスタルに手を置き、魔力を流している。
先程よりはゆっくりだけど、徐々に黒いモヤへ変換されている呪いがクリスタルへと吸収されていく。
(よかった…。これで大丈夫だ)
*
俺は、何が起きたのか始めはわからなかった。
呪い痣は無くなり、自分の魔力も鮮明に認知できるようになった。
《解呪》も《封印》も何の問題はなかった。
だけど、マリーの「魔法薬陣が解けてない」と言う焦りの言葉に、解けてないと何がまずいのか、俺にはわからない。
でも、答えは直ぐにわかった。
呪いがまた、左手に発現しだしていた。
マリーは、咄嗟の判断で追加の魔法薬陣を描いた。
俺には魔力陣の事はよくわからないけど、決して少なくない魔力を使ったとわかるど、マリーの顔色は血の気がなく青白くなっていく。
しかし、その魔法陣でも抑えきれず、もう一つ描くと言い出すマリーを必死に止めた。
これ以上の大量の魔力消費は命に関わる確信があったから。
本人は大丈夫だと言い張るが、そう言って亡くなった
ポーションを飲ませて、二つ目の魔法陣を描いたマリーは、先程の陣より精度を高めのか更に顔色が白い。枯渇症状でいつ倒れてもおかしくない状態なのに、気丈に俺に指示を出して呪いを封印しようと努めている。
魔法薬陣が消え始めていたので、もう、大丈夫!ポーションを飲んで!と言おうと口を開き始めた時、マリーの体は力を無くして俺の方へ倒れてくるマリーの身体を慌てて支える。
『マリー!どうした!!』
邪魔にならないようにと隣の部屋にいたハクが飛び込んできた。
主人の意識が切れたことを察知したのだろう。
「ハク、心配するな。マリーは、魔力切れだ」
『魔力切れ?!
マリーは、人間の中では1、2位の魔力量なのにか?!』
「それだけ大変な封印だったんだよ。
マリーが、二重呪詛だったと言っていた」
『二重呪詛か……
一部の人間は、本当に愚かだ……
マリーが魔力切れをおこすほどだ。
“向こう”は相当な呪詛返しを喰らっているだろう。
セージ、マリーをベッドへ寝かせよう。
あ、ついでに上級ポーション2本持ってきてくれ』
マリーをベッドへ寝かせる。
マリーの体温が低いことが気になりつつ。
『セージ、マリーにポーションを飲ませてやってくれ。
ついでに、お前の魔力をマリーに分けてもらえると助かる』
「ハク、マリーはこのままでは飲めないけど…?」
『ん?人間は、口移しができるではないか』
「口…移し」
『口移しを知らんのか?
セージが、ポーションを口に入れてそれを…』
「いや、知ってる!
説明されなくてもわかってるよ、ハク!」
『なら、なんだと言うんだ?
人命救助ではないか。
マリーを好いているお前には役得だろう?
早くしないとマリーはずっと辛いままだ。
ポーションとお前の魔力を分けてもらえば少しはマシになるはずだ。
気になるなら、我は出ている』
ハクは、さっさと部屋を出て行ってしまった。
マリーの顔を改めて見る。
顔色は青白く、唇もいつものさくらんぼのような色とは程遠い色だ。
(マリー、ごめん…)
ポーションを取り、口に含むとそっと唇を重ねた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます