第20話 調薬
呪いの剥離と浄化を促す薬の材料はほぼ揃った。
あとは、家の周りで採れるフレッシュな
呪いの剥離にローズマリー、ホーリーバジル、浄化にヒソップ、ダンデライオン、タイム、ホワイトセージ、免疫賦活のスペアミント、鎮静のラベンダーなどの若芽を摘んだ。若芽を選んで摘むのは、その植物の一番生命力が集中している部位だから。
今回の薬は、その生命力が肝になる。
いつもより早めに起きて禊を行い、食事もしっかり食べて準備は万端。
作業部屋の机には、“
〔契約書〕を広げ、全ての材料をその上に乗せて言霊を紡いでいく。
「私は、契約主 マリー・メデュシラ。
私と契約する者 宮坂 誠司 の願いにより呪いの剥離と浄化の調薬を行う。
紡ぎ終えると、手の甲の契約印が光りだして大きな力の流れを感じた。
しかし、いつもと力の性質が違う。
大きな力だけれども魔力制御がしやすい!
この感じだと、いつもは魔力抑制で抑えている魔力を解放しても大丈夫かもしれない。
段階的に抑制を解除してみる。
思った通りだ。
本来の魔力を入ってきた魔力と混ぜるといつもより格段に扱いやすい。
(なるほど…
本当に神に愛されているのね、勇者という存在は…)
早速、調薬に入る。
魔力水を1ℓほどの作り、
この作業が一番気を使い、時間がかかる。
微妙な火加減と魔力をアラクネの糸の様に細く繊細だが途切れさせないよう調整しながら半量になるまで注ぎ続ける。
沸騰させてしまうと苦味が出て効能の抽出も半端ななものになるし、注ぐ魔力が多過ぎたり途切れてしまうとせっかく抽出した効能と上手く馴染まないのだ。
細心の注意を払いながら半量にすると、火から下ろし“
“
粗熱を取っている間に少し休憩を挟むとしよう。
お茶でも飲もうと作業部屋を出ると、お茶の準備をしようとお湯を沸かしている誠司さんが居た。
「マリーお疲れ様。
ハクが、もうそろそろ休憩のはずだからって言うからお茶の準備してるところだよ。
座ってて」
「ありがとう、誠司さん。
じゃ、このハーブティーを入れて。
あと蜂蜜を持ってきてね」
私は、キッチンカウンターに缶を置く。
「りょーかい!
それはどんなブレンド?」
「ローズマリーとミントとレモングラス。
リフレッシュと集中力アップよ。
今にぴったりでしょ?」
たっぷりの蜂蜜を入れてハーブティーを楽しんだ。
「さぁ、そろそろいいかなー。
調薬に戻るね」
「マリー…お願いします。
でも、無理はしないでね」
「心配しなくても大丈夫。
今までで一番の出来の薬になると確信があるよ」
そう笑って答えると作業部屋へ戻った。
誠司さんへ言った言葉は決して気休めの嘘ではない。
私は、膨大な魔力を抑制無しで制御出来ている今の状態は奇跡に近い。
この状態が継続出来るのか、一過性なのかはわからないが、今は調薬に集中しなければ…
“
全ての《クィンテ》を入れ終わり、削って粉状にしておいたユニコーンの角をサラサラと入れて馴染んだのを確かめると弱火で魔力を入れながら更に混ぜる。すると、薄緑色だった液体は真っ青になった。
この色の変化が、薬の完成の目安だ。
粗熱を取り、ポーション用瓶より大きめの瓶瓶1本と小瓶2本。
手に取って確認すると、見る角度によって液体の中にキラキラと輝く光が見えた。
(
初代様より代々書き残している
その時と今回の薬が違うことは、“
この2点は、かなり大きな理由だろう。
(もしかしたら憧れの初代様の薬に近いものが作れたかもしれない!)
憧れの初代様に一歩近づけたかもと思うだけで踊り出してしまいそうだ。
しかし、心は踊り出してしまいそうでも実際は鉛のように重い。
魔力が枯渇することはありえないが、今回はかなりの量の魔力を消費し、制御で集中力もいつもより必要とした。
そのせいだろうか…
何だか眠たい…
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