第19話 真意と鑑定結果



[先の戦争の為に隣国あいつらは使えそうなモノは見境なく捕獲して行った。

その中に、マリーも可愛がっていたまだ幼い私の同胞はらからがいたのだ。

私は、血眼になって探した。囚われているとわかった基地にすぐさま仲間と駆けつけて壊滅させて囚われていたモノたちを解放したが、同胞はらからは既に別の施設に移された後で、もうその時にはキメラとされて戦わされていたらしい…]


思い出しているのだろう。

悲痛な面持ちだ。


[貴方が同胞はらからを解放してくれた後、同胞はらからの思念体が私の所へ来た。

自分の不注意で捕まり、家族に辛い思いをさせたことへの謝罪と辛く悲しいばかりだったけれどやっと解放されたことと解放してくれた“勇者様”にとても感謝していること、マリーには悲しむだろうから内緒にして欲しいことを伝えて虹の橋を渡って行ったよ。

それから私は、もし勇者と会う機会があればどんな人物なのか確認したいと思っていた]


「……それで、

私は、どうでしたでしょうか?」


シルヴィア様の同胞はらからがどのキメラなのかはわからない。しかし、自分が手にかけたことは間違いない。憎まれ恨まれても仕方がない。


同胞はらからが感謝していた理由がわかったよ。

私の威圧に怯まぬ度胸、自身も大変な境遇であっただろうに他を思いやれる懐の深さがある。


改めて、同胞はらからを解放してくれた事感謝する。

本当にありがとう。


マリーの事は……、まぁ…頑張れ。

あの子は、その辺かなり疎いからね……]


固かった表情が少しほぐれ、親の顔で苦笑いする。


「そうですね。

まずは、私を男だと認識してもらえる様に努力してみます」


[…そうだな。

これまで、私とハクで守ってきたのもあるが、あの子も薬師としての事しか興味がなかったからね。

これからは…、自分の幸せも考えて欲しいと思うよ……


あ、マリーが起きたようだ]


ものすごい速さでマリーがこちらに来ているのが見えた。かなりご立腹のようだ。


「シルヴィア!

どうして私、眠らされてるのよ!!!


誠司さん!誠司さん、大丈夫?

どこも怪我してない?」


俺は凄く心配されてるようだ。

隈なく観察されている。


[ただ話していただけだよ。

マリーがいると話がややこしくなるから寝ててもらったのさ。

ほら、見てわかるようにセージは怪我してないだろう?]


俺にウインクで合図しながらマリーに諭している。


「ああ、そうだよ。

ただ話をしてただけだ。

見てわかるように怪我なんてしてないだろう?」


(話し合いだけなわけないじゃない!

気がついてないみたいだけど、シルヴィアも誠司さんも立髪や髪が乱れてるんだよ?

…だけど、だけど……)


「……わかった。

じゃ、そういうことにしておいてあげる!

経緯はわかんないけど、和やかに談笑してたみたいだから。


さ、シルヴィア。本題!

私、ユニコーンの角がいるの。

早く貰って帰りたいんだけど、いいかしら?」


[わかった、わかった、私の可愛いマリー。

いつも君はせっかちさんだね。

ほら、受け取りなさい]


そう言うと、マリーの手の平に角が置かれていた。


「ありがとう、シルヴィア!

この依頼しごとが終わったら真っ先に来るわ!じゃあね!」


[あ、こらこら待ちなさい。

ハクと一緒に帰れば早いだろう?]


「「えっ?!」」


[マリーはともかく、セージも気付いてなかったのか?]


「ハクー!お帰り。

凄く早くない?」


「お帰りなさい、ハク。

ちょっとマリーに気を取られてて…アハハ」


『(ん?イヤな予感は的中か?)

ああ、早かっただろう?

アンが、大変だろうと優先して鑑定してくれたからな。結果は家に帰ってから伝える。

さぁ、帰ろう!』


「わぁーい!よかった。

ハクと一緒ならお尻痛くならないやー。

さぁ、帰ろう!誠司さん!」


「ん?ちょっと待って!

どうやって帰るんですか?」


「誠司さん、心配しなくて大丈夫!

ハクが元の大きさに戻って乗せてくれるよ!」


大型犬くらいの大きさだったハクは、大人2人を乗せてもまだまだ余りある大きさになっていた。随分と大きいので俺達が乗ってもびくともしないだろう。


『さぁ、2人共早く乗るといい。

疲れただろう?急いで帰ろう。

シルヴィア、またな』


[ああ、また今度ゆっくり話そう]







人に見つかると厄介なので〔隠密〕をかけて最短距離で家に帰ってきた。


行きは2日もかかったけれど、ハクだと半日で着く。凄いスピードなのだけれども、揺れや風圧などは遮断されているので乗り心地は快適そのものだ。


「ハクありがとう、お疲れ様。

疲れてるところ悪いけど、結果を教えてもらえる?」


『ああ。鑑定結果、S級特殊効果は…

“呪いの弱体化”らしい。

これが、アンから預かってきた手紙だ』


手渡された手紙に目を通す。


ハクが伝えてくれた通り特殊効果は

“呪いの弱体化”ということ。

この特殊効果は、アンでも初めて鑑定たらしく、特殊なメデュシラの森の魔素と私の魔力ねがいが合わさって生み出しされたのだろうとの見解のようだ。

外には出せないが、久しぶりにいい研究材料をありがとうと感謝の言葉が書いてあった。


私がまだ魔力操作が上手くできない頃に、散々、世の中に出せない珍しい効果や効能のクィンテやポーションなど生み出していた。その全てはアンの研究材料になり、新薬の礎になっているものも多い。

魔力操作ができるようになってからは、至って普通のものしか作っていなかったから、確かに久しぶりの材料提供だった。

常に色んな研究しごとを抱えてるアンにまた新たな追い打ちをかけた気もするが、本人は全くそんなことは微塵にも思っていないだろう。寧ろ、行き詰まっていた研究の突破になるのでは?と嬉々として研究しているかもしれない…


急いでメイドジョアンナさんに手紙を出した方がいいかもしれない。

いつも以上にアンの寝食に気をつけて欲しいと…




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