第9話 品定めと封印用鉱石




地下室から出てきたところで彼女の従魔ハクが座っていた。


『セージ殿、ちょっとよろしいか?』


「はい、どのようなご用件でしょうか?」


大体想像はついているが、一応確認する。


『回りくどいのは性に合わんので単刀直入に言おう。

分かっていると思うが、少し手合わせ願いたい』


カレは、彼女の従魔で長年彼女を守る忠実なる守護者である。

依頼者として先代の紹介もあるが、俺が彼女の側に置いていい人物なのか確かめたいはずだ。


「私のですね。

もちろん、喜んでお受け致します。

私もハク殿の胸をお借りしたいと密かに思っておりましたから」


か…

確かに違いない。

自分から喜んでされるとは面白いヤツだな。

少し遠いが、ここの〔結界〕の外に出よう。

中だと、感覚共有しているマリーが何事かと心配するからな』


分かったと頷き、軽く屈伸や肩回しなど準備運動をしてハクの後ろをついて行った。







夕食が終わり、食後のティータイム。

テーブルには、彼とハクが摘んできてくれたワイルドフラワー達が彩っている。

一緒に出掛けていたらしいが、お互いを呼び捨てにするくらいには仲良くなっていた。何があったのか…


「マリー様は、本当に料理がお上手ですね。

昼食も美味しかったですが、先程のオックステールシチューは、柔らかく煮込まれていて今まで食べた中で一番美味しかったです!」


「そんな大げさな…

私は、教えて貰ったレシピを自分好みに改良してるだけですから。

でも、それを美味しいとおっしゃっていただけるのは嬉しいです!先代が王都に行ってからは、ハクと2人での食事だったので…。

セージ様が美味しそうにたくさん食べてくださると作り甲斐があります。

遠慮しないで食べてくださいね」


毛足の長いラグにハクは寝そべり、まったりとした雰囲気が漂う中、

「あ、そうそう。

セージ様、ちょっと選んで欲しいものがあるんですが……」


私は、作業場へを取りに行く。


「解呪に使うのですが、セージ様は魔力はお持ちでしたよね?」


「はい、ありますが…」


いろんな種類の鉱石をテーブルに置いた。


「鉱石には、いろんな形状のものがありますが、この群晶クラスターが封印向きなんです。

それぞれに魔力を流してもらえませんか?

セージ様と相性の良いものを使います」


そして、いろんな種類の鉱石に魔力を流してもらった結果、

「セージ様は、このクリスタルの群晶クラスターと相性が良いようです。コレを使いましょう!

では、このクリスタルの浄化します。

ちょっと外の小川に行ってきますね」


「え?今からですか?

外は、もう暗いですよ?!

危ないですから私もついていきます!」


ハクがいるので危ないことはないんだけど、心配してついてきてくれるらしい。


外に出るとひんやりと肌寒く、向こうの世界より何倍も綺麗に見える色とりどりの星達と月が2つ輝いている。

家の裏にあるも小川のへりにしゃがむとそっとクリスタルを沈ませて流れないように固定する。

小川の水は、年中痺れるように冷たい。


「ここの小川は、森の奥に見えるあの聖なる山からの雪解けの水です。

この聖なる流れを利用して、クリスタルの今持っている氣を浄化します。

通常は、水の浄化の後に日光と月光に当てて自然の氣を入れるのですが、今回は呪いの入れ物として使うので必要になるまでこのままにしておきます」


「へぇー、鉱石の浄化とはそのようにするのですね」


一緒に横にしゃがんでいたセージ様も興味津々で話を聞いていた。


「別の方法での浄化もありますが、今回はこの方法が適していますので。

さぁ、家の中に戻りましょう。

お疲れでしょうからよく眠れるブレンドティーを入れますね」


家の玄関へ向かおうと立ち上がると、

「マリー様、少し冷えますからこれを…」


持ってきていたらしい上着を私に掛けてくれた。冷たい川の水で体が冷えたことに気づかれてしまったようだ。


(暗かったからわからないと思っていたのに。

よく気がつく人ね。

こんなことされ慣れてないから、何だか気恥ずかしい)


「お気遣いありがとうございます」


火照る顔に気づかれないようにお礼を言いながらそそくさと家に入り、上着を返すと作業場へと向かう。


薬草棚からバレリアンとメリッサとリンデンなどを小さなガーゼの布袋に入れると、それをティーポットに入れ、お湯を注いでよく眠れますようにと願い魔力を込めた。






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