陰と陽が交わるセカイ 一呪 四月、始まり









 この町、三城町には人ならざるモノが集う。


 それ故にこの町には霊を祓う霊祓師、妖ものを祓う妖祓師、そして、その二つのモノを祓う陰陽師が未だ存在する。簡単に言うならば裏稼業である。


 陰陽師といえばこの国では明治時代に職業という形では消えたが存在は現在にも一応残っている。そして、この町には特に陰陽師が残り立派な生業として根付いている。


























 今から始まるのは、そのような町で陰陽師として人々を守る中学生の物語である。














 桜舞う、雲一つ無い晴天。道には色とりどりの花が咲き乱れ、澄み渡る青空には生命の始まりを告げる鳥の鳴き声が響く。どこか心を躍らせる、そんな春一色な景色に人は足取り軽く弾むように道を行く。

 しかし、僕の心はそんな景色とは裏腹に曇り空が広がっています・・・・・・。

 今日は三城中学校の入学式。新しい生活が始まる日。普通ならば浮足立つであろう日に何故憂鬱になっているのかというと、外見が人とは違うからなんですね・・・・・・。

 僕は所謂「アルビノ」と呼ばれる先天性の病気を患っています。医学的に言うならば「先天性白皮症」だったと思います。メラニン色素が生まれつき作ることが出来ない、欠乏しているという病気らしいです。(実際はもっと長い名前だった気がする)確か黒人に多くみられる病気の筈。

 まあ、とにかくこの外見はなにかと人の目を引いてしまい、変に目立ってしまって居心地が非常に悪いんです。特に最初は酷いので環境が変わることが嫌で嫌で仕方がなくて・・・・・・。

 でも、僕の気持ちを汲んで三城中学校への入学を許してもらったので、多少は我慢しますけれども・・・・・・。

「玲哉君、そろそろ時間よ~!!」

 下から叔母さんの声が聞こえたので、ふと時計を見ると時間は8時20分。入学式前にクラスに入っておかないといけないのでそろそろ行かないといけない時間になっていた。

 おそらく書類なども貰うのでバッグを持って下に降りる。リビングに入ると制服姿の僕を見た叔父さんが「お、似合ってるじゃないか。」と言い、顔を綻ばせました。叔父さんの言葉を聞いた叔母さんも陽太兄さんも玲真兄さんも玲亜も頷いていました。(因みに陽太兄さんは従兄で玲真兄さんは兄、玲亜は妹のことです)

 皆の行動があまりにも一致していたからおかしくて、思わず笑ってしまいました。自分で言うのもなんですが、珍しく。(実際に珍しいと言われるんですけどね)

 正直言って僕がこうして笑えてるのは半年前までは考えられなかったこと。

 というのも、半年前まで、僕は所謂虐待なるものを実の両親から受けていたから。

 理由は単純で、僕の霊力が強いこと、そして見た目。両親にはどうしてもそんな僕を愛せなかったんだろう。というのが親戚の意見でした。

 では逆に両親はどうしたのかという疑問が出てくると思います。・・・・・・僕達の両親は交通事故で既にこの世にいません。実を言うと虐待が分かったのは両親が事故に遭って、叔父さんと叔母さんが僕達を迎えに来たからです。それを話すと長くなるので省略しますが。

 まぁ、誰が引き取るかという話になり、叔父さんと叔母さんが僕達を引き取ってくれました。

 その学年でいるのも残り半年だったからという理由でその時は引っ越さず、おじい様とおばあ様が僕達のことをお世話してくれていました。そして、僕が小学校を卒業し、玲真兄さんや玲亜の修了式が終わった頃、この三城町に引っ越してきました。

 小学校を卒業してから僕は霊力の制御の仕方、そして陰陽道と祓い方について教わりました。と言っても霊力の制御は小学生の時からおじい様に簡単に教わっていたので主に陰陽道についてなんですが。

 僕は霊力が強いだけでなく、陰陽師としての筋も良かったようで短い期間で少し、術を習得することができました。なので、まだ見習いではありますが陰陽師として活動しています。まだまだ修行の身なのだけれど。

 僕は養子になったので今は本家ですが、半年前までは分家の者でした。とは言っても、お母さんの力が弱かったから分家になっただけで、血筋としては限りなく本家に近い。そんな僕なんですが、力・・・・・・霊力は一族の中でも群を抜いて強いらしいく・・・・・・それが分かったのが生まれて間もない頃。

 その力の強さ故に両親は恐れたそうです。でも、愛おしそうに見ていたと叔母さん達は語った。実際、僕にも両親が優しかった頃の記憶があります。しかし、僕が年を重ねる度に両親の態度が変わっていきました。まるで、何かに憑りつかれるたかのように。最初は僕だけだったのに徐々に玲真兄さんや玲亜にも手を出すようになっていった。

 僕はその変わりようが怖くなって、家にいる事が辛く、苦しかった。もう、最後なんて別人でした。でも、一度だけ両親が夜中に泣いている姿を見たことがあったんです。何があったのか分からなかったけれども、あの時の両親は普段の両親とは違い、昔の二人のようで、少し安心したことを覚えている。

 今でも両親は怖いという気持ちが勝つけれど、怖くなった両親は本当の両親ではなかった。それだけは分かります。何故ああなったのか、僕には到底分からないけれど。

 ・・・・・・って、入学式前に何気が滅入ることを考えているんでしょうか・・・・・・。クヨクヨしててはダメですよね!前向きに行かなくては!

「叔父さん、叔母さん、そろそろ行きましょうか。」

「そうか、もういい時間だもんな」

「だから玲哉君呼んだのよ。何言ってるの!」

「そうだったか、確かにそうか!」

 今日から僕の新生活が始まるんだ・・・・・・!

















 ・・・・・・えげつない程に妖怪や霊がいる。それが僕の中学校に対して抱いた感想でした。いや、確かにおじい様から子供が集まる学校や公園には霊が溜まりやすいと教わってはいましたが、それにしても居過ぎではないでしょうか・・・・・・。霊力の制御を教わるまで霊を見た事がなかったのですが、前通っていた地域の学校もこうだったんでしょうか・・・・・・?

 早くもこれからの学校生活に不安を覚えたけど、取り敢えず体育館前の掲示板に貼られていたクラス割を確認し、割り当てられたクラスに向かった。

 クラスに入ると既に着いていたクラスメイトから視線が集まった。ある程度覚悟は決めてはいましたがそこまで反応を見せられると視線に慣れてはいてもちょっと傷つくんですよ・・・・・・。

 痛いくらいに刺さる視線を感じながら自分の席に向かう。僕の苗字は阿崎なので一番前の席でした。アルビノ故に視力が悪いので非常に有難いです。

 席に着き時間を見ると入学式まであとニ十分近くもある。知らず知らずのうちに緊張してたのか、早歩きしてしまったせいで予定より随分早くついてしまった。さて、どうやって時間をつぶそう・・・・・・。僕と仲良くしたい人なんて多分いないでしょうし・・・・・・あ、自分で言ってちょっと悲しくなってきた・・・・・・。

「―――――――なあ、君、名前なんて言うんだ?」

 ふと声が聞こえた方を向くと、隣の席の人がこちらを見ていた。この人勇気がある・・・・・・。気味が悪くないのでしょうか・・・・・・。外見としては、健康的な色の肌、艶のある綺麗な黒髪、少し明るめの茶色の目の如何にも健康優良児でありそうな体でちょっと、羨ましい・・・・・・。

「あ、やっべ。聞く側が先に名乗るべきだな・・・・・・。すまん、俺の名前は古賀叶人。叶えるに人で叶人。苗字の古賀ってここら辺じゃ珍しいだろ?」

 明朗快活が似合う、所謂人気者タイプなんだろうと思う。名乗られたからにはこちらも名乗るべきだと思い、古賀君に名乗ろうと決意しました。・・・・・・こういうことでも勇気を出さないといけないところに僕のコミュニケーション能力が伺えるでしょう・・・・・・。

「えっと・・・・・・ぼ、僕の名前は阿崎玲哉っていいます。よ、よろしくお願いしますね、古賀君。」

 吃ってんじゃねぇよとか言わないでください。これでも頑張ってる方なんですよぉ・・・・・・!

 少し不満気な古賀君が口を開く。

「ん~・・・・・・古賀君じゃなくて下の名前で呼んで欲しいなぁ。あ、俺、阿崎のことを玲哉って呼んでいい?嫌じゃなかったらそう呼びたいんだけど・・・・・・?」

「うぇ!?あ、は、はい!だ、大丈夫です!」

 別に呼び捨ては嫌ではないので古賀く・・・・・・じゃなくて、叶人君に勢いよく返事する。いや、勢いは必要ありませんでしたけれども・・・・・・。

 「あと敬語はどうにかならない?」という彼に「敬語の方が個人的に話しやすいんです。」と答えながらこういう人がコミュニケーション能力が高いんだろうなと考える。

 しかし表情がくるくる変わって面白いくて、よく無表情と言われる僕とは正反対の人なんだろう、何となくそう思った。




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陰と陽が交わるセカイ 水無月望 @mimaduki0624

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