四廻り

何回廻った?

あぁ、4回目か。もう4回目か。

4回も守りきれなかったのか。

はぁ、何度、何度、苦しめばいいんだ?

もう、苦しむ顔なんか見たくない。

だけどよ。前の俺に感謝するしかないよ。

この記憶があるのも、多分、前の俺のおかげだな。

……

考えてても、終わんねや、やるっかねぇか。



燃えるような夕焼けが、寝起きの目に酷く痛い。

「ふぅ…寝たな…」

机にある時計に目をやると6時45分を過ぎた頃だった。

「まとめしねぇと」

こんなだだっ広い世界で探すなんて無茶だけど…やんなきゃ先代の命が無駄になっちまうからな。

「名前の法則性としては俺の名前と同じ…ってことは相手もその可能性が大だな。名前の法則から見てそれらしい事件で1代目と2代目は目星は付いた。だが3代目が分からねぇな。」

まとめを書いていたパソコンの画面には


1代目 1廻り目

吉永よしなが 夕次

振本ふりもと 舞香

2009年 10月 八喜多やきた駅の1番線ホームからどちらとも転落、その後ちょうど来た電車に轢かれる。両者ともに同年齢の高校生。


2代目 2廻り目

中田なかた 優司

榎本えのもと 真衣嘉

2013年 5月 中田優司の自宅で火災、取り残された中田優司を助けに行き榎本真衣嘉も、焼死

両者ともに、同年齢の小学生


3代目 3廻り目


ここでだ。多分3代目が鍵を握っていると思うが、3代目の素性が分からなければどうにもならん。に付いた暗示を解くには、3代目が、必要不可欠なんだ。


「ねぇ、ゆー3人目の目星ってついてんの?」

「ん?あぁ、全くつかないな…今までの傾向的に確定してんのは、両者ともに同じ名前で、不確定だけど可能性があるのでは、年齢が近いってとこなんだけど。」

バサッ

「あ?なにこりぇ?」

素っ頓狂な声で聞き返してきた。

「年齢が近くで探してみたが、片側しか名前が同じなのがなくてな。年齢が離れても、どっちも同じ名前がないから、全くわかんね」


俺らが今までのヤツらと違うのは、2人揃っているのに、まだ死が訪れてないことだ…

死が訪れてない、という事はいつ死が訪れてもおかしくない。さらに残り、生まれ変われる回数も少ない。だったら今までの死因を調べあげ次へのヒントにするしかない。


「ねぇ、ゆー今からコンビニ行くんだけど欲しいのある?」

「いつ死ぬかも分かんねぇのに呑気だな…んじゃエナジードリンクよろし」

「あいよぉ」


「うぉ!意外とあちぃ!」

8月15日、つまりはお盆、夏真っ盛り

スマホのニュースでは県内でも十数人は熱中症で搬送されてるという内容がデカデカと表示されていた。

「明日ぁーがあるぅ ー明日ぁーがあるぅ 明日ぁーがあーるぅさぁー」

「?」


「ダメだなぁ、全く情報がねぇ、昨日から全く進展がねぇ」

パソコンに向かい合ってもう1年ちょい。

ガチャ ギィィ

「ただいま」

麻華まいかが帰ってきた。

「よう、悪いな」

「いいってことよ、ホレ代物じゃい」

カシュッ

「かァァァうめぇぇ!」

エアコンが効いてるとはいえ、夏に冷たい飲み物は最高すぎる。


「あ、3代目についてなんだけどさ。」

「ん?探してるよ今」

「ちゃうちゃう、もしかしたらさ

「……確証は?」

この話を持ち掛けた瞬間、脱力していたゆーの顔が鋭くなった

「さっき帰ってくる時お盆のやつでなんかやってたんだけど、外国人の人の遺影に向かってって言ってたんだよね。」

「元々日本人との間に起こってる事なんだ、外国人までに及ぶか?」

…だよね

「いや、まぁ待てそんなションボリした顔すんな。可能性はゼロじゃない、その線で行ってみるぞ」



3代目 3廻り(仮説)

ユーズベルト・ロジ・バテン 以下ユウジ

井安 舞衣香

2019年 7月

ユウジ→井安 舞衣香の忘れ物を届けに行ったところ、井安 舞衣香の強姦場所を目撃。止めに入り男性集団の仲間の1人に刺され致命傷を負う、その後移動し(多分助けを求めに)車に轢かれ死亡

井安 舞衣香→ユウジ経営のカフェからの帰宅途中、男性6人ほどの集団から強姦を受ける、その後、助かるが、後日、、井安 舞衣香の自宅から本人の遺体が見つかる、死因は恐らく自殺

一連の事件の話を聞きに行ったところユウジが生前に残した手紙を貰った。

内容はこの暗示についての憶測だった。


「データは取れた。ユウジが残した内容も残ってる…コレをアンタらに頼んでいいか?」

そう聞くと目つきの悪い青年は強く縦に首を振った。


今まで、死というものが俺らと隣り合わせだったはずなのに、その死が訪れなかった。

だが、俺らの目的を達成した時に分かった。

「麻華。死ぬよな俺ら。」

「ん、らしいね」

つい一昨日まで溶けてしまいそうな暑さだったのが今では肌寒く感じる。

「でも、私たちがダメでも、きっと届けてくれる。」

いつもは、ふわふわしている麻華の言葉も今日は強いがどこか優しく感じる。

その言葉に戸惑いはなかった。

哀しき暗示に縛られた男と女の4回目の物語は次へ次へと暗示を解く鍵を作り出し

運命通りに進んで行った。

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廻り、廻って、又、廻る。 おくなか @MakeHappy

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