幕間 知恵寄り添えば産まれるもの

[緊急 進士が橘菫の家に行った。]


[おう!?どういうことだ!]


[朱音が冗談を言うとは以外だな。]


[津原が一番避けてる相手だろう?]


[お?なんすか今ちょうどバイト終わったっす。]


[んえ~何々、七畝さん寝そうだったよ。]


[ちょとまつなにそれ]


[とにかく私は行くあんたらどうする?]


[俺も行くぜ!進士の事だから平気だろうがよ!]


[しかし待て、誰が家を知っている?]


[自分は知らんぞ。同じクラスとて担任に聞けまい。]


[七畝さんもこの件は難しいね~。]


[ああ!まゆちゃんなら知ってるっすよ!]


[[[[誰?]]]]


[……あたしよ。はいはい浅原真祐美ですよ、確かにあたしなら力になれるわ。]


[まゆちゃん頼もしい。]


[ありがとなまゆちゃん!]


[キャラが立ったなまゆちゃん。]


[そう言うことなら頼むぞ浅原。]


[へぇまゆちゃんねぇ。]


[……ごめんなさいっす。]


[とにかく今からここ集合。あと上三人覚悟しろ。]


そう言って添付された地図、場所はとある公園。夕日が沈みかけているこの時間に全員が集まった。津原進士救出作戦という名目で。


「それでどうしてアイツと津原が?」


[分からない。さっき進士が電話してきて、これからお邪魔してくるとかぬかしてやがった。]


「おいおい朱音怖いぜ!落ち着こう!んで警察でも呼ぶか!?」


「お前こそ落ち着け。こういう時はまず装備を整えてだな、万全のパーティーで攻略を。」


「何を言っているんだ佐熊、ひとまず津原の安全を確認してその後……は。」


「と、とりあえずバイト代持ってきたっす!お金って分かりやすいパワーっすよ。」


「はい静かに。」


パンっと手を叩く音、そうして静かな空間ができた後に七畝は話し出す。


「悪いけど年長の七畝さんが仕切るよ?それに君たちは冷静じゃない。」


[先輩はずいぶん冷静ですね。]


「……多分この中で私ほど怒ってる人もいないんじゃない?それでも君達みたいに焦って怒って、何か良い案が浮かぶ?なら好きにしなよ。私だけでもなんとかしてみせるから。」


その雰囲気に誰も口を出せなかった。七畝から感じられる圧のようなものに、皆はむしろ落ち着きを取り戻せた。


「……助かりました。先輩のおかげで、自分達も頭が回せるようになった気がします。」


「ん~なら安心だね?じゃあどしよっか、このまま橘さんの家に行って何ができる?」


「ひとまずあたしから。アイツの家はここから15分てところ、それもあってこの場所を選んだわ。あたしは津原とアイツ、何もないで終わらないと思ってる。」


[同意。話をするだけらしいけど、それなら家に呼ぶ意味がない。]


「しかし進士もバカだな!一人で行くか普通!」


「考えてやれ。進士は一人でやる時が多い、大方自分一人ならとか後で言うだろう。だからムカつくがなっ。」


「だが前嶋に連絡してる辺り、自分達は頼られていると思いたいが。そういえば橘さんのご両親は?本人があれでも止めてくれるかもしれない。」


「ああ確かにありえるっす。さすがにお母さんとかの前で、ああも狂気を見せないと思うっすけど。」


「どうかしら、共働きであたしもあまり会えたことがないわ。今あの家には間違いなく、二人きりの状態になってるわ。」


[じゃあ遠慮はいらないってわけ?]


「正面から堂々と行くか!お邪魔しますってよ!」


「開けてくれないだろ?ここはサマルたんのやり方でだな。」


「さすがに無理だ佐熊よ、家の前で出てくるのを待つしかないだろう。」


「それだと中で何かあったら怖いっすよ、もし待ってて朝まで出てこないなんてあったら……」


「そんなことなったら七畝さん、窓割って侵入しちゃおうかなぁ~。」


「さすがに捕まりますよ先輩!あ、あたしの家が近いから、そこから中の様子を見れるかもしれないわ。」


[見えない場所に陣取られたら動けもしない。]


話は続く、しかし何が正解かは誰も分からない。ただ話だけが続いていく、事態は全くよくならない。様々な案が飛び交う、時間だけが浪費されていく。

誰が言ったか、その一言が会話を止めた。


「何してんのぉ?」


全員がそちらを向く。


「あれぇ?さーくんりっくんたかちゃんだよねぇ?みぃだよ覚えてるぅ?」


[誰?]


「誰なの?」


「あんた誰よ?」


「おおみーちゃんじゃねえか!よお!」


「よおじゃないだろ、しかし奇遇だな。」


「……奇遇、なのか?」


「えぇとぉ……実はねぇ、つー君が困ってるって知らせてきてさぁ。昔つー君この辺にいたからさぁ、家変わってないかな~って向かってるとこなのぉ。」


「で、あんた誰なのよ。あたし達今から津原を助けるって話してて」


「え~それじゃぁさ、みぃも入れてよぉ!こう見えてぇ力になれちゃうよぉ?」


「まじかみーちゃん!心強いぜ!」


「七畝さん、あんま好きじゃないかな。」


[猫の手でも借りてみて良いんじゃない?使えるだけ使って捨てれば良いし。]


「こ、怖いっすって前嶋さん。」


そうして一人加わり、改めて状況の話を伝える。


「ふぅん、じゃあさぁみぃに任せてよぉ。」


[何言ってんのこいつ。]


「何言ってんのって言われてるわよ。」


「んぅ?まあいいやぁ、その家行こぉ!」


「よおし行こうぜ!」


「な、なあ本当に平気か?俺にはまだ最終回を迎えてないアニメ達が。」


「自分等にはできないことが、彼女にはできるのかもしれん。」 


「な~んか嫌な感じ。んでも津原くん助けれるならまあ、利用しますか。」


「や、やってやるっす!」


津原本人が知らないところで、集まり行動する人たちがいた。




だがしかし、全員が良い感情を持ってはいない。

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