第66話 新しい連絡先に連絡する勇気

「ん~……で、津野前よ。」


「みーちゃんだょ。」


「津野前」


「みーちゃん。」


「穣くんやい。」


「あーそれぇ!一番やなのぉ!!」


「連絡先貰ったけど、何後日面談の日でも儲けてくれるの?」


「……まぁじぃ?」


「許してやってくれ。津原の心は中々に深い傷を、正常な判断ができてないんだ。」


「はっはっ!前途多難て奴だな!」


「ったく難聴だったら殴っていたぞ。これはまあ事情がある、この鈍感さに少しは目を瞑ってやろう。」


「酷くない?津原さんだって人間なんだしさ、もっと優しく扱おう?」


そもそも恋愛とかしばらく聞きたくねえ、お一人様でのんびり息だけしてたい。それに橘さんもいる間は……不安がでかい。まだ死にたくねえしよ。


「しっかし変な巡り合わせだな。てか引っ越したりとか、もういないかと思っちゃいたんだが。」


「あ~ねぇ、離れる理由もぉ無かったしぃ。」


「その気持ちは理解できる。学生の間は大きい理由がなければ、地元を出ることは少ないだろう。」


「ロマンはあるよな!他県ってやつ!」


「バカを言うな。地域によっては放送時間や、そもそも放送してない場所もある。その点ここら辺は良い!」


「高志はぶれないな。」


まーテレビとかは地域で色々


「ねぇねぇ!」


「あー津野前と話してたんだっけ。」


「すまない津野前さん、話を変にしてしまった。」


「わりいな津野前さん!」


「す、すまない津野前さん。」


「みぃーちゃんだもぉん!」


難しい所だ。下の名前も上の名字も男っぽい?ツノじゃ駄目かな駄目か、でもみぃーちゃんのハードルは高すぎるしなぁ。


「そのうちな、そのうち。まだ今日会ったばかりだ、これから仲良くなればいつか呼べるさ。な?お前ら?」


「た、多分な。」


「おう!いつかな!」


「努力しよう……」


「うぇへぇありがとねぇ、んーとぉりっくん。」


「り、りっ君?自分か?」


「それにぃさいちゃん!」


「おお!さいちゃんだぜ!」


「それでぇたーくん?」


「たー君、だと?」


「つー君はつー君ねぇ。」


「そうか津野前。」


「流れぇ!流れでぇ、みぃーちゃんってぇ。」


「そんな簡単に言うか、いつか引きずり出してみな。」


「むぅぅぅう!」


さってと、気づけば午後。そりゃそうだ朝にここに来て、来たら来たで人探してこいって走り出して。つか朝からどれだけファミレスにいるんだ。


「そろそろ解散すっか?」


「なんだ津原、疲れたか?」


「おいおい!まだ1日はおわんねえぞ!」


「もう帰るならば録り溜めをだな。」


「んぇ?遊ぶのぉ?みぃーも行くよぉ。」


「まあお前らが平気ならそうだな……少し気晴らしで遊ぶか。」


それからは語るほどじゃない時間だった。外に飛び出した俺達は近くのショッピングモールに突入、津野前が服を見てたがそれ以外はゲーセンやボーリング。

何も考えずただ目の前を楽しんだもんさ、やっぱ気分転換は大事だなぁ。こいつらには感謝してるぜ。


「っともうこんな時間か。」


「む、気付かなかったな。自分はそろそろ夕飯がある。」


「んじゃ解散すっか!」


「それでは俺も、また明日会おう。」


「んぅ~遊んだぁ。」


「じゃあな、今日は助かったぜ。」


そうして各々が家に帰るので別れた。いや俺はあれか、もう少し朱音の家にお世話になるんだっけか。


「んじゃあ帰ろっかぁ~。」


「ああ津野前こっちか、まあ途中までよろしく。荷物持つか?」


「えぇ~優しいじゃぁん、んでも平気ぃありがとねぇ。」


「そうか。」


津野前は気に入った服があったようで、他にも組み合わせがあるとか色々買っていた。女子の買い物大変だなぁ俺なんて最後にいつ服買ったか。


「んでんでぇ、つー君はぁ明るくなったねぇ。」


「そういうお前はどうしてそう……まあいいか。」


「これぇ……ぇ?覚えてなぁい?」


「覚え……?」


「いやいやぁ。」


「いやいやいやぁ。」


「「いやいやいやいやぁ。」」


あれもしかして俺何か言った?昔の俺何かしたのか?いやいや分からんだろ、あの時の俺は本の虫だぞ。人のファッションに口出しだなんて。


「まぁ許すけどぉ、こうしてぇまた会えたしぃ。」


「お、おう悪い。」


「でもぉ思い出したらぁ、教えてねぇ?」


「と言われてもなあ。読んでた本のタイトルとかは覚えてるけど、俺の小学生での記憶それくらいしかなくてだな。」


「……辛かったねぇよぉしよしぃ。」


「重い紙袋持った腕を無理にあげるな、震えてるぞ。」


何を思ったか俺を撫でようと腕を動かすが、買った衣服の重さで上がらないようだ。


「でも辛くは無かったぞ。お前と会えたし、そっからは人生上振りって言うの?結構調子良いんだぜ。」


「えへへぇ。」


「お、この辺だよな。」


「そだねぇ。んじゃつー君、今日連絡してよぉ?」


「……え何か送るの?」


「だってぇその日にやんないとぉ、忘れてたとかぁ言われそうだしぃ。」


「あーありえるな。分かった一言くらい送っとく、忘れてたら後日クレーム受け付けるわ。」


「楽しみにしてるねぇ。」


ばいばーいと手を振りなが……いや腕が上がらずプルプル震えながら津野前と別れた。久しぶりのあいつはずいぶん変わってたが、話してみればあいつのままだ。

さて前嶋家に着いたが、やっぱインターホン押すべきだよな。お邪魔するわけだし最低限礼儀ってのは


[何してんの?]


通知の音で画面を見れば、朱音から連絡。何処から俺を見ているんだ?と後ろを向けば朱音も今帰ってきたようだ。


「奇遇だな、そっちも終わったのか女子会。」


[そっちの男子会もね。正直甘いもの食べてた、くらいの記憶しかない。]


「こっちはばか騒ぎって言葉がお似合いだったな。」


[ほら開けるから入りな。]


「やだ朱音さん男前、お邪魔します。」


そのまま流れるように朱音の部屋まで移動、朱音と俺が先に帰ってきたらしくまだ誰もいなかった。そうして部屋に入り一息つく。


「はぁ……」


[お疲れじゃん。]


「色々忘れたい事のために、夢中で遊んだからなぁ。」


[少しはスッキリした?]


「おうさ。それに久しぶりだったが、昔の知り合いと会えたしな。」


[へー誰々。]


「内緒で。」


[つかあんた、人にはぐいぐい来るくせ自分の事は全く話さないよね。]


「おおそれ才太たちにも言われたぜ。そういや話してねえと思ってさ、そっから俺の昔話をしてたんだ。それが今日の始まり。」


[何それ興味あるけど。]


「まあまあ。それで昔話してたらまだ住んでるかって話になってよ、探してたら会えたんだ。そっからそいつも交えて遊んでたけど。」


[ふーん。]


「そっちは?」


[内緒、そもそも女子の話を探るなんて良くない。]


「……俺こんだけ話したのに?」


[あんたが勝手に喋ったんでしょ。]


「はいはい悪ござんした。」


あっそうだ、津野前にメッセージでも送っとくか。なんて送るか。


「なあメッセージ仙人。」


[殴られたいの?]


「初めて連絡先交換した相手への、一言目って何を送れば良いんだ?」


[私を見習えば?]


「朱音の一言目って確か……あ、の一言だよな。」


[あ。]


「……自分で考えるわ。」


まあ軽く送れば良いだろ。


[津原です、本日はありがとうございました。]


っと。固すぎると思うがまあ、失礼はないだろ。


[津野前です、久しぶりの再開に胸踊る1日でした。またお暇な日がありましたら、昔話でもしたいと思っております。]


……あれ偽物の連絡先掴まされた?これ本当にあのギャル?嘘だろ?


[じょ~だん☆また遊ぼうねぇ。]


[んだよビビったわ、そんじゃまたな。]


よく分からない生物が手を振るスタンプがきた。


[上手くできた?]


「おう、さすが仙人助かったぜ。」


朱音に蹴られた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


まさかまた会えるなんてっ!こんな奇跡あるんだね神様!でも、わがまま言えば遅すぎるよつー君。みぃはずっとここにいたのに。

それに彼女も作って……でもその彼女と別れて?今は逆に狙われてて?なんか難しいみたいだけど。


「みぃはぁ味方だからねぇ。」


久しぶりに会えた彼の顔を思い出しながら、またこれから話せる喜びを噛み締めていた。




「でもを忘れてたのは減点かな。」

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