第65話 最近の友達に昔の友達を紹介

「ほら見つけてきたぞ、これが俺の恩人と噂されるお方だ。」


「ちょぉ待ってぇ、魔神友達いんのぉ?」


「……俺は何を見ているんだ?」


「自分も同じ気持ちだ、だが現実だ。」


「だっはっは!ビックリだな!」


まだファミレスにいた才太達を捕まえ、対面に男が三人こっちに俺と津野前さん。俺もそっちに行きたい……久々とはいえ隣は落ち着かん。


「その魔神てなんだお前。」


「お前はぁ失礼じゃぁん。」


「うっせえお前。」


「魔神めぇ!」


「俺達、帰っても許されそうだが。」


「津原が魔神か!面白い話だ!」


「それで名前は分かったのか?」


「あー名前ね名前、名前はな~あれだ。」


「ねぇ、忘れたぁ?」


「いやいや覚えてるって。あれだろ、津野前さん」


「みぃ~ちゃんで良いよぉ。」


「津野前穣だ。」


「ほれぇみぃ~ちゃんてぇ」


「ツノさんだ。」


「……怒るよぉ!」


「ま、まあ仲良しだってのは伝わったぞ。」


「賑やかになったな!」


「しかし津原、本当に探し当てるとは思っていなかったぞ。」


「お前らが突き放したんだろちくしょう。」


元を辿ればこいつらが無理言わなきゃなあ、俺だってこうも変わり果てたギャルを見つける事になるなんて……


「んでぇ?本当にぃ友達なのぉ?」


「そうだぜ!俺は角戸才太だ!」


「佐熊高志だ。」


「華狼颯岔という。」


「うぃ~みぃは津野前穣ぅ。」


「俺は津原進士。」


一度始まるとやらなきゃと感じる自己紹介、流れで俺までも名前を言ってしまったが。


「じゃあこれで終わり!みんなお疲れ様、各自解散して明日から健やかな日々を」


「そんでさぁ、今……えーとつー君はどんな感じぃ?」


「進士は色々大変だな!」


「苦労人という言葉が似合う男だ。」


「少しの青春と押し寄せる不幸に立ち向かっている。 」


「待てつー君て俺かもしかして。」


「んーとぉ、どゆことぉ?」


「おいつー君てなんだおい。」


「進士はだな!」


僕の言葉は届きません、これが無視なのでしょうか。でも僕はこの程度じゃくじけませんよええ。


「少しばかりの青春、まあ言葉は間違いないか。ついこの前まで彼女がいました。」


「えぇ!?」


「その彼女とは別れたよな!」


「ふ、ふぅん。」


「だが相手方がまだご執心なもので。」


「そうなのぉ?」


「色々と追い込まれてる現状だな。」


「追いぃ……込まれぇ。」


「もうほら遠回しに言うから混乱してるじゃねえか。よーしよし、俺が簡単に教えてあげるからな。」


「むぅぅぅぅう!!」


事の顛末を簡単にお話ししよう。つか当事者の俺ならさっさと、しかも綺麗に話せるってわけだ。


「俺は四月に彼女ができてこの前別れて円満だと思ってたらなんか執着されてメンタルを破壊されそうな現在にいるわけだ分かりやすいだろ簡単だろこういうことだよ理解しろよな。」


「??」


「進士詰めすぎだって!」


「まあしかし、事実はなんとやらっと。進士は元カノさんに狙われてドキドキしてる。」


「その方法も、というかまだ実害はないんだが。」 


「分かったか津野前さん、俺達忙しいからほれ家まで送るから帰ろう。」


「い、いやいやぁ、つー君に彼女ってぇ。」


「俺自身も信じたくないが、実際にそういう関係だった。全く最悪の初恋だよ、いや最初は幸せだったけどね?うん。」


「ど、読書魔神にぃ、彼女ぉ。」


「その読書魔神てのはなんだ!」


「大方予想はつくがな。進士が今まで名前を知らないのと同様、彼女もまた知らずに印象で覚えていたんだろう。」


「似た者同士だな。」


「う、うぅぅ。」


「え何故泣く津野前さん。」


「よそよそしぃー!」


「進士が泣かせたぞ!罪な奴め!」


「だが進士よ、これからは俺達が泣かされるかもしれんな。橘さんの動きによるが。」


「自分がいの一番にくるだろう、だが折れるつもりはない。」


「解決策はぁ何かぁ、ないのぉ?」


「そうだな……俺が引きこもりになるとか?橘さんが、あー橘さんてのが元カノなんだが。橘さんが急に転校しねぇかな。」


「さすがに無理だな!さっさと彼女でも作れ!」


「いっそ2次元に来い。所持品や待ち受けにこのサマルたんを並べるんだ!そして頬擦りし素晴らしさを説くんだ!三次元に絶望すれば希望が訪れるぞ!」


「怖い話をするな佐熊。いっそ証拠を集め、白日にさらすのが王道に思える。」


「それを信用してもらえるかどうか。」


「か、彼女がいればぁ、その子諦めるぅ?」


「さあ?なんなら作る彼女全員に嫌がらせでもされて、少なくとも高校生活は灰色確定だろ。」


「ふーぅん。」


「あーありえるな!俺達に不幸があるとか!」


「全くこれだから現実は……」


「ここまで来たら何をされるやら、楽しみにしなくてはな。」


「あ、あのさぁ!」


急に津野前が大きな声をだす。なんだなんだ?俺の素晴らしき高校生活に、思わず声を出しちまったか?是非とも立場を交換してあげたいもんだが。


「そのぉつまりぃ!つー君に彼女がぁ!」


「あーはいはい落ち着け、そんな勢いだけで乗りきろうとすな。はい深呼吸。」


「すぅ~、はぁ~。」


「はいどうぞ。」


「なんかムカつくぅ。まあつー君がぁ新しい恋をぉ?しちゃえばぁ終わるんだねぇ。」


「お?そうか、津野前さんの知り合いに飢えてる女子がいるとか?」


「んまぁそうかるかなぁ。」


「でも俺あれだぞ?今女子怖いから、初対面の知らん人となんて時間かかるし。」


「いんやぁ、つー君も知ってる人だよぉ。」


「へー誰だろう……なあお前ら、心当たりある?」


「……本気か進士?」


「にっぶいなお前!俺でも分かるぞ!」


「まあ津原を攻めてやるな。今こいつは、その方面のセンサーを切っているのだ。」


「バカにされてんのは分かるからな?」


なんだこいつら揃いも揃って……それに津野前も意味深な事言ってから下向いてるし。俺が悪いの?そうは思わないんだが、多分みんなで俺をいじめてるんだっ!


「なんだよたく、俺だけハブりやがってさあ。」


「逆に聞くぞ進士。彼女もお前も知ってる、完全に初対面じゃない相手は?」


「朱音。」


「津野前さんは知らんだろ!」


「七畝さん?」


「もっと遠いな!」


「心咲さん。」


「それは自分らの知り合いになるだろ。」


「浅原……ねえな。俺でもねえわ。」


「はぁいじゃあぁ、残りはぁ?」


「と、当時の同級生の誰か!もしかして、俺を好きだった女子がいたとか!」


「……後半はぁ、当たってるかもぉ?」


「まじかよそんな幼い頃のフラグを、今回収するのか?ちょっとまずは連絡先の交換から……」


「そだねぇ。じゃあ交換しよぉ。」


「ん?おう。」




こうして津野前と連絡先を交換……ん?

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