第58話 男同士の 時間

「それで?何すんのこの集まり。」


「そうだな!まずそこ決めるか!」


「その前に注文を決めろ。」


「注文ベルを押すのは任せてくれ。」


男4人テーブル囲んでる現在、何も頼まない訳にいかないからひとまず注文を考えるとするか。


「じゃあドリンクバーだろ、全員?」


「それとポテトだろ!」


「俺はサンドイッチを頼む。」


「自分は何もいらない、じゃあ押すぞ。」


「そのまま注文も頼むわ。」


とてものんびり始まった男子会、とは名ばかりの何か。華狼が注文まで済ませてくれたので、全員で飲み物を取りに行く俺達。

そして飲み物と食べ物が揃ったところで話しが進むわけ。


「どうだ進士!妹ちゃんは怪しいか!」


「そこの進捗が聞きたかったんか、まだなんとも言えないな。こうして休みが挟まったわけだし……明日が楽しみだぜはっはっは。」


「しかし見張られて生活するとなると進士よ、家でのんびりできているのか?」


「こうして外にいる時間が一番だ。」


「なら今日の集まりは津原の救いになってるわけだ、だが毎日外に出るわけにはいかない。」


「ああそうだ、俺が家の時間を減らせばバレる。俺は胃に穴を開ける覚悟で俺をさらけ出し……入院する前にケリをつけるっ!」


「大袈裟だな!だが穴のくだりはあり得そうだ!」


「どっちの味方だ才太。にしても学校だけでなく家も安全じゃないとは、人生どう転ぶか分からん。」


「自分も可能な限りサポートする。」


「……本当お前らには救われてるよ。で?今日の話題は暗い俺のこれからか?」


「進士よ!気になる女子とかいないのか!」


えなに才太くん気になるのあたしの事、ダメよあたしまだ前の恋が吹っ切れてなくて。


「ごめん才太くん、まだ俺そんな気持ちには」


「いきなり口説くから進士の乙女が出てしまった。」


「どういう状況だ……」


「俺フラれたか!笑えるな!」


「って急にどうしてそんなワードが。」


「進士は悲惨な初恋だったろ!だからほら、女子が怖いとかなってねえか!」


「まあなっても仕方ないか。どうだ進士、これを気にこっち側を覗くつもりは。俺がおすすめの作品を貸してやろう。」


「下手したら人間不信だな。」


「おーおー俺のメンタルをご心配か?しばらく恋愛はこりごりだが、女子が怖いとか他人が信用できないとかまでじゃ……ねえし。」


「言葉が詰まってるぞ進士。」


「思うところがあるようだな進士!」


「隠しきれてないぞ津原。」


ぐぬぬこいつら。だって考えてみろよ、ウブな初恋をお互いに始めれたはずなのに泥沼に足突っ込んでたなんて。さらに寄りを戻せとばかりに圧をかけられ、身内に内通者が生まれなんだこれ。


「女子云々はともかく、もう恋はいいよ俺。」


「そこを諦めたら駄目だろ!」


「人を好きになるのは楽しいぞ進士、相手がリアルだろうが違かろうがな。」


「いつか好い人と、その、会えるはずさ。」


「そーゆーお前らはどうなんだ?高志はさておいて。」


「俺のサマルたんへの愛を無視か!?」


まあこいつらの言葉も分からなくない。最初に食べた物が不味かったからと、食わず嫌いになってしまうなと言いたいんだろう。


「俺はな!運動できるから人気ある!らしい!」


「らしいって何だよ。」


「何でも声をかけるのは恥ずかしい!と聞いたことがある!」


「ちっ、才太は昔から運動で女子人気を獲得して。本人は自覚無く周りもえ~○○ちゃんいきなよ~と奥ゆかしい女子らしい。」


「つまりモテる分類、になるのか。」


「おう!」


「笑顔で言いきるな~こいつ。」


「モテないって言うと高志がうるさいからな!」


「黙れ無自覚お化け。」


「おお高志よ、涙を拭くのじゃ。」


「自分はどうなんだろうな、元より他人との交流が少ないんだ。」


「華狼は気が利くし話下手でもない、まあ誰も華狼がそんなキャラだと知らないから静かなんだろうな。」


「顔も悪くないし、その内謎多き好青年としてちやほやされるだろうな糞が。」


「高志も悪くないんだ!諦めるな!」


「そ、そこまで誉めるな……しかしありがとう。」


「つか華狼は中学どんな感じだったんだ?俺達高校からだし、昔を話したことねえよな。」


「自分も津原達の中学は知らないな。自分の中学は、そうだな。パッとしないが当てはまるな。」


「「「パッとしない?」」」


「ああ。自分があまり話に行かないのは知ってるだろう?中学も話に行かず、気づけば周りは周りの世界が出来上がっていた。そこに踏み込むのが、面倒だったんだ。輪を乱すものは快く思われないからな。」


「俺ともバスの席が隣じゃなきゃ、ここまで話してないだろうな。いやその後の行動もだけどよ。」


「用はきっかけが無かったし、自分から斬り込むこともしなかったんだ。だからクラスにいたけど、何してたか分からない奴止まりだ。ここだけの話、同じクラスに同じ中学の奴もいる。」


「え。」


「まじか!そいつらは華狼に気づかないのか!」


「案外気づいているんじゃないか?だが話したこともない、接点もない相手とは話すこともないんだろう。」


「だろうな。だから自分の中学はパッとせず、凄く地味な三年間だった。部活もしてはいたが、大会とか大きいイベントもなかった。」


「なるほどなぁ。つい聞いちまったけど、なんか悪かったな。」


「今度は俺達の番だな!誰から話すか!」


「お前が話せ才太、まあ簡単に済むだろうが。」


「俺か!よし話そう!」


そうして才太が話し始める。俺も何話すか決めとくか……何話せば良いんだ?


「俺は部活部活の運動男だったな!だがある日怪我しちまって部活休止!そして暗い顔してたらこいつらに会った!それが今でも続いてるわけだ!」


「……??」


「省きすぎたろ、ほら見ろ華狼が何も分かってない顔してる。」


「その後無事に復帰して成績を残し!明るく卒業して今の学校でも部活してるぜ!」


「あー悪いな華狼。今の話で分からなかった部分は、俺と高志の二人で補填できると思う。」


「つまり次は俺か。俺とサマルたんの出会いはそう、俺が現実に絶望し始めたあの頃にさかのぼる……。」


「なあ津原、この話は必要か?」


「それが必要なんだよ。実際こいつが話してるアニメは長寿でな、中学からあったんだ。んでこいつはそれで救われてるし、関わりゼロとは言えねんだ。」


「つまり逃げられないのさ!諦めようぜ!」


「そ、そうか。」

 

「話は終わったか?俺とサマルたんとのファーストコンタクトはだな」




長くなる話を覚悟するか……

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