第57話 見慣れぬ天井と俺と

「んー……朝か?朝なのか?部屋暗いな。」


体内時計からか、自然と目が覚めた俺は時間を確認しようとスマホを探す。なんだか腹の辺りが重い。


「……すー。」


「何してんのお前。」


寝てる俺の腹を枕に寝てる朱音、言葉にしても意味が分からねえ。だが気分よく寝てるらしく、今の俺の一声とて目覚ましにならなかったみたいだ。

人の眠りを邪魔しても怖いし……っとあったスマホ。見てみれば朝の7時になっていた。普段なら学校だと慌てるところだが、学生の味方祝日くんがカレンダーで赤く光ってやがるぜ。


「今思えば、だからこの提案だったか。」


つか学校ある時にこれやって、オソロでキャーキャー言われるの今の状況じゃこえぇしな。俺の外泊を利用して様子見する作戦だったが、今日は学校もなく家でもないし落ち着ける。


「ん……」


「あっ起きましたか朱音さん、俺の腹から退いてくれると助かるが。」


「よく寝れた。」


いやね?これが腕枕とか添い寝とかならさ、もう恋愛発展待ったなしの王道だと感じるさ。腹枕ぞこちとら、猫の寝方よ信頼の表れになってるわけ。

まあ人の腹で寝れる神経も凄いが、それをされて朝までよく寝る俺も俺なのかもしらん。


「さて祝日となったが……どーすっかな俺。今帰ったら朝帰りで騒がれるか?作戦としちゃ上々だが。」


[でも家にいれば何を聞かれて、見られてるか怪しいけど。]


「だよな~。」


[気にせず夜までいればいい。]


「お言葉に甘えますかね、いや甘えて良いのか?」


[完全な一泊なんてもう決定打になる。]


「どうなるかね。」


まあまだいて良いらしい、暇潰しが無くなったがこの部屋の漫画でも読ませてもらうかな。


[よお進士!久々男で遊ばねえか!]


[その言い方だと、俺が女と遊んでばっかみてえじゃねえか。]


[しかし進士!前は彼女がとうるさかったが!]


[はっはっはっ誰だそいつ俺じゃねえだろ。]


[でどうだ!高志と華狼も来るぜ!]


[どこ行きゃいい?俺の家は筒抜けだから。]


[駅前のファミレス!]


[一店しかねえから分かるわ、昼からか?]


[その予定でいこう!]


[りょ。]


思えば男だけ集まること久々だな。前は橘さんとあーだこーだ、最近は大人数であーだこーだ。たまには息抜きに野郎だけで遊ばんと。


「朱音、昼から男子会に参加してくる。」


[何その会笑える。]


「今の俺には笑顔が必要なんだよ。知ってるか?人の笑顔はストレスとかを」


[へい行ってら~。]


「んー聞く気ないわこの子ったら、お前も外に出ろよ。」


[考えておこう。]


ひとまず朝も早い。朱音は朝からゲームしてるし、朝飯でも買ってくるかね。泊まるわけだし、いくらか貯金を持ってきていて良かった。


[シュークリーム。]


「一応聞くが、それが朝ごはんになる?」


[糖は大事な成分。]


「へいへい。」


オーダーを聞いた以上買ってきてやるか。トイレを借りて着替えをし、一階に降りて玄関へ。


「あ~進士くんだ。」


「あっすいませんお邪魔してます……ごめんなさい挨拶も録にせず。」


「全然い~よ~。進士くんは……えっと……」


「もう中学からの付き合い、ですか?」


「そ~そ~それだよ。」


朱音のお母さん。めちゃくちゃ朗らかで、そして天然と言うのが当てはまる人だ。


「それ~で、朱音ちゃんはどう?」


「元気ですよ、しっかり学校も行ってますしね。」


「そ~なのそなの!朱音ちゃんてば~もう鼻が高いの~。」


「ははは~そっすね。」


「最近は~ご飯に呼ぶとね?三回に一回はさ~降りてきてくれるの~きゃー!」


一階に降りてくるだけで誉められる朱音とは。


「パパさんも喜んでて~。」


[進士遅い。]


「っとすいません、ちょっとコンビニまで行こうかと。」


「そうなの~?ご飯ならあるよ~?」


「いえ、自分が勝手にお世話になってますので。頼りきりでは情けなくなってしまいます。」


「偉いね~進士くんも~。」


よしよしと頭を撫でられる……相変わらずこっちまで明るくしてくれる人だな。今度はしっかりお土産を持ってこようと決め、外に出る俺。

朝日を浴びながら近くのコンビニへ歩く、健康的な1日の始まりは日光だな。


「っしゃいっせ。」


短縮されたいつもの挨拶を聞く。朱音の最寄りは俺の最寄りにもなり、普段利用してるコンビニへとたどり着いた。俺の買い物は決まってる、5本で100円くらいのチョコスティックパン。

ちょっと豪華にコーヒーをつけて、朱音のシュークリームも忘れず買っておく。


「あっざしたー。」


レジ袋を引っ提げて歩く帰り道、いや帰りといっても朝も朝だがな。なんの面白味もなく帰ってきた俺は、一階にいるお母さんに声をかけ朱音の部屋へ。


「帰ったぞ~。」


[本当に遅い。]


「玄関先でお前の母さんに捕まったんだよ。」


[……余計な話してない?]


「してないしてない。お宅の朱音さんは元気で、学校にもルンルンで通ってると話しただけだ。」


[あっそ。]


「ほれシュークリーム。」


受け取った物を食べ始める朱音、俺もその後ろで細々と食べ始める。朝はご飯とかパンとかあるけど、甘いものは頭を動かす。うめー。


[こっちも女子会になりそう。]


「へ?」


[津原組女子による、今後の話し合いになりそう。]


「なんだ津原組って、他の名前にしてくれよ。」


[まあまあ良いじゃん。]


「んで?女子で集まって恋ばなか?」


[さあ。大方女子同士のいじめはこうとか、対策はこうとか暗い話しかも。]


「橘さんが堂々と攻めた場合、てわけね。」


[念には念を入れるって奴。まあかも?だけどね。]


「明るい話題であることを願うよ。」


さてお互い用事はできたが時間はまだある、のんびり時間を潰す俺達であった。


「さて出掛けますかね。」


[先出といて着替える。]


「あいさっさー。」


ここで粘ったら俺は変態になる、さっさと外に出るのが正解だ。それに朱音にもペースはあるから、俺は俺で動くとしよう。駅前に向かうかね。

才太達と集まるか……何やるかな~身体動かすのも楽しいが、ゲーセンで騒ぐのも捨てがたい。つかファミレスだからな、とりあえずドリンクバーは外せないとして。


「おお進士。」


「あれ高志、まあ向かう先が同じなら会うか。」


「急に決まって悪かったな。俺も撮り貯め消化を中断して、集まりに顔を出す事にしたんだ。」


「休みでもアニメ……さすがだよお前。」


「うるさい。」


「おー怖い怖い。んでさ、今日何するか聞いてる?」


「それが言い出したのは才太だ、俺も何も知らない。」


「そっか……行くしかないわけね。」


「そういうことだ。」


高志と会えて2人で歩く。他愛ない会話を繰り広げながら、着々と目的地へ歩いていく俺ら。


「津原、それに佐熊も。」


「華狼じゃんか。」


「外で会うのは初めてか?」


「佐熊とはそうだな、よろしく頼む。」


「んで才太はどこよ。」


「先に店で待っていると聞いてるが。」


「んじゃ行こうぜ。」


才太だけ先に店か、席取り任せて悪いと感じつつ向かう。店員に先入りがいると伝え入店し、才太を探す。


「おーいこっちこっち!」


「静かに静かに。」


「角戸は声が大きいな。」


「さて俺のアニメ会を食うほどの集まり、存分に盛り上がろう。」


「なんだ高志!刺があるな!」


面子が揃った事だ、さてさて始めるとしよう。




男の世界を。

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