第55話 人の家ほどゴミは気になる
「「……」」
え?会話ですか?ないですけど。そりゃそうさ、俺は漫画で朱音はゲームしてんだ。しかも向こうヘッドホンしてるし。
漫画も一通り読み終わった俺は、暇潰しに天井を眺めながら心理に到達しかけている。
「ちっ。」
ふと舌打ちする朱音さん、見れば銃撃戦に身を投じているが負けちゃいない。なんだ?勝ってるのに舌打ちとは穏やかじゃねえな。
そんな朱音を横目に、俺はゴミ袋を片手に仕訳を始めていた。こいつ袋とか部屋にあんのに、やる気だけないからなぁ。
「ふーんふんふーん。」
「進士。」
ん、と俺に自分が着けていたヘッドホンを渡してくる。いやいやプレイヤーが着けなさいよ、俺が着けて何も出来ねえよ。
「は、はいなんでしょうか。」
「レ、レッドノイズ?まじで男なの?」
「レッドノイズ?」
まさか朱音か朱音だな間違いなく。確認のため目線を送ると、ぐっと親指を立て任せたと小さく言う。
「まあ男だな。」
「嘘だろ?いつもあんな可愛い声で、仲良くやってきたじゃんか。」
「そうだな~色々あったなー。」
「そうだよな!あれか?変に思われたならあれだが……も、もっと仲良くなりたいって話で!」
「それは男同士の友情ってことで?」
「いつもの声は……」
「マイクを通せば、好きな声色になるって世界だろ。たまたま俺のいじった声が、そう聞こえたなら悪かったな。」
「……んだよくそ。」
その後声が帰ってこない……どうした?気絶した?と心配してると朱音にヘッドホンを取られた。
「良い仕事。」
「なああいつ平気か?急に話がなくなって、こんな時は119の方だよな。」
「馬鹿、向こうが通話出ただけ。」
「そうなのかレッドノイズ」
と名前を出した瞬間足を踏まれた。
「あいつ、ここ最近チーム組んでた。」
「仲良く色々やってきたってな。」
「ゲーム仲間。」
「んで?通話で声出してみたら、コロッと落ちたって訳?」
「女と知った男は怖い。」
「あー何、口説かれたの?」
「……今度ご飯とか、良くある話。」
「良かったなたまたま俺がいて。」
その言葉に返すこともなく、また椅子に座りゲームを再開する朱音。さて俺も当初のやることやりますか、まずはペットボトルを回収しますかね。
何度か来たことあり、その度汚れが気になるから勝手に掃除する俺がいる。ほらあれじゃん?自分の部屋はあんま気にならねえけど、人の部屋だと気になる奴あるじゃん?
「おーこれは燃えない、これは燃えるか?」
「……」
女子の部屋なんだから男が、と世間様からすれば言われそうだけど。逆に考えてくれ、こんな汚部屋に女子を置いとく方が良くないだろ?おい朱音脱いだ服はちゃんと洗濯してもらえ。
「進士。」
「おうなんだ。」
「協力要請。」
と言うと朱音はイヤホンに切り替えて、片耳分を俺に渡してきた。なんだ一緒に聞くような何かが
「やっぱりレッドノイズちゃんと俺は、もっと仲良くなれるよ!」
あれこれさっきの奴じゃん、何してんのこいつ。
「うるさい。」
「て、照れてるの?そりゃそうだよね、きゅ、急にこんな話しちゃって。」
「キモい。」
「今までの相棒が一つ越えて、パートナーになんて!」
「くたばれ。」
あの時通話を一方的に切って、また勝手に合流してきたらしい。終わったとオフモードの朱音の声を聞き、また熱が再燃しちまったようだな。え?俺何すんのこれ?
「こ、今度どこで会おっか。」
「なああ、レッドノイズ。」
「なんだこの声は!」
「ああどうも先程は。」
「いえいえご丁寧にどうも……あ!?」
えっこわ急に大声出さないでよ。
「あんたはいらない、私にはこいつがいる訳。」
「な、なんだとぉ!君は誰だ。」
「いやぁ実名を出すとか、ネットだと怖いじゃないすか。」
「じゃあどんな関係なんだ!」
「どうって……」
ちらと朱音を見ると、スマホに文字を打ち込み俺に見せてきた。
[構わん盛大にやれ。]
「俺はあれだ、部屋を掃除する関係だ。」
「はぁ!?」
「つか今こうして通話に入ってるんだ、同じ部屋にいないと無理だろ。」
「そゆこと。こいつは今一緒、しかも部屋で。」
「へ、へ、へ。」
「あんたしつこいと嫌われるぞ?」
「もう嫌い、悪いけど通話切る。」
「……」
「あとネットで一緒にゲームするのは良いけど、無理に迫るのは男から見てもあれだぞ?気を付けな。」
俺の言葉を最後に、朱音は向こうを追い出して完全に通話を切った。
「よくやった。」
「あの男も災難だな、相手が朱音じゃ億が一にもねえ。」
「もう少し紳士なら考えた。」
「どーだか、まあ安心してプレイに戻れ。」
「ん。」
そしてまたゲーム、俺は掃除。ゴミの仕分けを進めていって、ようやく床を見ることが出来た。この調子で進めていこう。
しばらくして、部屋は見違えるほど綺麗になった。部屋のすみに袋を積み重ねているから、あれを捨てたら百点になる。あとその横に洗濯に出せと思う、絶対脱いでほったらかした服を積んどく。
「ご苦労。」
「朱音頼む、あれはちゃんと曜日で出せ。そしてあの服は洗濯しろ、つか言及しないだけで下着もあったからな。」
「進士のエッチ。」
「……その台詞を真顔でトーンも変えず言うな。」
「こっそり持ってったり~キャー。」
「あーうん、今からまた袋ぶちまけるぞ。」
「冗談、先お風呂入ったら。」
「まあシャワー借りるわ、結構動いたからな。」
掃除をしてると汗をかく、持ってきた着替えを持ち風呂を借りることにした。一階に降りてさっとシャワーを浴び2階に帰る、特にイベントはありませんでしたよ。
「助かったわ。」
と声をかけるがゲームをしてる朱音にゃ届かない、俺は綺麗になった部屋に転がるとする。いや~こうも綺麗にできた俺偉いわ、掃除ってのは心も洗われる。
漫画は読んでしまったので、次なる暇潰しはゲーム機。
「んーどれにすっか。」
「これ。」
急に指が出てきてゲームを指す、朱音がさっきまでのゲームをやめて俺の横にいた。いや怖いよ無音で横にくるな、そしてゲームを指定するなビックリするわ。
「昔ながらのベルトアクションだな。」
「力を貸してやろう。」
「おー助かる、どっかのボスが強くて止まってたんだよな。」
「多分3面。」
そうして2人協力で敵を倒す、シンプルなゲームを始めた。こうやって楽しく過ごせる時間、今の俺にはすげー貴重な時間になってる。
あれ俺なんで泊まってんだっけ。
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