第53話 ひとまず落ち着いて

「はぁ~疲れた。なあやばくね?俺橘さんがあんな人だと思わなんだ。」


「この場の誰も予想してないさ。」


「……あたしも、分からなかった。」


[津原あんたのせいだからね。]


「いやー女子は怖いな!」


「これだから現実は恐ろしいんだ。」


「にしてもどう動くっすかね。この場にいる全員、まとめて標的にされるすか?」


「どうだろね~七畝さんは狙われそうだけど。」


「そこまで向こうも馬鹿じゃない、ひとまず俺の追い込みを続けるだろうな。んで次に……多分浅原だ。」


「でしょうね。あたしがあんたをどうにかしたとか、菫の近くにいたからこその嘘だわ。」


「それに浅原と津原は、別れてからの方が会っている。」


[どう動こうったって、やることは決まってる。]


「おう!あれだろ!分かってるぜ俺!」


「やめとけ。何も知らずに口を出せるほど、これは簡単な話じゃない。」


「とりあえず気を付ける……すよね。自分はダメージ少ないっす、ただバイト先に何かされたら許せないっす。」


「元カノさんがどこまで、静かに動けるか見れる機会かもね。たった8人をどうやって、何をしてしかもバレずに仕掛けれるのか。」


「ったく嫌な話ばっかりだな。ひとまずここにいるお前らを、俺は信用している。浅原もこうなっちゃ、疑う余地がねえと判断するぜ。」


そういや俺と華狼でのプランも、一旦共有した方がいいか。ちらと華狼を見て相談する。


「なあ華狼、俺らの案を共有すべきか?」


「知恵はあるだけ嬉しい……が津原、急に耳元で囁くな気分悪い。」


悪いと謝りながら、俺と華狼でのバイト作戦を明かすとしよう。


「え~ごほん、前から橘さんにバレすぎてると思ってたんだ。それで俺と華狼で考えてた作戦があるが、今ここで話そうと思う。」


「ここで話して漏れたならば、また後から疑念を抱くことになるがな。」


「なら任しとけ!俺は廊下見とくからよ!」


「俺も行こう。才太は右の角だ、俺は左に立って警戒させてもらう。朱音よ後でメッセージを頼む。」


「すいません自分、バイトの時間が迫ってるっす。津原さん夜の勉強時に教えてくださいっす。」


先に心咲さんが帰った。働く予定があるというのに、すまないバイト戦士よありがとう。


[おけ、さすがに盗聴はないわな。]


「と思いたいっすね。」


「なになに~男の子同士でずるいぞ~。」


「はいすいませんだから脇腹つつかないでください。」


そうして才太と高志が廊下へ、後気になるのは窓くらいだが。一つ一つ窓が閉まってるのを見てよし!と指差し。天井裏にでも人がいなければ、今ここは密室になれてるはずだ。


「さて話そう。実は俺バイトを始めたんだ、まあこれからが本番って感じなんだが。」


「そしてこの話は津原と自分だけで握る、そうして津原が働き出した時にいつ橘さんが知るか。それを餌にしようとしていたのだ。」


「たまたま来たうちの学生が~、なんて可能性を無くすために離れた駅にしたしな。」


「そしてこれをこの集まりに、それで橘さんが知らないなら他に思い付く人物にと。順々に流していくつもりだった。」


「でも菫……あいつなら知ったとしても、黙ってるんじゃないの?今日ぶつかったんだし、あたし達が気にしてるって分かったでしょう。」


[どうかな、あいつ進士の事になると馬鹿になるみたいだし。]


「恋は盲目って奴だね。んでどこ働き?連絡先は?いつ仕事終わるの?七畝ちゃんと遊ばない?」


色々渋滞してるが、とりあえず計画は伝わってくれたと思おう。


「それで聞きたいんだが……ここにいる奴ら以外でよ、俺の情報を握れる奴って誰だ?」


「自分は橘さんのファンとやらが、時間を割いてでも津原を見張っていると思う。」


「つまりストーカー?そんなの津原の後ろを見張って、あたしが取っ捕まえるわよ。そんで色々吐かせてやるわ。」


[ないんじゃない?同じ学校の、しかも普段見ないのに自分と同じ道を歩いてたらすぐバレる。]


「七畝さんも同意見かな。向こうに替えがいくらでもって、捨て身ならあるかもだけど。津原くんは帰り道、こうなってからは警戒してるんじゃない?」


「まあ程々に。曲がり角でおもむろに立ち止まったり、たまに振り返ったり。」


「では誰が挙げられる?」


「だって津原をバレずに見れて、家を見張れて誰が出入りしたかまで把握してるのよ?不可能に近いわ……そうよ隠しカメラとかあるん」


[そもそもの前提じゃないの。]


「お?前嶋さんもそうなっちゃう?」


「どういうことだ。」


浅原の迷推理を横目に、どうやら2人は1つの可能性を出してくれたようだ。しかしなんだ?俺が見落としてるものがあるのか?


[逆に考えよう。進士の側にいても違和感なく、かつ家にいたって構わない。]


「そして元カノさんと接点があって、手伝ってと言われたらやりそうな人物だよ。」


「……ん?」


俺といても不思議なく?家にいてもおかしくない?それってつまり。


「俺の家族か?」


「身内は考えていなかったが、津原を裏切る身内とはいったい。」


「いやぁさっぱり分からんぞ。母さんか?町でばったり会って、橘さんに言われたとか……まさか父さん!?若い子の色香にやられたのか!?」


「ね、ねえ津原。一番あり得て、あんたが出してない名前があるじゃないの。」


「へ?」

 

「日葵ちゃんよ。あんたの妹で、よくあたしとあいつで話してたじゃない。あいつなら日葵ちゃんを抱えて、流させそうだけど。」


「い、いもう、と。俺に妹……ああいたな。」


「津原よ、身内を忘れるのは流石に。」


[そういえばいたね、しばらく会ってないけど。]


「おや妹さんか。私がお姉ちゃんになると、今のうちに伝えておかないとな~。」


「そうか日葵かぁ。あいつとは橘さんと別れてから、話してねえんだよ。」


「どゆこと?」


起こったことを伝える。付き合ってた時から言われてた発言と、それらを都合よく忘れていたこと。俺としては悪口散々言われて、分かんないけどごめんと言われた話だと思っちゃいるがね。


「正直身内とは言え、釣り合わないとかあの人の方がなんて毎日言われてると……割と傷ついたというか。」


「んーまあ家族でも、言って良いこと悪いことあるね。」


[そんなこと言う子だったっけ。]


「本人は発破?かけてたらしいが。」


「あたしは何も言えないわ……」


「それで津原、そのあとどうしたんだ。」


「ああ。許せないが、俺との約束を守るなら許すって条件をつけてな。それが一年俺と話さないことなんだが。」


「え、きっつ。」


[余裕。こうしてメッセすれば、簡単に解決できる。]


「そんなことになってたのね。ごめん日葵ちゃん、あたし達が……」


「なるほどな。」


「今ので柔らかくしたんだがな。本当は視界にすら~とか……そう考えるとあれだな。俺に一番近くて俺が存在すら忘れてた、完璧な。」


「だね~。津原くんに見向きもされず、部屋に入ってもドア前にいたっておかしくなくて?来客を把握できて。」


「……あたしみたいに悪かったと思ってて。」


「そこを橘さんが使ったなら、割いてしまった2人の仲をとろうとする。こうも綺麗にはまるものか。」


「まじか……あいつが?いやまあ私のせいでって言ってたが、えぇ。」


「ひとまずその作戦、試す価値ありですな~。」


[日葵ちゃんに話して、あいつが来たら百点だよ。]


「ねえ津原。日葵ちゃんがしてたとして、あんたどうするの?」


「きっと妹さんも良心の呵責、という奴に攻められたのだろう。自分が発言しすぎて、一組のカップルを別れさせたと思うならな。」


「……どうするかは分からん。でもまあ、バイトの件話してみる。それで事実だったなら、俺はもう家にすらいれねえんだが。」


まじで繋がってたらどうしよう。




公園で暮らそうかな。

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