第45話 お出掛けだよ!誰も来るな!

「かーっ、やっぱり出掛けるのはスッキリするな~ははは。」


「何を言うか津原、ジメジメとした生暖かい気候だぞ。自分はスッキリせん。」


次の休み行こうぜ!から週末を迎えた俺。あれから夜は心咲さんに見てもらいながら勉強、昼は突き刺さる視線といつ来るか分からん刺客を想像する日々でしたね。

七畝さんとか図書室メンバーとはちょっと顔をあわせ、生きていることを胸を張って報告しました。橘さんは相変わらず厚が怖いです。


「悪いね華狼くん、貴重な休みにどうもどうも。」


「全くだが……言い出したのは自分だ。最後まで付き合おう。」


ということで、男二人が一つ隣の駅に来ております。もうさ単純な考えだよね、1つずれたらそうそう同じ学校おらんやろっていう。

しかしまあ隣駅ってさ、本当に用がないと降りないから新鮮でしかたねえ。駅前に大きな商業施設が見えて、わりと賑わってる印象。


「うちの学校近くより盛り上がってるな。」


「詳しい意図は分からんが、学生の帰り道にこんな遊び場があると想像は簡単だろう。」


「あー……まあありそうだな。遊びたければ移動しろってね。」


「で?こんな駅前のモールで、働き場を探すのか津原よ。」


「いやいや無理です明るすぎる。それに最寄りじゃまさかの遭遇とか、誰かに見られちゃう~。」


きゃっと顔を押さえて言えば、見えますわ引きつった友達の顔。悪かったって自覚あんだからやめてくれよ。


「駅から少し離れてて、カフェとかファミレスみたいな学生が来ないような。」


「中々難しいな。」


「なんだ華狼、俺には当てがあるぞ。」


「本当か?」


「まあ歩こうじゃねえか、ここで突っ立ってても進まねえしな。」


そうなのだ。俺は今日という日の為に、世の中どんなアルバイトがあるか勉強してきたわけ。その中でピンと来たのが1つあったので、そのお店があるかぶらぶら歩きながら探すとしよう。


「1つ隣に来るだけで、全く印象が変わるもんだな~。おっ玩具売ってるぞあれ。」


「それでテンションを上げるな、昨今の子供でも上がらんぞ。」


「馬鹿な!?日曜の朝にやってるグッズとかあげれば、みんな喜ぶんじゃねえの?」


「現代っ子は分からんぞ。スマホなりゲーム機なり、TVを見ていないかもしらん。」


「あーまあ、それ言われると辛いわ。」


「それで?わざわざ話題に出したのだ、あそこが目的地になるのか。」


「んー今の話を聞いて少し揺れた、第二候補としよう。」


さて俺はどこを目指しているのか?最初は本屋を考えたさ、最近じゃ電子化の進みがあるから本屋は来ないかってな。次に諦めて飲食、まあ隣駅じゃ率は下がるがリスクはある。

そう俺が狙ってるのは……


「ここだな。」


「……ここ?」


「ああそうだ、文房具屋だ。」


「鉛筆やらノートを売っているあの。」


「俺もちゃんと来るの久しぶりだぜ。」


「お、おおう。」


そう俺は文房具屋に来たかったわけ。最近はどこでも文具は帰るわけだ、専門的な道具を求める人物なら来るとは思う。それも場所によっては近くのモールとか、大型店舗のどこかに入っていたりする。

こうして文房具屋、を目指してくる人物はかなり減るという俺の推理だ。(※特にデータとかありませんへへ。)


「きっと駅前にあったでかいビル、あそこで買ってここまで来ないだろ多分。」


「考えはよく分かったが、求人しているのだろうか?」


「ひとまず突入。」


さて店内に入りました。なんだかワクワクしてきた、この際にシャーペンでも買い換えようかしら。華狼はノートを見に行ったよ。


「っしゃーい。」


あっ店主だ見つけた。


「すいません。」


「はいどうしました?」


「ここってアルバイト募集とかしてます?」


「……え働きたいの?」


「えそうです可能ならばですが。」


「駅前に華やかなショッピングモールあるよ。」


「いやあそこの雰囲気好きじゃなくて。」


「でも向こうの方がナウって奴だけど。」


「レトロが良いって人もいるじゃないすか。」


「なんか詐欺とか?」


「過去に何かあったんですか?」


これは押し問答と言うのか、絶対に疑う店主とここで働きたい学生のよく分からん会話がすこぉし続いた。


「ま、まあ一人入ってくれたら、その分休めるからありがたいんだが……」


「じゃあ良いですか?後日履歴書とか、必要なもの持ってきますから。」


「んー、じゃあ明日とか空いてる?」


「あーはい、休みなので空いてます。」


「それじゃ午後に来てもらえる?面接しちゃって、そのまま少し仕事を覚えてもらうとするよ。」


「おお即日戦力、良いですね。」


「中々理解が高くて良いね君。」


「では明日、よろしくお願いします。」


「んーよろしく。」


「あっすいませんこれ。良かったな津原、これで安泰じゃないか。」


「まだ受かってないから。」


トントン拍子で話が進む、面白いもんで俺は働くことになりそうだ。いやぁここ駄目だったらどうすっかと、プランBを考えちゃいたけどさ。


「はいお釣りね。そうだ君、名前は?」


「津原進士です。急に話しかけてお手を止めてしまい、すみませんでした。」


「んー全然良いけど、まあ気にしてないよ。」


「ありがとうございます、それでは帰るか。」


「……君は働かないの?」


「自分は働かないですね。」


「おーそう。そこの津原くんの熱にやられてたから、君の冷静さに助けられたよ。」


「こいつ悪い奴じゃないので。」


「んーだろうね。」


「なんか評価されてる……」


ひとまず俺は面接を、華狼はノートを購入できて帰宅となった。え?暇なら遊んで帰ろうとかならんのって?俺達早く帰ることに全力なんだわ。


「なあ津原よ、1つ確認したいのだが。」


「なんだ華狼。」


「明日面接が終われば、そのまま労働するわけだな。」


「あー落ちる可能性を無視すりゃ、そうなるわ。」


「学校への許可はどうするのだ。」


「……」


学校への申請。担任に話してどこで何を働くか、働く理由は何かを伝えてもらう許可。そんな制度あったなぁ。


「俺はこうも考えるんだよ。許可をもらう事の大事さは理解できるが、バレるか分からないスリルによって仕事に身が入るという。」


「伝えるつもりはなさそうだな。」


「ははは!まあバレたらそん時だろ、学校で許可なんぞ貰ってたら目をつけられそうだ。」


「そっちを理由として、自分は黙っておくとする。」


「それは助かる。」


これで俺たち二人しか分からない、俺の秘密バイトの条件が出来上がった。まあ律儀に申請せずに働く奴もいるだろうし……良いよね先生。

電車に乗り込み帰ってきた最寄り駅、こっちにもモール出来たら楽しそうだと考える。


「それでは津原、明日は健闘を祈るぞ。」


「おう華狼、今日は助かったわありがとな。」


駅前でさっとお別れし、俺は自宅へ帰宅。途中コンビニで履歴書を買って書き始めるが、自己アピールやら長所短所なんて書きにくい項目止めてくれよ。

ひとまず書き上げ、明日行く時に証明写真を撮って貼り付けるか。ここまで順調なんだが、落ちたらどうしよまじで。


[津原くんや。]


[どうしました七畝さんと。]


[週始め、久しぶりに先輩とごはん食べようぜ。]


[良いんですか?変な奴に目つけれるかも。]


[君と食べたいって言ってるじゃん?]


[俺は良いですよ、じゃあ屋上で。]


[それなんだけど、場所は校舎裏にしよう。]


[えなんすか呼び出してリンチですか。]


[まーまー当日待ってるからね~。]


先輩・呼び出し・校舎裏。安全のために財布は教室に置いていくか……




ちなみにバイトは受かりました。接客方法とかレジ計算と、簡単な事だけ学んだ日曜日。

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