第43話 晴れることなき登校

「なんかこう、学校休めねえかな。」


晴れやかな朝を迎える俺の心は、とっても暗い気分であります。なんでって?いやそりゃ誰かも分からん奴らに監視されて、それが悪意あるものぽいし。


[やあ後輩くん。]


[どうも先輩さん。]


[冷たいぞ~津原くん。]


[先に仕掛けたのはそっちですよ。]


[むー、それで調子どう?]


[るんるん気分ですよ。]


[嘘つきなされ。]


[はっはっは。まあ学校には行きます。]


[気を付けてね、何かあれば泣きついていいから。]


[ママ……]


既読付いたけど無視されたわ、さすがにお母さんではなかったか。まあこれで休み出したら落ち着くかもだが、そのまま大人になるまで出れなくなる……うん。

さっさと着替えて食べて、歩き出す通学路よ。梅雨の時期にこうも晴れて、俺の行く先を綺麗に照らしてくれらぁ。


「ですよねー。」


無事登校には成功しましたよ。ちゃんと上履きもありました、でもお手紙はまだ届くみたいです。っぱ陰湿なやり口が主みたいだな、これくらいなら鼻かみに使えるから便利だけど。


「津原よ、心中察するぞ。」


「おお華狼よ。本日も俺のサタンっぷりは、どうにもオーラとして溢れてるらしいぜ。」


「ああらしいな。結論から言おう、その手紙を入れたのは他クラスの奴だった。」


「……なんで知ってんの。」


「知ったではなく、見ただな。自分も気になっていたから、早くに見に来たのだ。」


「おいおい華狼さん、株価爆上がりだよ。」


「男に言われても好かん。それで戻るが、入れた奴は違ったがそれを黙認するクラスメイトもいた。」


「つまりいたし見てたけど、我関せずって訳ね。それで関係者は難しいだろ、俺だってヤベー奴がなんかしてたら見ないフリするし。」


「まあな。断定には弱いかもしれん、ひとまず入れた奴を捕まえるのはどうだ?もしクラブが存在するなら、手っ取り早いと思うが。」


「んー……最近は昼休みも暇だしな。やってみるか、巻き込んで悪い。」


「好きでやってる。それに普通の学校生活より、楽しそうではないか。」


「以外とスリル求めてるのね君。」


そうこうしてたらチャイムが鳴り、普通に授業が始まった。橘さんは俺に接してこず、たまに見られてるかな~くらいの。それすら自意識なんたらって可能性だが。

さて昼休みにもなりまして、一応華狼とは別々に教室を出ることに。そして屋上で合流とあいなった、あそこが使えると知るのは俺くらいだ。あと七畝さん。


「津原くん。」


「あっはいなんすか。」


と意気揚々に出かける寸前、橘さんが話しかけてきた。なんだよ今あんたと絡みたくないし、もしかしてわざとか?


「えっとごめんね、急に呼び止めて。」


「用件は?」


「う、うん……」


その口の聞き方は!と強い目線を感じるが、あいにくその程度俺には効かん。つかそれだけの熱意あんなら、この人の相手してあげてよ。


「あのね、変なこと聞くんだけど。」


「はあ。」


「最近津原くん、真祐美ちゃんと仲良いよね。」


「はあ?」


「昨日一緒に帰ってたよね。ちょっと窓から見えちゃって、それで……その。」


「はあ。」


「べ、別に津原くんの邪魔とかそんなんじゃなくて!」


「は~。」


「真祐美ちゃんと、その、どんな話ししてたの?」


「はあ……」


えっこれ答えるの?なんて答えたら命は助かるの?そうだここは浅原の株を上げて、少しでもこいつの信頼を勝ち取ってもらうとしよう。


「あー浅原さんはね、こういかに橘さんが素晴らしい的な。あのープレゼンみたいな感じですね、あんだけ良い子いないよ~的な。そんな感じっすはい。」


「そ、そうなんだ。えへへ。」


「うっすちっすじゃっす。」


「え」


浅原よ、俺に感謝するんだな。こんなに良い仕事したんだから、俺に運が向くこと間違いなしだっつーの。


「……つき。」


月?月がなんだ?と橘さんの方を見たがもういなかった。なんだ空耳か、悪魔と波長があって変なの受信しちゃったかしら。

とまあ屋上に着いた俺、ここに来るまで四回くらい後ろ振り向いたが誰もおらず。うんツケられてないな。とドアを潜ると華狼と七畝さんがいた。


「あれ七畝さん。」


「やーやー津原くん、こっち来ると思ったよ。」


「だそうだ。自分よりも早くいらっしゃって、津原を待ってたらしいぞ。」


「そーなのよ。ほら何がったかなんて、文字じゃなくて言葉で聞きたくてね~。」


「あら物好き、まあ今日は話してる余裕ないかもですが。」


「えーけちー。」


「今日の放課後にでも、図書室に顔だしますから。ね?」


「むー分かったよ。それ伝えてくる、ちゃんと来てよね~。」


「ういっす。」


七畝さんも心配してくれてだろう、つか他の朱音やら才太に高志ら辺にもちゃんと話すか。


「んで華狼。肝心の入れた奴だが、見覚えあったか?」


「ないな。だからこそ他クラスなのは分かった、しかし学年が同じかは分からん。」


「こう上手い具合にさ、顔写真とかあったり……?」


「ない。」


「じゃあ似顔絵を書いて探すとか。」


「自分の美術は壊滅的だ。」


「つまり。」


「地道に歩いて探すのが、確実の方法と思う。」


「えーめんどい。」


「そう言うな。でなければそうだな……朝イチから隠れて、相手が来たら現行犯でやるか?」


「おっそれ良いな採用したい。だが、相手も逃げるし抵抗するよなあ。」


「自分等ふたりいれば、まあ出入口2つ塞げるだろう。」


「後は相手が肉体派じゃなきゃ、なんとかできるかもな。」


「うむ。」


考えは決まったな。もうめんどいから現行犯、そしてそっから繋がりを聞ければもっと奥に行ける。ただ簡単に踏み出して良いものか、浅い問題ならとても簡単に終わるんだが。


「じゃあ飯でも」


と食事を考える俺たちのスマホが、一斉にピロッと鳴った。つまり俺たち共通の誰かが、何かメッセージをしたわけだ。


[緊急 菫が何故か知ってる。]


とだけ。俺と華狼に送ってきたんだ、だが何を知ってるってんだ?ひとまず華狼と俺のスマホを共有して、会話を続けるとした。


[今華狼といる、何を知ってたんだ?]


[あんたの家に上がったこと。]


「は?」


「なんだと?」


思わず男ふたり顔合わせ、何言ってんだこいつと思った。昨日俺の家に誰が来たなんて、当事者の3人しか知らないはずだろ。


[なんで知ってんだよ、うっかり漏らしたか。]


[なわけないでしょ。向こうから急によ、家で何してたのって。]


「念のため聞くがよ、華狼何か話したか?」


「自分は橘さんと会話すらしてない。信用ないかもだが、わざわざ事態を重くする真似はせん。」


[俺たち二人も言ってないぞ。]


[じゃあなんで菫が知ってるのかしら。]


[さあ。あーだがさっき、一緒に帰ったのを見たって聞かれたわ。]


[それだけじゃ弱いわね。]


[その後尾行されたとか?]


[だとしたら、もう黒確定じゃないの。]


[にしても橘も迂闊だな。そんなの聞いたら、見張ってるって宣言したも同然じゃねえか。]


[それが目的かしらね。休まる場所なんて、何処にもないわよって。]


[まじで追い込みに来てんのかよ……他何か言われたか?]


[あんまあんたに近づかない方が良いって。]


[近づかない方が?]


[そう。]


[あんたの側にいると、不幸になるって。]


その不幸って明らかに、人為的だと思うんですけど。


[これ以上不幸になんのかよ俺。]


[まあ今後はバレないよう動くわ。]


[ああそう、何も起きなきゃいいけど。]


[そうね。]


「なあ華狼よ。」


「なんだ津原。」


「昨日俺の家に来たって話し、知りえる奴ってさ。」


「自分と浅原と津原だろう。」


「まあ橘さんの狙いはなんとなーく分かるが」


ここまでされて、もし信頼度がお互い低かったら起こりえた話しにはなるが




「誰か内通してるって事にしたいんかな。」

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