第38話 休んだ次の日の学校はだるい

「うーん健康。」


俺の風邪はピタッと治り、もはやそうであったことを忘れる元気さだ。つまりまあ登校しないとね。


[今日は?]


[おかげで治りましたよ。]


[そ。]


おかげでって所は皮肉だったんだが、まあ気づいてないか。押し掛けの勢でぶり返しとか、また別の病気を願ってたんだがなぁ。


[津原くんやい。]


[どうも先輩。]


[調子はどう?七畝さん昨日は行けなくてねえ。というか、皆会いに行くなんて言ってたけどさすがに嘘かなぁって。]


[来ましたよ。]


[……]


[病気で休んでた人の家に来て、色々お話してくれて帰りましたよ。ええそれは騒がしく。]


[くっ、七畝さんの力不足だっ!すまない。]


[先輩は悪くないですよ。そうやって普通の判断ができる部分、尊敬します。]


[津原くんの尊敬ライン低いなぁ。]


じゃあ学校で、と送りあい終了。にしても昨日の騒ぎはまじで、何だったんだ?とにかく橘さんは今きっと疲れていて、何か心がおかしくなってるのかもなうん。


「進士~あんた平気なの?」


おっと母の呼び声が聞こえましたね。着替えもそこそこに、さっさと下に降りることに。


「はーい治りましたよっと。」


「さっさと支度……はできてるわね。」


「さすがに仮病は使わねえって。」


「じゃあ食べちゃって。」


朝御飯を食べないと1日ダルい、あると思うんですよ。つまりこれを食べないと始まらないわけ、なので感謝を込めて食べ始める俺。


「ところで進士。」


「なんだい母さんや。」


「あんたどの子狙ってんの?」


「どうした母さん疲れてるんじゃねえの?」


「いやあんた、たかが風邪であんだけ心配されて~。しかも何よ、女の子もいたじゃない。」


「あーうん賑やかだったねーあはは。」


「で?で?誰なのよ言いなさいよ。」


「あっ!ごちそうさまですもう時間だ!」


逃げる、ただひたすらに逃げる。ああなった親というのはしつこい、それは本人の意思すら無視してしつこい。


「はぁ……」


ため息もそこそこに、昨日の襲撃とも言える件を思い返す。どうやら?橘さんはまだ諦めてなく?俺を?よく思ってんの?は?

もしかしたら彼女は、酷いこと言われるのが好きなのか!?


[おい。]


スマホの通知音で気づく朱音の存在、俺の暴走しだした考えを止めてくれてありがとう。


「おお朱音じゃん。」


[そういう貴様は津原。]


「おかげさまで元気なもんよ。そうだ、コンビニ寄るか?昨日のお返しってことで。」


[私がコンビニ程度の女だと。]


「……またパフェで良いですか。」


[んー、まあ及第点だ。]


「はっはっはっありがたいお言葉。」


[にしても進士、テスト平気なの?]


「あーそれな。そこは心咲さんに依頼して、勉強を見てもらう話を取り付けた。」


[なんといつの間に。]


「驚いてるけど、お前は必要ないだろ。学校にいない方が多いと囁かれるのに、勉学完璧じゃねえか。」


[今の堕落生活を確保するために、成績はキープする約束。それを果たしてるだけ。]


「そうやって実現する能力あんだから、心配ないだろうな。」


[まあね。]


おっかない奴だよ。日々ゲームで徹夜で遅刻多し、なのにしっかり点数とるしよ。わりとしっかりしてらあ。


「とりあえず今日は無理だな。心咲さんの予定が変わらなきゃ、俺に勉強を教えてくれるはずだ。」


[まあ日程は任せてやる、忘れたら覚えとけよ。]


「こわいこわい。」


のんびり登校も終わり、下駄箱で別れて自分のクラスに。さて1日空いた我がクラスよ、俺を歓迎してくれるよな。

扉をガラッと開けて席にすわ


「……花だな。」


俺の席には綺麗な花が、花瓶と共に置かれていた。んー?俺死んだのかな、もしかして幽霊なのに登校してんのか俺。 


「おお津原平気……またこれか。」


挨拶してきた華狼が、さっと花ごと花瓶を退けてくれた。またということは、これもしかして昨日もあったんか? 


「なあ華狼よ、嫌な予感はするが聞かせてくれ。これ昨日もあった?」


「正直に言おう。添えられていたぞ、ちなみに悲しみで置かれたとは思えん。あいつが不幸でラッキーの感じだった。」


「なあ、俺何かしたかな。」 


「このクラスのヘイトが数字で見れるなら、津原が一番高いだろうからな。」


「でもよぉ今でもって、そこが納得いかないぜ。そりゃ始まりは俺かもだが、もう一人になったしヘイト下がらないか?」


「だが津原よ。昨日我らがとクラスが思う橘さんが、お前の病欠で酷く動揺していた。そしてどうしようと相談していたそうな、もう先の事は言うまい。」


「前も思ったんだが、あの人一人で何もできねえのかよ。周りに言うなよめんどくせえな。」


「自分も協力はするが津原、何か嫌なことがあったら相談しろよ。」


「お母さんかお前。」


どこまで行っても橘さんはついてくる、それは俺が拒否しても無理なのか……つか人の不幸を喜ぶなよ俺も笑う側だけど。

朝の花瓶が一番大きく、他は教科書の落書きやら不幸の手紙やら。手法が古いんだよ、席を窓から投げ落とすくらいしてみろ。そして昼休み。


「どうだ津原。」


「あーこんな感じ。ペリーにちょんまげとか、信長にだて眼鏡かけられたり。」


「置き勉しているお前も悪いぞ。」


「それとこれだな。えー……あなたはこの文面を読むと不幸になる、回避不能諦めて訪れる運命に泣け。だとさ。」


「ふ、古いな。わざわざ手紙を作る辺りは尊敬するが。」


「まじで最悪だ。とにかく俺は今日図書室を離れる、そっちまで目をつけられたらたまらん。」


「そうか、自分は行って状況を話しておこう。津原の口から言うのは酷だろう。」


「華狼お前、なんで男なんだ女子ならもう俺は落ちてるぞ。」


「気持ち悪いぞ。」


華狼と別れ久々の屋上に。最近は向こうに行ってばっかだし、ここで風を浴びて食う飯もうまいもんだ。多分七畝さんも向こうに行ってるはず。

誰か追ってくるかと扉を見ていたら、案の定扉が開いた。だが想定内な俺、貯水タンクのある扉上に隠れて食べているのさ。


「あれ、ここじゃなかったかしら。」


あ?なんか聞き覚えある声だな。と少し上から顔を出すと、なんと浅原さんがいらっしゃいました。何してんのこの人。


「何してんのこの人。」


「え……きゃっ!」


いないと思ってた屋上、しかも頭上から不意にかけられた声。酷く怯えた浅原さんは見上げ、俺の顔を見るとしりもちをついちまった。酷くない?


「おいおい平気かよ。」


「あ、あんたそこで!何して!待ってなさい!!」


なんか怒りながら来ようとするが、梯子を上らんと来れん場所だ。


「いやいいよ降りるって。」


よっと軽く飛び降りる。ジーンと痺れるが無茶と言う高さじゃねえ、食事も終わってたし。


「んでなんだよ、ビビりの浅原さん。」


「う、うっさいわね!……その、昨日は悪かったわよ。」


「あー別にいいだろ。もう終わった、いや終わってねえけど。つっても別クラスのお前にゃ、関係ねえか。」


「?」


「で、それだけならもう良いぞ。お疲れさん打った所気を付けるんだな。」


「それだけじゃないわ。どうやら菫ったら、あんたの見舞いに行くかって相談をしてたみたいなの。あたし以外にもね。」


「あー。」


「それで思ったの。きっとあんたまた、面倒に巻き込まれるわよ。その忠告に来たの。」


「もうおせえよ。」


「え。」


そして俺は軽く説明する、花瓶と手紙と落書き王国の話を。そして俺が屋上にいる理由、しばらく単独行動を考えていることまでな。

単独の話しはまだ俺の中だが、こういうのは周りも被害にあいやすい。俺本人は構わんが、周りまで何か言われるのは腹が立つ。


「とにかく火が消えるまで、俺は一人になるつもりだ。」


「……考えすぎ、かしらね。」


「何がだよ。」


「菫の動きよ。前の別れた時もそう、周りに相談と言って回って。」


「そうだな。私に悪いところは~とかって、おかげで絡まれたっての。」


「あたしもその時は盲目だったわ、あんたが悪いと思って何も考えなかった。」


「ストレートにありがとう。」


「でも今回の事もあると、なんだか自然じゃないわ。」


何が言いたいんだ?一応浅原は橘さんの友達で、本来なら庇うべき相手なんだと思うが。


「つまり津原。あたしが言いたいのは」


あまりにもアホらしい、迷推理が言われた。


「わざと周りに言いふらして、あんたを孤立させてるって作戦の可能性よ!」




頭平気かこいつ?

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