第36話 疲れてるとき程重なる出来事

「こ、こんにちは。」


「……」


「あのすいません自分病人なんですけど。」


まあ治っちゃってるけど。友達と聞いてどうぞと答えた、そしたら誰が来たと思う?橘さんです。ふざけないでくれ、あと浅原下向いてんじゃねえ文句があるぞ。


「先に謝るわよ津原、あたしは止めたから。それはあの手この手考えてやってみて、頑張ったから。」


「真祐美ちゃんに病気が移るとか、本人も疲れてるとか色々言われちゃった。」


「疲れてるし移すだろうし帰ってください。」


「だから言ったでしょ菫、今こいつに会っても逆効果だって。」


「だって心配だったから……せめてこれだけで」

 

そう言って差し入れだろう袋を渡す手が止まり、何事かと目線を追えば朝朱音が持ってきてくれた袋が。そういやまだ中身あったな。


「そ、それは……誰が?」


「関係ないだろ。」


「そ、そうよ菫。きっとこいつが元気なうちに、買ってきただけよ!」


恐らく浅原は図書室グループのやり取りで、渡し手が誰か感づいてるはずだ。そうしてそれが女子、それが橘さんにどう起爆剤になってしまうのか。


「そうそう俺がカッタンダヨ。」


「ね?こいつもそう言ってるし。」


「……真祐美ちゃんさ。」


「ど、どうしたのよ菫。」


「なんか津原くんの肩持ってない?」


「はあ!?あたしこんな奴触りたくないわよ!」


「なあ今のは比喩というか、実際に触るわけじゃないからね?」


「怪しい、怪しいよ真祐美ちゃん。今日止めたのと関係あるの?」


おいおい変な方向に行きそうだよ。どうしたんだ橘さん、しばらくの間にポンコツになったのか?一番ありえねえ組み合わせなのに。


「いやいや橘さん考えてみろ。いつも俺とあんたの間で邪魔し続けたこれが、俺の味方?万が一にもないだろ。いつだって女子二人、俺一人の組み合わせじゃねえか。」


「そうよ!こいつを敵視して妨害して、とことん邪魔ばっか……し、て。」


おい浅原やめろ今後悔モード入るな、余計怪しまれるだろ止まんな。


「真祐美ちゃんは信じてるよ、それじゃ袋の件は忘れる。」


ほっと俺と浅原安心したが


「じゃあ聞きたいんだけど、昨日津原くん早く帰ったよね。」


「こわ、なんで見てるの知ってるの。」


「それに真祐美ちゃん、昨日用があるって早く帰ったよね。」


「え、ええそうね。昨日は外せなかったのよ。」

 

「二人が偶然早く帰ったの?」


おっと痛いこれは痛い、てか浅原もう少し上手く理由作れよ。そして俺をマークするな橘さん、もうあんたとは赤の他人だというのに。


「俺は体調が悪かったんだよ。ほら、今日実際に崩しただろ?予兆があったわけよ。」

 

「あたしは駅前にできたお店をね。」


「ふーん。」


おいやめろ疑った目で見るな、というかここまで深掘りすんじゃねえよ。良いだろ今の言い訳百点だろ。その時部屋をノックする音が。


「あらお邪魔しちゃったかしら?ていうか進士、いつまで女の子と話してんの。移したら悪いからそろそろ帰してあげな。」


「そうだね母さん!さあ二人とも、ここにいちゃ悪い菌にやられちゃうよ!さあさあお帰りなすって!」


「ちょ、ちょっと。」


「まだ話が~」


俺は水を得た魚、その流れにそって二人をどうぞどうぞと玄関へと進んでいただく。ありがとうお母様と心で感謝。ちゃんとマスクしてますから。

まあ病気引きずってる感出してるけど、もう治っちまってるんだよなぁ。でもバレたら帰ってくれなさそうだし?も少し弱ってるフリも悪くねえよな。


「はい二人とも感謝~でもアポ無し勘弁~。」


「津原くんてば」


「さあ菫、こんな一方的な奴なんて忘れて帰りましょ。」


浅原も俺の狙いに気づいたか、ここは協同して橘さんを外に出すしかない。さあさお帰りくだされ。その時またインターホンが。どうせドアを開けるんだ、俺が直接出迎えてやろう。


「おお進士!調子は」


うーんこの。才太たち昨日のメンバーが見えたような?気のせいかなまだ疲れてるかも。念のためもう一度確認すっかなあ。


「おお進士!元気か!」


「進士、暇だと思ってサマルたんの全話をだな。」


「いやな津原、自分は止めたぞ?大人数はよくないと。」


[今朝ぶりだなおい。]


うんフルメンバーに近いわ、天才バイトがバイトしてて良かった。いや何も良い状況じゃねえけど。


「なあお前ら。」

 

「「[ん?]」」


「今から出てくる人物を見たとて、勘違いしないだろうと信じてるからな。」


そう言って玄関をフルオープン、俺が影になっていた場所から女子二人。


「ほら菫帰ろ。」


「ね、ねえこの状況なんなの?」


「……進士!邪魔しちまったか!」


「なんだ貴様やはり誓いを破りし裏切り者か。」


[なんか厄介そうな。]


「なあ津原よ、病気の時くらい普通に過ごせないのか?」


「俺だってこうなりたくなかったよ。」


ここがこの世の地獄か、どうして俺に関係ある奴が集まると面倒しか起きないんだ。全くついてない、せっかく病気が治ったってのによ。


「あの提案なんだが、ここで全員解散にしてさ?また後日に回すってどう?」


「いやいや!厳しいぞ進士!」


「さすがに無理があるぞ進士。」


[バカ言うな進士。]


「苦しいぞ津原。」


「どうなってるの津原くん?」


「……遅いのは分かってるわよ?ごめん。」


「はぁ。」


無理だこれ逃げれねえよ。


「分かったよここでスッキリさせてやるよ、中入れ。」


「もう熱は良いのか!無理すんなよ!」


「だったら俺を解放してくれよ……もう熱もないし咳もでねえ。寝たらすっかり治ったよ。もし移っても自己責任だからな。」


と後から来た四人に言ったつもりなんだが、あれおかしいな浅原たちもくるやんなんで。こうして狭い狭い俺の自室に七人がすし詰めとなった。

本来なら何がなんでもお帰りいただきたかったが、どうせ暇になったんだ。いらぬ誤解やら変な噂になる前に、ここで終わらせてやる。願わくばこいつら全員風邪でもひいて俺の苦しみを味わえ。


[全部使わなかったの?]


「以外と使わなかったな、んでも助かったさ。そうだいくらだよ金返す。」


[貸しと言ったろ、震えて眠れ。]


「……ねえ真祐美ちゃん、津原くん独り言するくらい疲れてたのかな。」


「そうじゃないわ菫あれは、って見た方が早いわ。津原それ貸して。」


「津原呼び!?」


あーそうか橘さんはわかんねえか。言われた通りスマホを貸して、独り言ではないと証明する。


「そういうことだ、決して独り言じゃねえ。」


[そゆこと。]


「朱音はこうだからな!」


「慣れるまでの問題ですが、この方が楽だったりしますから。」


「あ、あのぉ別に敬語とかいらないよ?」


「そうだぞ高志。」


「なあ皆、ここに集まった要因を思い出そうじゃないか。」


各々好き勝手話し出した空気を、華狼が引き締めてくれた。そうだ何で集まったんだっけ、俺にもわかんねえよ。


「まずは……橘さんなんでいるの?」


「えっと、流れぇかなあ?」


「もう帰っても平気だよそれ。」


「じゃ、じゃあ!えっとぉ……そう!真祐美ちゃんが残るから!」


「じゃあ浅原お帰りねが」


「諦めなさい津原。」


「じゃあ俺!なんで橘さんがいるんだ!」


「そうだぞ進士、まさか寄りを戻し」


めちゃくちゃ睨んだら黙った高志、おうその先を言ったら持ってきたディスク破壊するぞ。


「橘さんはお見舞いらしい。」


[見舞い?なんの理由で。]


「菫と津原は同じクラス、担任から病欠だって聞いていてもたってもだったの。」

 

「それは自分が証人になろう。休み理由を聞いてから、橘さんは落ち着かない様子であった。」


「そうか!俺も心配したぞ進士!」


「だが気になるが、どうして橘さんはそこまで?津原とは……その……」


「だよな高志!そう思うよな!」


「えぇと、ちゃんと分かってるよ?でもその、聞いちゃって我慢できなくて。」


[それが迷惑って考えないの?]


「そ、それはごめんなさいです。ってこの女の子は誰なの?」


[前嶋朱音。]


「私は橘菫です。」


うん自己紹介だね。


「そして俺はそれを知り、浅原に阻止を頼み込んだんだ。」


「で、あたしは菫を止めるために頑張ったわけ。」


「ちょ、ちょっと待って!真祐美ちゃん、津原くんとやり取りしてたの!?」


「「あ。」」



やっべえ。

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