第32話 お悩み相談て聞くのも疲れる

あっという間に次の日の昼、そこまで話は飛びます。どうも私津原進士、何故か初対面レベルの人のお悩みを聞くことに。もちろん何人か巻き込んだけど。俺一人では行かんぞ!

メンバーはいつもの図書室組+華狼と浅原、先輩も呼んで豪華七人メンバー。この七人に……解けぬ難問なしとみた。


[狭い。]


「おいおい大人数だな!」


「というか進士、勝手にここを。」


「ほほーん津原くん、普段ここにいるのだなー。」


「ねえちょっと、図書室で騒いでいいわけ?」


「図書委員のお墨付きかつ、利用者がいないから平気だそうだ。」

 

凄く騒がしいですやっちまったな。バラバラだよこのチーム、元よりまとまってないのに酷いぞこれ。そんな集団を見ながら、俺は心咲さんの到着を待つ。


「ちわっすここであってます……なんすかあれ。」


「どうも心咲さん。あいつらが俺なりに集めた、ベストメンバーなんだ。」


「はあ。」


朱音は一心不乱にスマホに文字を打ち不満を唱え、才太は大人数に大盛り上がり。高志は図書室という聖域を心配し、浅原と華狼ははじめまして。


「……どうよ?」


「なんか楽しそうっすね。」


「肯定的で助かるよ。おーいお前ら、全員こっち向け~。」


手を叩き視線をこちらに、すると全員が気づいてようやく静かになる。また騒ぐのも厄介なので、テーブルを2つくっつけ広さを確保し進める。


[解放された。]


「それで!その人か進士よ!」


「そうだ。こちらが心咲さん、本日お話があっての来客になる。ちなみにここで好評価だと、俺達のテストの点数が上がる。」


「どういう理屈だそれは。」


「んで~?年頃の女の子が、どのようなお悩みかにゃー。」


「結局昨日会ったけど、あたしも詳しく聞いてないわ。」


「心咲……心咲、ああ学年一位の。どこで知り合ったんだ津原よ。」


「バイト先でたまたまっす。」


「そういうこと。さてそれじゃ、本題聞かせてくれ。」


本日の主役は心咲さん、その話を聞いて俺達がどう答えるのか。そもそも勉強できてバイトして、どんな悩みを抱えているのやら。


「自分の悩みを聞いてもらう、その為に皆さんありがとうっす。その悩み……なんすけど。」


恥ずかしいのかもじもじ心咲さん、先輩とか可愛いって言うが。そういうの良いから早くしてくれねえかな。


「自分学校がつまらないんす。」


「……え普通。」


おいこら誰だ!本人は真剣に悩んでププるのに!彼女が打ち明けた心をよぉ!笑っちゃいけねえよな!


「つまらないと!それなら部活とかどうだ!楽しいぜ!」


「ゆうて自分、やりたいことないんす。」


[気の会う仲間とつるむ]


「なになに……あーなるほど。憧れはあるっすね。」


「バイトはつまらなくないわけ?」


「毎日新鮮っすよ。色んな人と会えて、貴重な話とか聞けるっすから。」


「勉学の点数に……これは愚問だったか。」


「ぶっちゃけ授業聞いてれば、何も必要なくないすか?」


「失礼だが、友達はいるのか?」


「気づいたらクラスで自分一人っすねー。」


「んー分かるよ七畝さん。出来上がったグループに突入、それは恐ろしいってこともね~。」


「まあ一人が楽っすけど。」


「で?それを聞いてあんた、ごめん心咲さんは何が聞きたいわけ。」


「そうだな。そこが肝心だ、心咲さんはその疑問にどんな答えがほしい。」


「んー……よく分かんないんす、自分もこういう話したの始めてっすから。」


だよな、と思った。恐らく彼女はこの学校に、腹を割って話す相手がいないのかもしれない。学生ってのは厄介なもんで、同じ時間を長く過ごした相手が仲間になる。


「ちなみに聞くけど、クラスの親睦会とか参加したか?」


「してないっすね。アルバイト探しが忙しくて、直帰多かったすから。」


[スタートがやばい。]


「いやぁこっちも事情あるすから、浮かれてらんないっす。まあ最近解決して、そしたら学生の楽しさを溢してたっす。」


「はっはっは!大変だったんだな!」


「そこは笑うところなのか?」


「今からでも遅くないんじゃない?他クラスとか、話が合う人探せば良いじゃない。」


「……どう探せばいいんすか?」


「あっ……七畝さんこの話ぬーけた。ぴゅーぴゅー。」


「自分も力になれるかどうか、津原任せた。」


この時点で脱落者が出てきたか。想像はしてたよ?勉強できてバイトして、何だあいつと皆から思われてたら悩みなんてな。

七畝さんは漫画読み出し、華狼はイヤホンで自分の世界に……おいこらせめて話聞けよ。


「じゃあここで脱落決めるか。この話に着いてけるやつ、手を上げろ。」


そうして周りを見渡す。俺は乗った張本人だ、最後まで付き合う義理がある。他に浅原と才太、高志と朱音はスルーを決めるらしい。


[私に答え出るわけ。]


「俺にはサマルたんとの世界がある、他所の世界など興味がない。」


「あっうんそうだね、2人とも遊んでおいで。」


2人を本の海に解き放ち、集めた半数がやられた現状を冷静に考える。ようはあれだ、学生の何が楽しいとか友達の素晴らしさとか。え?俺スタートから転んだ人間だぞ?いけんのか?


「さてそれじゃ学生の楽しさ……何かあるか。」


「ちょっとあんた、もう打つ手がないわけ? 」


「まあそう言ってやるな!進士はあれだからな!」


「えー津原さんダメダメなんすか?」


「ふっ、自慢じゃないが四月に付き合ってもう別れた。最高のスタートだったぜ。」


「そ、そうなんすね。」


「じゃああたしから。あたしが言うなら、友達と会って話したりご飯食べたり、一緒に過ごすのが楽しいわ。」


おいおい浅原が一番有能じゃないか。


「俺は部活だな!仲間と鍛えて、目標を叶える!」


「あーえーと俺はあれだ、毎日何もないのが一番幸せだ。」


「なるほど。1人で楽しむってのは、ないんすかね。」


「難しい話ね……そもそも心咲さんは、誰かと一緒にいたいのかしら。」


「自分なりに考えたっすよ?でもほとんどの場合、誰かと何かしてるってパターンが多かったっす。」


「でも一人も悪くないぞ!筋トレとかできる!」


「心咲さんが筋肉に興味あると、お前本気で思うか?」


「思わん!」


「筋肉はちょっと……すいませんっす。」


「別に一人が悪いか?てなると、悪くねえしな。」


「だったら学校に来なくても、全部外で出来ちゃうじゃないすか。」


「もしかしてもう学校に来る意味、まで来てるって事なの?」


「もちろん勉強して卒業して、必要なことと分かってるっす。だから通うっすけど。」


「どうせならって感じか?」


「そっすね。」


まあ毎日嫌々通うのも辛かろう。だから学校に良い点を見つけて、自分なりにマシにしようと考えたのかもな。


「ぶっちゃけバイト先に恵まれて、そこにいる時間の方が楽しいっすから。」


「んーそうか!進士俺も無理かも!」


「あーうんご飯食べなー。」


熱血も駄目だったか。気づけば俺と浅原のまさかタッグ、しかしこの2人が知恵を絞れるやら。


「とりあえず一人じゃ他所と変わらんなら、友達作りとかベタに攻めるべきか。」


「そうかもしれないわね。心咲さんは」


「あのーそろそろ心咲って、呼び捨てで構わないっすよ?」


「そう、じゃあ心咲。何か趣味とかないの?」


「んー……バイトっす?」


「何かスマホでやってないか?ゲームなりSNSなり。」


「親に入れられた連絡ツールくらいっす。」


「これまで話した事ある人は?」


「先生っすね。」


「取っ掛かりが少ねえ。」


聞いてみればみるほど、心咲さんの難しさが露見してくる。働きに喜びを見いだし、一秒でも早く働きたいとか言い出しそう。


「なあ心咲さんや。」


「なんすか津原さん。」


「ひとまずここにいる全員と」


キーンコーンと鐘がなる、まあ結構時間経ったからな。 


「すまん心咲さん、放課後はバイトだよな。」


「本当はそうだったんすけど、うっかりテストの話したら休み増やされたっす。なので今日は暇っす。」


「ならちょうどいい。放課後また集まる、そこで試してみよう。」


「何を試すのよ。」


大きく息を吸う。これからとる方法で何も見えなきゃ、さすがにお手上げだ。



「ここにいる全員と10分、会話してもらう。」

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