第31話 何度も足を運ぶ店ってあるよね

「いらっしゃーせっす。」


また来たかこの店に。昨日の食事の山と、もう二度としないだろうポーズを思い出し俺は店員に


「あれ学食の。」


「おや学食の。」


そういえば昨日も会ったな。えーっと心咲さん?だったか。向こうもんーと唸りながら、俺の名前を思い出そうとしてるぽいが。


「照れお兄」


「じゃないからな。」


「はっはっ冗談すよ津原さん、何人すか?」


「三人だ。」


「ではこちらどぞっす。」

 

案内されテーブル席に。俺一人と女子二人で綺麗に割れテーブルにスマホ……なんか見られてますね何でしょうか。


「ちょっと津原、あの子と知り合いなの?」


[てか誰なの。]


「今日昼に学食を利用したんだが、そこで相席になってな。んでちょちょいと話した仲だ。」


「心咲さん……なんか聞いたことあるような気がするわね。」


[噂でもあるの?]


「おいおい何だ怖い話じゃねえだろうな。」


まあ他人の噂なんて、今の俺に流れてる噂に比べたら可愛いもんだろ。


「そうだわ、学年一位のアルバイター。」


「絶妙にカッコよくねえな。」


[アルバイターが邪魔。]


「まあその名の通りよ。彼女ずっと学年一位キープしてるらしいけど、こうして働いてるのに凄いってだけ。」


「バックストーリーも弱いなぁ。もっとこうさ、バイトする事で世界の均衡保つとか。」


[実は殺し屋みたいな。]


「あんたらね……」


はぁと息つく浅原さん。いやだって要は頭いいって事じゃん、あの噂の!なんて期待が嫌でも膨らむ案件だっての。むしろ頭良くて働いてて完璧じゃねえの。


「そんな噂になる程とは思えんがな。」


[激しく同意。]


「まああんたと前嶋さんは気にしないでしょうね。」


「おい朱音、こいつ俺達を馬鹿にしてるぞ。」


[誠に遺憾であるが。]


「ご、ごめんなさい。」


駄目だこの子余りにも今までが酷すぎて、全部自分が悪いと勘違いしてる。今のは軽いジョークだったんだが。


「悪い今のはジョークだ、今の浅原には心臓に悪かったな。」


[全ては進士のせいです。]


「ビックリさせないでよ……で、一位の天才がって睨む連中もいるわけ。」


「そんなん次に向けて勉強して、奪還すりゃいいんじゃねえの。」


[別に相手を睨んだって、順位上がらないじゃん。]


「そうやって必死にやってて、向こうはバイトに精を出して。結果毎回負けてるって話よ。」


「おや自分の話すか、照れるっすね。」


注文を聞きに来ただろう心咲さんが、茶化しながらテーブルに近づいてきた。


「あっ、気分を悪くしたなら謝るわ。」


「そーだそーだ謝罪だ浅原ー。」


「……津原、顔か腹選びなさい。」


[私は顔に一票。]


「気にしてないすから、暴力良くないっすよ。」


「ちっ、命拾いしたわね津原。」


「そうそう軽く考えろ、これまでを引きずるなっての。」


[気楽にいこう。]


これから丸くなるだろう、今は固まってた物が溶け出したばっかし。何をどう受け取るか、これからコイツがマシになるかはそこに限る。

まあ俺は関わりたくないが。


「んで注文あるすか?」


「えーとチョコパフェとコーヒーと、浅原何かあるか?」


「オレンジジュースを。」


「あいっすー。」


[私が食いしん坊みたい。]


「俺は家に食事があるし、2日もすっぽかしたら怒られるっての。」


「あたしも。」


[ぶーぶー。]


「とりあえず食べてくださいって朱音さん。」


「あたし達は気にしなくていいから。」


[元よりそのつもり。]


「そういや津原、最近菫はどう?」


「……どうって何が。」


「そりゃあんた、あの日公園で話してからよ。菫とあんたに何もないの?」


「あるわけねえだろ。第一あそこで話したのは、しっかりケジメつける為だっての。」


「……ふーんそう、まあそれなら良いわ。」


[なんか含みがある。]


「あたしも友達として付き合ってるけど、恋愛に関わるのはやめたから。今あの子が何しようと、あたしは邪魔しないわ。」


「きっと野生のイケメン捕まえて、すぐにテンション上がるだろ。」


「どうかしらね。」


[野生のイケメンがいるのか。]


実際橘さんは引く手あまた、これから夏休みに入るって時にフリーだ。今から付き合って夏の思い出を作り、それは固く結ばれる恋人となってくれるだろう。野生のイケメンくんが。


「つか次のテスト終わったら、もう夏休み考えないとな~。」


[進士は予定でもあんの?]


「ねえよ。家でぐうたら……も怒られるだろうし、バイトでもすっかな。」


[私は帰省予定。]


「あたしもどうしようかしら。これまでは菫の側で、気づいたら終わってたのに。今年から悩むわ。」


「ちょい待てよ。一月橘さんといたってのか?」


[おい嘘だろ。]


「さすがに毎日ではないわ。でも宿題とか外出とか、行き先があるなら着いていってたわね。」


「……本当にお前ら。」


[お幸せにって感じ。]


「や、やめてよ。今覚えば菫も何も言わなかったけど、息苦しかったかもと思うわ。でもそうやって離れると、あたし何してたのかしら。」


「洗脳が解けて後半に戻ってくる味方みてえな台詞。」


「うっるさいわね。」


[遊びたいとこ行って、楽しいことすりゃいいじゃん。]


「……?」


「駄目だこいつ頭の隅まで橘さん、その脳ミソを取り替えるしかないようだ。」


[御愁傷様でございます。]


「あ、あたしだって夏休み満喫してみせるわよ!」


「お待たせしやっしたっす。いいっすね~青春て感じっす。」


「どうも。っても心咲さんも青春だろ、それとも良くないのか。」


「はは~あんま居場所ないすからね。」


[1人の人間ですもの、思うことは多いパフェ美味しい。]


「心咲さん、て言うのね。やっぱりクラスとかでも、折り合い悪いのかしら?」


「随分踏み込むっすね。」


「こら浅原怒られてるぞ、すいませんねこいつがへへ。」


「あんたは保護者か、でもごめんなさい。」


[うまいうまい。]


「……そっすね~。そんなに気になるなら、明日にでも話してあげるっすよ。」


思わぬ提案だ。正直俺はまだ面識あるが、他二人は赤の他人。その俺だって他人みてえな者なのに、どうやら話の場を設けてくれるらしい。


「だとさ浅原、時間作って聞いてやったらどうだ?」


「あ、あたし一人?」


「津原さんもどっすか?」


「え俺も?」

  

「流石にあたし一人は厳しいわ、津原頼めない?」


「えー俺これ以上浅原に会う予定、無かったんだけど。」


「そこはほら、彼女の頼みを聞くってことで席を……ちょっと会う予定無いってなによ。」


「で、どうすんすか?自分はどっちでもいいっす。」


「……ひとつ条件がある。」


「なんすか?」

 

「話を聞こう、その場所も確保する。だから勉強教えてくれ。」


「あんたねぇ。」


「ごちそうさまでした。」


おっ朱音が喋った。


「勉強見ればいいんすか?でも自分、バイトバイトっすからねー。」


「時間がある時で良い。」


「なら良いっす。木曜は休みなんで、そこなら構わないっすよ。」


「ちょっといいの?交換条件になってないような気がするけれど。」


「いいんすよ~一人より皆。それに教えるのも楽しそうっす。」


[で、なんの話?]


「こちらの心咲さんから相談あり、聞くから勉学の提供あり。以上。」

 

[把握した。]


場所はまあ図書室なり教室なり、押さえることは簡単だ。その話の長さがどんなもんか、後俺一人じゃ心細い。何人か召集するか。


「じゃあ心咲さん、明日の昼休み……で話し終わるか?それで良いなら図書室に来てくれ。」


「そこで自分の相談、聞いてくれるっすね。長くはしないんでそれで良いっすよ。」


「後そっちから勉強を教えてもらうんだ、聞くだけで何もならないと申し訳ない。だから俺以外にも人を呼んで、少しでも意見を増やしたいんだが良いか?」


「……変な人とか呼ばないっすよね。」


「そこは安心して、とは言えないよな。俺達会って2日だ、まあ嫌だと思う奴がいたら外に出すさ。」


「なら」


「心咲ちゃーん!向こうのテーブルおねがーい!」


「はいっすー。」


そういえば仕事中に引き留めちまったな。悪いことしたと思ってると、心咲さんはこっちに指で○を作った。


「OKみたいね。」


「そうだな、さてメンツどうすっかなー。」


「あたしは行くわよ。」

 

「さいですか。」


[図書室なら私もいる。]


「それで高志と才太、華狼も巻き込んで。」


「……ねえ菫は?相手が女子だし、貴重な意見になると思うけど。」


「いやいや、橘さんはきっと忙しいからうん。」


[拒否反応を検知。]


「分かったわよ悪かったわ。」


「さて長い時間いたし、払って帰るか。」


「前嶋さん、満足できたかしら?」


[充分。]

 

こっちも飲み物飲み干して会計、本当に浅原も出してくれた。いやぁ学生の財布事情は厳しいからね、ありがたいことだ。



いやそれよりも明日どうすんの俺。

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