第29話 学食ってのはウキウキする

「やあやあ高志くん!今日は素晴らしいお昼日和だねえ!」


「……うるさいぞ進士、俺はしばらく節制せねばならんのだ。」


「おかげで俺は美味い飯にありつけた。」


「否定はしない。」


「さーて何食べようかな!」


どうも津原です、本日私は学食に来ております。普段は弁当なりコンビニなり、図書室で食うから寄り付きもしないんだが。

昼になり図書室で高志と合流、今日はあっちで食べると告げて出てきた次第です。


「にしても賑やかだな。」


かなりの学生が集まっている。多くの机に椅子、各々好きなメニューを食べている。


「騒がしいなおい。」


「進士よ、学食とはそういう場所だ。」


「まじかテイクアウトないの?」


「諦めろ。」


雑談もそこそこにメニューを見る。多くの注文に対応する為か、食券のシステムらしく初心者にも優しい。もし口頭でってなると悩んで、列作っちゃうよ俺。


「んー……色々あるな。」


「これだけあると悩んでしまうな。」


「つかそっちも頼むの?」


「せっかくだからな。」


少し悩んだ後、俺はカツカレーをチョイス。高志はしょうが焼き定食とのこと、大盛りに頼んで席に着く。受け取り場所にはモニターがあり、そこに番号が表示されている。

つまり自分の番号が表示されたら行く、待ち時間がなさそうで助かったぜ。


「高志、あそこ空いてるぞ。」


「では座るとするか、相席にならなくて助かったと思おう。」


「これだけ混んでるとその可能性があったか、まあ平気だろ俺達のコミュ力を持ってすれば」


「ここ良いっすかー?」


早速来たよ誰だよ怖いよ、嘘付いてごめんなさい人見知りなんです。だが話しかけられて無視は良くない、振り返りながらどうぞと一言。


「ど、どうぞ。」


「あざます助かるっす。」


「進士……詰まってたぞ。」

 

「じゃあお前がやれば良かったろ。」


「はっはー賑やかっすね。」


「まあ気にせず座ってください。」


話しかけてきた相手は座り、空いていたとはいえ俺の横に。高志とは対面だったからそこしかないが、まあ気にすることじゃねえか。


「進士、俺達の分が出来上がったみたいだ。」


「ならちゃちゃっと取りに行くか。」


「座席は確保しとくっすよ。」


「会ったばかりで悪いですよ。」


「お気になさらずっす。」


「ここは言葉に甘えようぜ、後から来た奴が席取りで間違えるかもだし。」


「そうっすそうっす、ここは私が守るっすよ。」


なんだか強烈なキャラを見せられながら、二人揃って受け取り戻ってくる。改めて横に座る相手を見れば、何とまあ女子でした。

 

「席確保助かりました。」


「てか敬語いいっすよ~、私ら同じ学年っすから。」


「おー確かに同じ上履き、ではよろしくどうぞ。」 


「適応が早いな進士……よ、よろしく頼む。」


「うっす。」


「そちらさんの料理は?」


「私は持ち込みっすね。頼んでも良いんすけど、今日はお腹空いてないもんで。」


「なるほど、いただきます。」


食べる場所としても機能してるようだ、見れば弁当を持ってきてるのもちらほら。ひとまず食べ始めたこのテーブル、会話なく黙々と進む食事。


「「「……」」」


気まずいとかは無いが、知らぬ人よ不快でないか?他所のテーブル盛り上がってるよ?見てあそこおかずの交換会してる。


「んー?」

 

「ん?」


隣から声が聞こえ見ると、俺と高志を交互に見て考えている顔。やめてよあたし達そんな関係じゃ


「あー、照れお兄さんとガチさんっすよね。」


「その呼び方はまさか。」


「ガチさん……俺のことか進士?」


「知らねえよ俺に聞くな。」


「ガチさんってのはあれっす、作品への愛がガチって事っす。」


「分かって貰えるか!そうだ俺はサマルたんへの」


「あーはいはい凄いねー。」


「いやぁどっかで見たような、見てないような気がしたんすよ。」


「昨日の店員さんだとは、顔まで見てなかったから気付かなかった。」


「そんなもんすよね。制服とかアクセサリーとか、物の方が見えるっすから。」


「あの第28話における民間人を人質に捕られながら戦う場面では」


高志はスイッチが入り止まらない、なので諦めて店員さんと話す俺。


「まさか同じ学校とは。同学年といえど、会う機会ないからな。」


「っすね合同で集まりはあるすけど、結局クラスしか見てないすから。」


「それそれ。他クラスの誰それとか、気にしないから。」


「いやー良い趣味してるっすね。」


「そして最後の最後尽きかけたサーマルエナジーを皆から分けてもらう必殺の一撃が」


「あちらもっすけど。」


「ははは。」


我が友人ながら申し訳ない、だが本人が楽しそうだから良いか。高志も俺も食べ終えていたので、熱く語る高志の分まで返却口に戻した。


「ほんでお兄さん方、食べたらもう戻るすか?」


「俺はこいつの口が止まるまで、座って眺めるつもりだ。」


「しかし考えてみれば序章から映っていた何気ない人物がまさかボスの片割れであり」


「まだかかりそっすねー。」


「こうなると長いのこの子。」


「申し遅れたっす、私心咲凪みさぎなぎっす。」


「俺は津原進士、照れお兄さんでは決してない。」


「そうしたら敵は下にではなく上にいたんだそう全ての回に映り混んでいたあの雲が」


「こいつは佐熊高志。」

 

「覚えたっすよー、津原さんと佐熊さんっすね。」


「そっすー。」


「……真似すか?」


「すまん睨むのは勘弁してくれ。」


「この口調は癖なんす、気にしないでほしいっす。」


「分かった。」

 

「だが考察班の中にはあれが来期への伏線と考えている奴らもいてそう言われればあの台詞の意味は」


ねえいつ止まるの?

 

「久しぶりに楽しかったっす。」

 

「もうお帰りで?」

 

「私次体育なんす、着替えとか時間かかるすからね。」


「なるほど理解、それじゃあな。」


「うっす。いつもここで食べてるんすか?」


「いや普段は図書室だ。今回はこの」

 

「そうかあのシーンの意味も今考えれば変わってきてしまうあそこにあったのは憎しみではなく愛だったと考える」


「……高志くんが奢ってくれるから。」


「なるほーっす、そいじゃまたっす。」


さて俺もそろそろ高志を止めて、クラスに戻るとしますかねえ。と思う俺に近寄ってくる影が、今度は男達じゃないかなんだ。


「おーおー津原くんじゃないか。」


「誰だ君たちは、少なくとも俺は知らんぞ。」


「あの橘さんを泣かせたってまじか?こんな奴が?」


「本当らしいぜ。」


「なあもしかして橘さん関連なのか?もう俺あの人と関係ないから、用があるなら向こうに言ってくれ。」


「用はあるっての!」


そう言いながら詰め寄る男、止まらない高志の演説。こいつら橘さんでの関連で何があるんだ?俺はもう終わってるのに。


「お前と付き合うってなって、いったい何人が悲しんだと思う!」


「はぁ?知らねえよ、俺がたまたま早く告白しただけだろ。あえて言うならお前らが遅いせいだ、誰か一人でも早く告ってりゃ俺は付き合う事はなかった。」


「な、なにぉお!」


「俺達だって告白しようと頑張ってたし!」


「色々台詞とかシチュエーションとか!」


「「「考えてたし!」」」


「仲良いなお前ら。」


「津原進士、お前への憎しみが結託を結ばせたんだ。」


「俺達から奪った男よ。」


「覚悟しろ!」


めちゃくちゃ自分勝手じゃねえかこいつら、要は早く告って付き合えた俺への憎しみ。橘さんを傷物にしたとでも考えてるのか。


「いや待てよお前ら。つまり俺がいなきゃ、お前ら三人は仲良くなかったんだよな?」


「「「え?」」」


「だってそうだろ?俺を憎むことでお前らは出会い、そうして素晴らしいチームになったんだ。だがもし俺が橘さんと付き合ってなきゃ、お前らは最高の仲間に出会えなかったんだ。」


「そんなの結果論に近いじゃないか!」


「そうだ結果論だ。でもかけがえのない友達を得たのは、誰が見ても事実だろ?」


「お、俺達は……」


「こんな所でもう終わった男に絡むより、お前ら三人のこれからを深めた方がいい。それともあれか?今フリーだから橘さんを狙って三人対立するのか?」


「い、いや。橘さんほど素敵な人の相手が勤まるとは。」


「じゃあ良いじゃねえか!橘さんを忘れる……見守りながら、友情を育んでいけ。俺を恨む時間を遊ぶ時間に、俺に絡む時間を話す時間に。お前らはこれからを楽しく生きるべきだ。」


「これからを……」


「分かったなら……いけよ。お前らの結束、とっても眩しいぜ。」


「……そうする。行こうみんな、俺達の時間は始まったばっかりだ。」


「そうだな。放課後どっか行こうぜ!んでさ、色々語ろう。」


「ふっ、楽しみが増えちまったぜ。お前ら愛してるぞー!」


「つまりサマルたんには社会的メッセージがこれだけ……ん?進士何かあったか?」


そうして3人組は帰っていった、眩しい青春の光を放ちながら。



馬鹿で助かったわ本当。

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