第21話 終わってみればってあるじゃん?

[ちょとちょと。]


[これは先輩お疲れです。]


[あーこれはご丁寧に。]


その後少しの間途絶えた連絡、しかしすぐに復活。


[いやね?お疲れって言われるの嬉いんよ?]


[おーそりゃ良かったっすね。]


[じゃーなーくーて!どーなったのさ。]


[口じゃ難しいですしこの後時間あります?]


[んお、七畝さんは割りと忙しいんじゃが。]


[あっじゃあ良いですまた明日。]


[もっと粘れよー!]


ふっと鼻で笑いながら一時中断、そういや校外学習の間連絡してなかったな。俺自身望まぬイベント起きたし、土産話は100点のはずだ。


「おっす華狼、わりぃな買い物頼んじまって。」


「別に構わない。そっちはどうだ?」


「色々あって色々終わりました、おわり。」


「……はぐらかすにも下手すぎる。」


「まあまあ。とりあえず金額教えてくれ、こうも人目があると話せねえ。」


「まあ無理に聞く気はない。」


ひとまず金銭のやり取りを。いやーこれで話だけじゃなく、ちゃんと土産も持って帰れる。しかもこれ!龍の剣キーホルダー!

これチャキチャキしてんのたまんねぇ。


「……なあ津原。」


「……」


チャキチャキチャキチャキ


「おい津原!」


「お、おう?なんだよ華狼、ビックリするじゃねえか。」


「こっちの台詞だ。急に剣で遊びだして、話しかけても無表情で怖かったぞ。」


「まじか、なんか夢中になっちまうんだよ。」


「理解できん。」


危ねえもう少しで変人扱いだ。華狼には白い目で見られながら、他の班メンバーと合流する。もちろん橘さんはまだいない。

名も知らぬ二人組がしっかり来てるし、豊美はなんか汗かいてるがいるし。問題なく帰れるな。


「し、進士ぃ。いたぁ。」


「やあ豊美くん、お疲れだね。」


「さ、探して、たんだよ。」


「ご苦労様です。」


「おい津原、もう少し心配してやれ。」


「えーなんでー。」


「ふぅ……ありがとう華狼くん、僕はもう平気。」 


「そうか、あまり無理は良くないからな。」


お?なんだこの二人良い感じやん。華狼が喋ってくれるから楽だ、そのまま頼んだ華狼!お前がナンバーワンだ。


「お待たせしました。」


「ああ橘さんお帰……え?平気?」


その言葉に何事かと目線をやると、橘さんの顔は目元が赤くなっていた。ゴミでも入ったかな?


「ちょっとゴミが入りまして、中々出てくれず。」

 

「えー!心配だよ、ねえ進士。」


「そうですね。」


「……おい津原、どういうわけだ。」


どう見ても泣き張らしですかね、華狼も小声で問いかけてくるわ。


「ちゃんと話すさ。」


「まあ元より円満は難しい、そう思ってはいたさ。まさか泣かせるとは。」


「いやいや俺だってさ、泣くなんて思ってなかったんだよ。むしろ理由がわかんねえって。」


視界の端では豊美が橘さんを気遣ってる。あの様子じゃ何があったか、豊美は知るかもな。そしたらあいつも……来るのか?もうこれ以上やなんだけど。


「それでは揃ったことだ。遅れないよう、早めにバスに乗り込むとしよう。」


特に誰も返事しないが、華狼の一言でぞろぞろと動き出す俺達の班。んー素晴らしいチームワークだ、このチームに乾杯。

バスに早く着き一度は乗り込んだものの、暇すぎてまた外に出てきた。華狼は動画の続きがとかで居座り、他は知りません。


「はぁ。風よ俺を拐って、家に返してくれ。」


「どんな心境だ進士。」


外で涼んでいる所に声をかけられ、振り向けばあら馴染みの顔達だわ。


「なんだ才太と高志か。不意打ちだから敵かと思ったぜ。」


「……この前は悪かった、お前の気持ちを考えず軽率な態度をとってしまった。」


「俺も悪かった!ダチだってのに、ちゃんと向き合えなくて!」


「やめろやめろ。他の奴なら気にならんが、お前らに頭下げられると気分悪い。気にしてねえよ、あん時は余裕が無かったんだ。」


「それでもだ。」


「おう!何なら一発殴ってくれ!」


「そ、それで良いなら……こい!」


才太は笑顔で殴れと言うし、高志に至っては目を瞑ってやれと言わんばかり。ねえやると言ってないよ?見なよ周りを、俺がいじめてるみたいなんだけど。


「殴らねえよ!やめろ俺が悪者じゃねえか!」


「「……ん?」」


そこでやっと周りの様子に気付く2人。見てみなさいあの子達、もう先生呼ぼうかって話してるよ。なんならうちの担任来ちゃったよ。


「おーい喧嘩するなら人目につくなー!」


「先生、その止め方は違うと思いますよ。」


「先生聞いてくれ!俺達は別に虐められてねえから!」


「誤解があったなら申し訳ない。」


「んーそうか、言いにくいもんな。後は任せとけ。」


「いや違」


弁解の余地もなく首根っこ捕まれ、俺はそのままバスに戻されました。無実だーと訴えながら、バス内でしっかりとお話した為解放された。

とりあえず二人にメッセージ飛ばして、まあ今度の昼休みにでも何か奢らせるか。


[調子どう。]


[問題はあったが悪くない。]


[そう。]


朱音からの短い問いかけ。いやー少しでも気にかけて貰えると、いざって時の頼り所があるなと思えますわ。


「戻ったか津原……なんで泣きそうな顔をしている。」


「それでも僕はやってない、その気持ちが理解できた気がしてな。」


「なんだか苦労の多い奴だな津原よ。」


「そんな苦労話に興味あるか?どうせ帰りの間暇だろうし、今見てる動物に勝てるか分からんがな。」


「……そうだな、たまには親睦の深めも必要か。」


「たった二人の親睦会か。」


「なんだ気持ち悪い。」


「え、言い出したのそっち。」


帰りのバスはとても落ち着いていた。行きにはしゃいだ先生もうたた寝状態、生徒も寝るか喋るか手元で何かしてる。あの先生いなきゃこんなに……と思ってしまうぜ。

華狼との話しは今回の件は外し、お互いの趣味なり最近の流行りなりを話すとした。さすがに他の目がある中で、あの橘さんをフりましたパートツー!なんて自殺行為だったからな。


「その話本当なのか?」


「ああ。恋は盲目だな、行けると思ったんだバク宙。結果は顔面から地面だが。」


「すさまじいな。」


「凄かったぜ鼻血。」


今日を振り替えると、まあお寺で清められて甘いもの食べて甘いもの食べて。ちょーっと面倒はあったが、華狼と話す機会になった。才太と高志に奢らせる約束をつけた。

最終的にって俺は考える。楽しいとそうじゃないを対比して、楽しいが勝ってれば良い日だなって判定することにしてる俺。


その観点からすれば、今日は良い日だったよ。


「津原くんは……なるほど……」


「進士……いいなぁ華狼くん。」


なんか怖い。

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