第19話 しつこい奴は嫌われるって訳

「「「……」」」


今何が起きてるか?教えてやろう。あの時橘さんがさらぁっと入ってきて、その横をスルーして向かったパフェ屋に着いてきたんですよ。

んでね?注文して座るじゃん、一緒に座ってきたの?おかしくない!?あたしこんな予定じゃなかったのに!


「華狼は何頼んだんよ。」


「自分はイチゴだ。それよりも津原、これ以上は無理だと思うんだが。」


「え?何々怖いこと言う」


「津原さん!」


うるさいと思った。周りを見ろよ、他のお客さんもこっち見てるじゃん。飲食店は食べる場所だってこと知らないのか?


「橘さん、もう少し声を落とした方が」


「お話を……したいんです。」


「あのなぁ。俺の楽しみを邪魔しておいて、勝手に着いてきてなんだそりゃ。話なんて何時でもできるが、パフェはこの時だけなんだぞ。」


「ですが津原さん、学校だと逃げるじゃないですか。連絡も出来なくなってますし……」


「とりあえず今はパフェだ、それは譲れない。」


「津原の言い分もある。自分達は食べに来ている、なのに騒いでは良い印象ではないだろう。」


「わ、分かりました。すみません急に、橘菫です。」


「自分は華狼颯岔、今回は同じ班で班長をしている。」


「俺津原進士。」


自己紹介もさておいて、気まずそうに店員さんが持ってきたパフェを食べ始める。抹茶連続だったので、ここは限定とか無しでチョコパフェにした。


「「「……」」」


黙々と食事が続いていく、そらそうだ。俺は喋りたくねえし、華狼も食いながら話すタイプじゃない。橘さん?知らね。


「ふぅ、ごちそうさま。」


「ごちそうさま。」


「ごちそうさまでした。」


ほぼ同タイミングで食べ終え、俺の予定ではこの後お土産なんだが……無理だよなぁこれだと。


「華狼、1つ頼みがあるん」


「何だ津原言ってくれ。」

 

とても食いぎみですありがとう、一刻も早く離れたい気持ちが伝わってくるぜ。それもあるし、橘さんにもそろそーろ分かって貰わないと。


「見ての通り逃げれそうにない、変わりに土産を頼めるか?」


「後で支払いを逃げなければな。」


「んな男に見えるかぁ?」


「冗談だ、何を買えば良い。」


「抹茶味の菓子と茶葉と……あとあれ、竜の装飾してある剣のキーホルダー。」


「前二つは理解できる、後1つは卒業すべきだと思うんだが。」


「いやいやご当地竜とかあるかもだし、チャキチャキすんの好きなんだ。」


「はぁ……了解した。買い物終わり次第、合流場所を探しておく。遅れるなよ?」


「そう長くならねえさ、俺はな。」


ここまで橘さんは空気です、なんでいるのか。まあ話がしたいらしいが、俺からの話は0。向こうの話を聞いてさっさと帰ろう。


「それじゃあ橘さん、話を聞くけど。」


「本当ですか!じゃ、じゃあここに来る途中で、座れる場所があったのでそこに。」


「はぁ。」


聞くって言った途端笑顔、一方の俺はこの世の終わりみたいな顔。先に店を出た橘さんを応用に、斜め後ろ3歩程度で着いていく。


「あの津原さん、どうして距離を……。」


「クラスメイトの距離感なんて、これくらいだろ。」


「そうですよね……。」


何が気に入らんのか、不満そうな顔をしやがって。あー駄目だ、変にイライラすると余計な口が出そう。

そうして歩いていくと、小さな公園についた。幸い途中をクラスメイトに見られず、余計な噂の心配も無さそうなのにほっとする。


「あそこに座りましょう。」


「はいはい。」  


見ると奥にベンチが二つ。左に橘さん、右に俺と綺麗に分かれることができた。別ベンチに座ると少し悲しそうな顔されたが、何なんですかね本当に。


「な、何か飲み物とか」


「俺は話を聞きに来たんだ、それ以外をするなら帰るぞ。」


「……すみません。」


「で?早くしてくれよ。もうすぐ集合だし、土産を華狼に任せてるんだ。」


「津原さん……もう一度私にチャンスを貰うことは、できないでしょうか。」


「チャンス?何のだよ、悪いが投資とか怪しい話ならお断りだぞ。」


「もう一度、恋人としてのチャンス……です。」


「は?」


何を言われてるの俺?何を願ってるのこの人?チャンスも何も俺達は、少なくとも俺は終わらせたんだが。


「意味が分からない。俺は橘さんと正式に別れたし、もう一度なんて無いんだが。」


「あの日私はっ!理由を聞いて、後から自分で考えて、津原さんを傷つけていたと分かりました。」


「なら尚更」


「それでももう一度……私はあなたと。私が悪いばかりの完全なわがままです。」


「そこまで分かってるなら、俺の返事だって分かるだろ。」


「きっと断られると、思っています。」


「じゃあその通りだお断りだ、そして話はおしまいさよならバイバイ。」


下らねえ話だったな~と帰ろうとするが、腕を捕まれて嫌々立ち止まることに。


「あの日別れ話。私はちゃんと、返事ができてません。津原さん、私は別れたくないです!」


「そっちの一方的じゃねえ?俺にその気持ちはもう無いの、理由もしっかり説明したし納得してんだろ?やだよ。お前といたって俺には、嫌な思いしかしないって断言できるね。」


全く嫌になる。別れたくないですぅ?俺は別れたくて、それは達成したんだがな。返事も何も片方が離れたら、それはもうお別れにならんのか。


「真祐美には言ったの。今後彼氏が出来たら、私はその人に一途でありたいって。」


急にフランクだよ距離積めるなよ離れろ近づくな気色悪い。


「おー今後の彼氏さんが羨ましいねぇ。いちいち他人に邪魔されない、ほっとかれもしないんだろ?今後の彼氏さんがんばれー。」


「津原くん……ごめんね、本当にごめん。私との毎日は本当に嫌だった、んだよね。」


「もー過去の事は忘れて、お互い次に行こうよ次に。俺も今後の彼女には、もっと心から接しようと考えてたり」


「嫌っ!嫌なの……このまま津原くんと離れちゃうと、きっと後悔するって思って!」


「俺は清々する。もう会わなくて良いんだろ?それこそチャンスだ、是非お願いしたいんだが。」


「そんなこ」


「第一俺じゃなくていいだろ。俺の事好きでもなさそうだったし、橘さん言ってたろ?私にも恋は分からないだの。」

 

「覚えててくれたんだ……」


いや嬉しそうな顔するか?今シリアスの極みなんだが、大丈夫かよこの女。


「だから!今度は一緒に、知っていきたくて。」


「俺とじゃなくていいじゃん。」


「二人っきりで出掛けたり、ごはん食べたり。」


「俺以外でも成立する。」


「たくさんお話しして、お互いを知っていって。」


「クラスの男子にやってやれよ、喜んで飛び付くぞ。」


「ちゃんと恋人がしたい。」


「どうぞお幸せに。」


「……他の人って言うけど、津原くんじゃないと嫌なの。」


「それはないだろ、一番無い。道端の石ころレベルの扱いされてたのに?」


「最初は真祐美とか、他の人にも言われたよ?もっと良い男がって。」


「おー周りの方が理解してんじゃん。それだよそれ、他行け他。」


「でも他の男の人と話してても、津原くんが良いって思えて。」


「俺レベルの男はゴロゴロいる、最初に拾った石ころになんか愛着が沸くだろ?それと同じだ。」


「もう付き合ってないならって、ちょっと強引な人とかもいて。」


「俺は鳥避けのCDじゃないんだ、隠れ蓑にするつもりならやめてくれ。」


「色んな人がいるって、この短い間に分かってるよ?でも津原くんと過ごした時間が……何よりも楽しかったの。津原くんは私に合わせてくれて、一歩一歩寄り添ってくれてた……それを裏切ってたのは、私。」


と、そこまで言い切りこっちを見てくる橘さん。てかまだ続くの?長いよもう帰りたいんだが


「だからごめんなさいっ!それと……私と付き合ってくださいっ!!」


いや実際ね?橘さんは凄いんじゃないかなぁって。自分に悪いとこあって、非は自分にあって頭下げて。中々自分の欠点を認めて、謝る人はいないからな、うん。

これが漫画とかだったら、オレモキミガーって感動のラブシーンが始まるんだろうね。素敵なBGMが流れて。


「丁重にお断りします!嫌です!」


でも俺は無理だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る