第17話 自由時間 それは戦い

「それじゃあ2時間、各自班行動を忘れず楽しんでこい!くれぐれも発車時間に遅れるなよ!」


住職さんにお礼を学年で伝え、いよいよ自由時間。お寺の回りは観光地にもなっていて、お土産屋なり飲食店もある。


[調子どう?] 


[調子も何もこっからよ。]


[そっか。私達は上辺だけの班だからさっさと解散、馴染みのメンツで遊んでまた集合になる。]


[あー良いなそれ!俺もそれ提案してみるか!]


[ファイト]


朱音からのメッセージを見て、早速俺は目の前にいる5人に提案する。


「さて皆様、この度は不思議な縁でできた班ですが……色々行きたいところあるでしょ?ここは個人で行動して、後々合流する形とかどうですかね?」


「し、進士?どうしたの急にさ。」


「津原さんが行きたい場所、教えてください。私はそこで構いませんから。」


「班長は自分だ、もし勝手に動いて後で問題は嫌だぞ。」


他二人は既に会話に興味がないらしく、スマホを触りながら早く終われと思っているだろう。お前らなぁ!暇なら援護しろや!


「おいおい問題なんて……そうだ!この6人で一時的なメッセグループを作ろう。それでトラブルがあれば報告、合流の場所とか指示してくれ。どうだ?中々良いアイデアだろ?」


「うーん……自分はそれなら良いと思う。」


「進士そうやって逃げ」


「津原さんはどこに」


「「俺たちはそれで良い。」」


約二名は空気だ、そこにいるだろうが気にせずいこう。二匹狼くんも賛同してくれたし、華狼も納得させた。

ちゃちゃっと華狼に連絡先を渡し、俺は駆け出す。これは自由への逃亡なのさ。


「それじゃあ頼んだぞ班長!皆も各々楽しみ、またこの地で集まろう!」


「そんな熱い話か?」


「ちょっと進」


「津原さん待っ」


「ちょっ!あんた待ちなさ」


目の前に表れた浅原を避けて先へ、いやお前ここでも付き添いか?やっぱお前と橘さんお似合いだよ。俺が行く場所は決まってる。


「ふぅ~……撒いたか?撒いたな。っしゃあ!」


一息つきたかった俺は団子屋に。バスの中で調べてみたら、ここら辺は甘味が多いそうだ。なのでお一人ツアーをスマホで作っていた。


「いらっしゃいませ。」


「すみませんみたらし3本、それとお茶お願いします。」


「かしこまりました、あちらの席でお待ちください。」


短距離とはいえ走った身体を椅子に預け、残る2時間のルートを再確認するとしよう。とりあえずここ食べたら角の饅頭屋、んで和風パフェがその通りの


「なんだ津原か、前座るぞ。」


「なんだとはなんだ華狼、他座らねえの。」


「顔見知りを無視して座るほど、冷徹ではないんだ。」


「あらそうですかい。」


そのまま腰をおろす華狼、ビビったアイツらに見つかったかと。


「突然走りだし、その後を橘さんと豊美くんが追いかけて。残り2人は振り替えればすでにいなかった、この気持ちどう思うよ?」


「何もせず一人になれるって凄いな。」


「喧嘩でもしたいのか?」


「にしても動物動画に甘味処、話が合いそうだな。」


「ちょうどグループができたことだ。バスで聞かれてたリンク、貼っておくとしよう。」


「そりゃ助かる。んで?何頼んだよ、俺はみたらし。」


「自分は三色だ。」


「おーおー和風だな。」


「そもこういった店で洋風はないだろう。」


「そりゃそうだな。」


「お待たせしました、みたらしと三色になります。」


「「どうも。」」


他愛ない会話、食事の間の沈黙……悪くはないな。最近はクラスからさっさと逃げ出し、才太たちの場所に転がり込むか先輩と屋上だったし。

そう思うとこの状況スゲー図だな。まあ普段話さない奴とだし、気兼ねなく過ごせるんだろうな。


「「ごちそうさまでした。」」


なんだこいつ育ち良いな。


「まさか津原くんが礼儀正しいなんて。」


「いやいや華狼さんこそ、中々のお手前で。」


「ただ団子食べただけなんだが。」


「さてとそれじゃ。」


「ああ、ちゃんと通知を見るように。」


そうしてお互いに店を出てお互いが右に曲がる……?まさか一緒か?嘘だろ?


「確認なんだが。」


「ああ、俺も1つ聞きたかったんだ。」


「「角の饅頭屋か?」」


団子屋の時点で少し察していた。ここは検索すれば上でも無く下でもない、真ん中辺りに出てくる店だ。決して悪く言うつもりは無いが、一番候補に上がりにくい。

俺はあえて人が来なそうな所を見つけ、なるべく静かに過ごせる道を探した。その一番で華狼と会った、つまりこいつも。


「その後は一本向こうのパフェで。」


「そしたら向かいにあるソフトクリーム。」


「んで隣接するお土産屋?」


「……まさかそこまで被るとは。」


「俺のスマホ覗き見してねえよな?」


「そんな趣味はない!第一自分は」


「知ってるよ悪かった。ずっとイヤホンして、先生にも気づかず動画見てたわな。」


「だから偶然だ、ここまでくると奇跡だがな。」


「じゃあ行くか。」


「いいのか?津原くん」


「くんはいらねえよ。」


「……津原は1人で回るつもりだったと思うが。」


「でもここで別れたって、行く先々の店で会うんだろ?なら変わらないさ。」


「それもそうか、短い時間だかよろしく頼む。」


「あいよ。あーあと、豊美とか橘さん来たら騒ぐだろうけど、適当に流してくれ。」


「噂では聞いてたが、今日のを見て思ったとも。どうやら揉め事は継続らしい。」


「なんだ噂って……まあ向こうで食いながら聞かせて貰うよ。」


「行儀が悪いぞ津原。」


おそらく今日限りだろうが、中々面白いタッグになっちまった。まああの二人に捕まって、引きずり回されるより良いだろ。

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