第15話 バスの時間って長くね?
バス移動。それは人によっては幸せであり、苦痛にも変わるシーンである。俺?俺はね!今とっても苦しいの!何でかって?
「津原さん……きょ、今日はよろしくお願いします。」
「し、進士!お菓子食べないかい?」
なるほど……
とまあこんな感じで、無害な狼くんとうるさい虫が飛び回っている現状。君たち席に戻らないの?いや違うか、そういや挟まれてたわ。
あー!うるせぇ!!助けてよ狼くん!と視線を送ってみるも動画に夢中。まあ俺もイヤホンして、ゲームしてるんですけどね。
[今の所どうかな。変わりないかい?]
[順調ですね、ぶんぶん羽音が聞こえますね。]
[辛辣だね……]
[そうですかね。]
なあんて先輩とのやり取りをすると、心が洗われるような気分だぜ。
「津原くん……今の人は?」
「進士!こっちの甘いものはどうかな。」
はいうるさいぞ貴様ら、幸せな気持ちを邪魔しやがって。隣の彼を見習えよ……こんなにも静かじゃないか。君たちも遊んでなさいよ。
「おーしお前ら、ここらで催しでもすっか。」
「え?何するんすか先生。何も聞いてないすけど……」
「事前に言ったらつまらんだろ、なのでサプライズだ。どうだ?嬉しいだろ?」
「「「……」」」
全生徒が思ったことだろう、嫌な予感がすると。
「ではここに、俺が用意したくじがある。そのくじには例えば、[自己紹介をする]みたいにお題があるんだ。あとは分かるだろ?さあ引いた引いた!」
なんて事考え付くんだこの人は……はぁ。しかし良いタイミングだ。前座席から引いていき、好きなものを叫ぶだとか、得意な歌をワンフレーズ等々無茶をさせているのが見える。
変なの引きたくねえなあ、昨日の夕飯とか出ないかな?それかあれだ、好きな星座。とりあえずオリオンて言ってやる。
「よし橘、くじ一枚頼んだ。」
「わ、わかりました。」
あー目の前の人が引いてますわ。もう次俺じゃん、まじで普通のお題来てくれ!
「それじゃ橘の!気になる人はいますか、どうぞ!」
「……います。」
おーっと沸く会場、もしかして俺なのか!?と期待に胸踊る男達。誰なの?と早速聞き出しに入る女子達。その後ろで、頼むから俺の事でありませんように……ともう関わりたくない思いを溢れ出す俺。
「次は津原か、とびっきり面白い奴頼むぜ。」
「男子の俺から何を引き出すんスか。」
「さあ?それこそこの箱に答えがある。さあやれ。」
こちらをお構い無し、まあ今さらだよなぁ。雑に手を突っ込み感覚を研ぎ澄ませ……これだ!俺の一枚っ!!
「……おお。」
引かれた紙に書かれたお題、[今年一番嬉しかった事]に目を通しながら考える。まだ半分しか過ぎてないが……どれにすっかなぁ。
まず思い付いたのは別れた事、だがここで言ったら殺される……佐久間達とまた馬鹿話出来ること?いや他クラスの奴の話してどうすんだよ。
「えーでは津原より!今年一番嬉しかった事だそうだ、どうぞ!」
「ちょこっちのタイミング……良い出会いがあったって事で。」
その瞬間茶化す口笛奴ら、何か思い当たるのか舌打ちをする奴ら、もしかして自分の事!?と一部勘違い二名がいた。いやお前らじゃねえよ?ふざけんな殴るぞ?
しかし……我ながら無難な答えだろこれ。俺としては先輩とって話だが、クラスの連中は橘さんとって勘違い(別れてるのに)を誘発に成功。
「さて次はお隣の華狼……おーい華狼?イヤホン取れ
へ~華狼って言うんだ~誰?と狼くんを見た。まじで狼入ってんのかよ、そしてこの距離で聞こえてるのか無視してるのか。絶対後者だな、ちょいちょい目で見てるし。
「津原、イヤホン取ってやれ。」
「いやいや先生がどうぞ。」
「いやー教師が生徒にさ?分かるだろ?」
「そこはほら~年上の威厳みたいな~。」
「やれ。」
「うっす。」
申し訳ねぇなあ狼くん。一度両手を合わせ謝り、動画を見ている華狼のイヤホンをポンッと抜く。予想通りなんて事を……と睨まれたが俺も被害者さ。
「よし華狼、とりあえず一枚引け。」
「自分がそれに参加する理由、ないと思うんですが。」
「それここに来るまで、8人に言われたぜ俺。しかしここまで来たんだ……ぐいっといこうや。」
「拒否権が無いのは承知してます……はぁ。」
華狼は嫌々手を伸ばし一枚、それを確認して先生に渡した。そこまで渋い顔してねえし、まあ悪くない引きだったんだろうな。
「それじゃ華狼の!オススメ動画を、どうぞ!」
いや中々やべぇなこのくじ。
「……カワウソと見る小川で食べれる魚ランキング。」
そう一言言って華狼は座った……後で動画のURL貰おうかな。
「豊美の番だ、適当に引っこ抜いてやれ。」
「……これで!」
「ほーほーなるほど。豊美の!今年の目標、どうぞ!」
「仲直りする事!」
もう嫌だ。
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