第14話 やってくるよねイベントは

「あー……。」


寝ぼけた頭で考える。俺は津原進士、今日の校外学習にとても嫌な気配を感じる男の子だ。まさに今日がその日であり、季節は夏になりそうなこの頃になりました。

支度するには早いが、二度寝には微妙な時間なのでしぶしぶ今日の確認をっと。


(しっかしお寺巡って座禅して、少しの自由時間で解散か。)


本日はまず歴史を感じる為にお寺さん内部を拝見、そして出来た経緯とかありがたい話を聞く。その後座禅を組んで精神を鍛えたら、帰りの時間に間に合う範囲のお遊びが許されるわけ。

基本は班行動になるわけで、俺の場合例の二人+三匹狼というパーティー……ダンジョン潜ったらすぐ壊滅しそうだな。


[今日は頑張りたまへ。]


[暇なんですか先輩。]


[可愛い後輩を心配してるんだよ。]


[あーそっすか、頑張ります。]


[何かあったら連絡してね。]


その一言にはずいぶん助けられたが……いやあなた来ませんよね?学校で勉学に励みなさいよ。下に降りてみたら朝食を用意している母さんがいた。


「あら早いわね。」


「まあな。遅刻したくねえし、たまには早起きもな。」


「ふっ、似合ってないわよその言葉。」


「うっせえ。」


そうしたやり取りの後、出来立ての朝食を食べたら登校することにした。家にいても暇だし、のーんびり歩いていくのも乙なもんだろ。


[おはよう。]


ピコン、の音にスマホを見ればメッセージ。後ろには朱音がいたが……え?いつもより早いのに会う?


「早くね?」


[あんたに言われたくない。]


「俺はアレだよ……楽しみで夜寝れなかったからさ、早めにバスで寝ようかと。」


[はいはい嘘乙。]


「信用0かよ。」


[進士が今日を楽しみに?震えて眠れなかったの間違いでしょ。]


「よく分かってるじゃないか。」


そうして朱音との、他人から見れば俺の独り言が続く光景。朱音は早めにバスに座りのんびり過ごすと決めてたらしく、それで俺に会ったそうな。


「ま、お互いのんびりやりますか。」


[ねえ進士。]


「なんだ?」


[困ったらこっち来てもいいから。]


「……それはありがたい。だがまあ、そうならんように努力するさ。」


[才太と高志もそう言ってた。]


「あいつらもか、いやぁ友情っつーのは良いね。」


[コンビニ寄る。]


「あいよ、俺も何か買っとくか。」


バスでの移動時間は先生から今日の案内や、着いた先での注意事項のアナウンスくらいがメイン。後は到着まで自由そのものってわけだ。

年のために漫画らや携帯ゲーム機を持ってきて、話しかけるなオーラは準備万端な訳よ。


「いらっしゃいませー。」


小遣いの範囲と相談しながら、いくつかの菓子を買い込むとしますか。ちゃちゃっと買い物も終わらせ、店前で朱音を待つとする。


[いたの?]


「え酷くない?」


[別に、先行ったかと思ってたから。]


「ここまで来て別行動っつーのもな。」


[まあね。]


その後は雑談もそこそこに、まだ生徒の数が少ない学校は到着。どうやらまだバスが来てないために、同じ目的の奴らもそこら辺で待っていた。


「おお津原、それと前嶋か。」


「どもっす先生、バスは後どれくらいで?」


「そーだな……10分くらいだ。席は決まったとこにちゃんと座れよ?」


「わーってますよ。」


さて10分か。朱音は同じクラスの奴を見つけそっちに合流、俺は端に避けてゲームでもしてますかね。まだ橘も豊美も来てないよな?


特に邪魔もされず一面を攻略中にバスが到着、さっさと乗車して席に座るとするか……げ、狼くん来てる。が、挨拶もお互いなく静かな時間になった。


「……」


「……ククッ。」


たまに沈黙が苦手って人がいるが、俺は好きだな。普段の喧騒から隔絶されたっていうか、非日常感が悪くない。たまに動画?か何かを見る狼くんが笑ってるくらいだ。


「っしクリア。」


ゲームに没頭すること早どれくらいか、イヤホンを外して顔を上げたら結構座席が埋まっていた。さすがに後ろに橘や豊美がいるかは確認したくないので、前だけ見て生きよう。


「よーし各班の班長、点呼取って俺に報告。」


班長?その聞きなれない単語に、ふと横から肩を叩かれる。


「津原くんであっているか?」


「ああそうだ。」


「自分が班長なんだ、前失礼する。」


「すまんすまん。」


通路側の俺がいたら仕事にならんか。班長さんが通路に立ち、俺は発車前にトイレへ行くとしますか。


「先生、トイレ行ってきます。」


「時間気を付けろよ?」


「はーい。」


ちょいと伸びもしながら、時計を見てまだ余裕があると確認。すこーしだけ、このまま消えて楽するルートも考えたのは内緒だ。


「先生、津原戻りました。」


「おー津原、よしこれで全員だな。」


トイレを済ませて座席へ戻ると、班長さんが元の動画視聴に戻っていた。そして前後に見たくない顔……。


「お、おはよう進」


「つ、津原さんどうもこ」


な~んか聞こえたような?まあイヤホンが世界を忘れさせてくれる。


「じゃあ出発だ。お前ら、シートベルトしろよ。」


これからに期待を膨らませる者、そもそも乗り気じゃない者、今回に何かを期待する者、何者も拒みたい者。いろんな者を乗せながら、バスは発車することになった。

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