第13話 貴重な休みの過ごし方

「んー……朝か。」


今日は日曜日、学生にも休みは必要だ。まずはソシャゲ達のログインを済ませながら、途中置物になった妹を横目に朝御飯へ。


「進士。あんた休みだからって、もう9時過ぎてるわよ。」

「あーはいはいおはようです。」


「はいが多いぞ進士。」


「あれ?新聞読んでないの珍しい。」


「お前が起きるのが遅いだけだ。」


と親父や母さんと話をしながら朝食。と言っても日曜だし、何もすることがないんだよなあ。


「進士暇でしょ?買い物頼むからよろしく。」


「えぇ……俺かよ。」


「日葵はなんか部屋に籠り気味だし、あたしはお父さんと過ごしたいから。」


「いやー愛し合っていいですね。」


「か、母さん。」


本当にいくつになってもこうだ。昔っからラブラブっつーか、たまに子供の俺が見ても恥ずかしい。こういうのが理想の夫婦かもな。


「はいよ。夫婦円満のためにも、息子の俺が行くっつの。もちろん報酬は?」


「ったく……誰に似たんだかねえ。」


「なんだ進士?欲しいものでもあるのか?」


「いや特に無いけど、あって困らないだろ?お小遣い。」


買い物の前に報酬の話し合いをもうけ、ひとまず小遣いに色を付けてもらえる事になった。

部屋に戻って着替えて準備完了、マイバックを受け取って休みの外出となりましたとさ。


「んじゃあ行ってきます。」


「頼んだわよ~。」


「気を付けるんだぞ進士。」


天気は快晴だ。お出掛けにはもってこいなんだが、いやはや一人になってからは部屋にいがちだったな。前は橘を誘ってなんとかデートにこぎつけて、浅原に壊される毎日だったような。


「えーと……」


買い物は単純に夕飯だった。毎週の事だからいいが、基本親父が家にいると母さんはそっちに夢中。そりゃ家事はしてくれて助かるさ、ただ側から離れなくて買い物とかは俺か日葵。そこそこに長いから、慣れちまったのが怖いとこだ。


[やあやあ後輩くんよ。]


[なんすか先輩。]


[暇だから連絡してみた。]


[俺は忙しいんですよ。]


[え?何かあったの平気?]


[買い物です。]


[……それ忙しい?]


[いや全然。]


そんなやり取りしながら、着いたのは歩いて30分と微妙な距離のスーパーだ。なんでもこっちのが安いと、口うるさく母さんに言われて仕方ないところもある。

買うものをチェックしながら篭に入れていき、店内をうろつく俺。そんな時、見慣れた姿を見て俺が隠れることになった。


「えーっと……」


なんでここに豊美がいんだよっ!ノーマークだったとはいえ、まさかこのスーパーを奴も使っていたとは。橘は浅原の自慢曰く、休みも勉強するエリートらしいから会わないと思っている。


(くっ……ここで見つかっては、俺の休みは大変なことになる!)


だが不幸にも、今豊美がいるところに最後の買い物が。これは長期戦になると考えた俺は、物陰からじっと豊美が離れるのを待つことにした。

そして10分後、豊美が何してたかは知らないが離れてくれた。


「ふぅ。」


目当ての物を手にいれた俺は、すぐさまレジへ向かうことに。こんな所にいられるかっ!俺は帰宅するぞ!だが休みのスーパーレジ行列、のんびりゲームを楽しみながら順番待ち。


「……あれ?進士?」


(ガッッデム!)


他にもレジ列はあるだろ!なんならここ、一番混んでるっつーのに!


「えっ進士だよね。き、奇遇だね!僕も買い物でさ。」


「……」


幸い俺はゲーム音声を楽しむため、イヤホンをしていた。このまま聞こえない事にして、逃げようそうしよう。


「お次のお客様ー。」


おっと俺の番か。会計済ませて荷物纏めて即外へ、念のため曲がり角で後ろを見る。どうやら俺のスピードによって難を逃れたか……


(もうあのスーパーは無しだな。)


そのまま大人しく帰ることにした。にしてもまさか、豊美とはな。橘じゃないだけマシだが、あいつと出くわすなんて。もしかして今日の運勢、俺ってば最悪なのか?


「ただいま。」


だが返事がない。リビングに行くとメモが残されており、どうやら両親でお出掛けしてるらしい。買ってきた物を冷蔵庫等にしっかりと収めて、部屋でのんびりすることにした。

途中物言わぬ石像となった妹を見たが、スルーして俺の砦へ。やっぱここが一番だな……外怖い。


「ふぁーあ。」


まだ時間もあると昼寝をして、貴重な休みは消費されてくのであった。

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