第12話 あらぬ疑いってありますよね?ね??

「あんたが津原の浮気相手ね!」


[進士、こいつ何言ってんの?]


「俺にもさっぱりなんだこれが。」


皆様お元気でしょうか。私津原進士、絶賛朝から絡まれています。お相手は人間スピーカー浅原、対してあらぬ疑いを掛けられているのは朱音だった。


「そんなこと言って!私は見たんだからね!」


「何を?」


「あんたら揃って登校して、お昼も一緒だったみたいね!」


[進士のストーカー?お疲れ様。]


「ちっがうわよ!あんたが菫と別れた理由、突き止めちゃったんだから!」


目の前のスピーカーが騒がしいですね、非常に迷惑してます。今日も今日とて登校してきて、昼は屋上でのんびり過ごして帰ろうとしたら。


[進士、下駄箱で。]


なんてメッセージ。そういや忘れてたが、昨日シリアスな感じで


「悪いが真剣なんだっ!!」


と出てったあの日から何も連絡してねえと、思い出して帰る前に才太と高志には謝っといた。まあ向こうも頭下げちゃって、お互いに謝りあう合戦の幕開けでもあったんだがな。


[遅い。]


と律儀に待ってた朱音と揃って帰るとなったんだが、途中公園に寄ると聞かず。しんみりとした空気でいたら朱音からも謝罪があって、俺も頭を下げたとこだった。


[からかうだけで、どれだけ真剣か受け止められなかった。]


「まあ俺も悪かったよ。お前らの茶化しとは分かってたんだが、俺も余裕が無くなってたのかもな。」


[なんだかスッキリした?]


「ああ。」


[そっか。]


と仲直り終わり!とブランコでぶらぶらしてたら、スピーカー登場。


「やーーっぱり!」


「「うるさ。」」


え?朱音喋った?……一旦保留として、次いで話し出したのが俺が浮気だとかなんとか。橘と別れたのもそれが理由で、橘に落ち度は無かったとかギャーギャー子供かよ。


「まあ菫に責任押し付けて、自分は楽しい思いだろうとは思ってたんだから!」


「本当に……お前どこまでも馬鹿だな。前嶋は中学からの付き合いだし、俺が友達と下校してたからって浮気になるわけないだろ。」


[進士、こいつがあの?]


「そうそう。橘護衛に命を燃やすあほ、またの名を人間スピーカーと馬に蹴られる予定の馬鹿。」


「あ、あ、あんたねえ!」


そう言って顔真っ赤に叩こうとしてくる浅原、まあささっと避けながらも話しは続く。


「で?大声出して騒ぐことがそれだけなら、鼓膜が限界だから帰るぞ?」


「菫に謝りなさいよ。浮気が理由で別れたんだ、君に落ち度はないってね。」


「はあ?」


「菫……あんたにフラれてから、本当に可哀想なんだから。」


「可哀想なのは俺だろ。橘は何も喋らないし、いつもお前がいて邪魔されてるし。おまけに彼氏の家に来たって女子会とかぬかして、俺のことハブって楽しんでただろうが。」


「あんたデリカシーないの?男子に言えない話しってのが、女子にはあるのよ!」


「あんの?」


[無いでしょ。]


朱音と二人意味が分からん、といった顔でスピーカーからの騒音を聞き流す。それからも内容は変わらない、お前が悪い橘に謝れ。橘は傷ついてる橘に謝れ。


「……お前さ。」


「な、何よ。」


「自分に落ち度、いや橘含めてさ。何も落ち度がないと思ってんのか?」


「あ、当たり前」


「何も分かってないんだよ。丁寧に言ってやろうか?まず普通デートは一対一だ、なのにお前みたいな部外者がいつもいたじゃねえか。」


「そ、それは心配で」


「黙ってろよ。お前に発言権は無いんだ、常識も知らない奴が口を挟むな。」


強く言いすぎたか?なんだか黙って下向いた浅原に対して、俺の発言は続く。


「正直カップルってのは赤の他人から始まるだろ、だから好みなんて知らないのは当然だ。でもお前は?これを知らないのか、あれも分からないのか。そうやって攻め立てたよな?」


「……」


「付き合いの長さでマウントできて良かったな?あいにく何も知らないよ俺は。でもだから知ってく事が楽しいはずなのに、いつもお前に邪魔されて嫌な気分だっつーの。」


この馬鹿に届くか知らないが、恋愛小説やら漫画にあるこれが恋人!を教えてやる事に。まあ俺も恋愛経験少ねえが、浅原よりは間違いなくある。


「お前は橘が凄いって言うが、成績やらの話だろ?恋愛って観点なら、俺からしたら0点だよ。彼氏とのデートに友達、家に来ても妹。俺が嫌だなって気持ちに気づきもせず、ずっと貼り付けたみてえな笑顔だけだ。それと自慢じゃねえが、俺は橘好きだってちゃんと言ってた。返ってきたことはない。」 


「……黙って聞いてたけどさ。」


おう朱音よ喋るのか。普段身内付き合いしてる時は発言がダルい、そんな理由で通話アプリを活用するお前が。


「あんた、浅原さん?だっけ。あんたも橘さんもおかしいよ。進士も最初は笑ってた、良い彼女だとか最高だとか。でも日に日に元気がなくて、来なくなっても見かける度に疲れた顔してた。」


「あ、あんたにまで。」


「第三者からしてそうなんだよ?当事者はもっと、考え付かないくらい苦しいと思う。こんな言い方悪いけど……あんたらが変わらないなら、今後も被害者は増えるだけ。」


「何よっ!友達の心配して、頼られるのがおかしいの!?」


「あんたは保護者なの?だったら子離れしなよ、親離れだって必要。なんなら2人で付き合ったら?進士もぼやいてたけど、そんなに思いあってるならそれが一番。そしたら傷つく人は進士で最後になるし。」


そうやって捲し立てて、最後に朱音はこう言う。


「それと進士が浮気とか無いから。こいつの一途さは知ってるし、もしそんな奴なら私が殴る。」


「……」


「おいおい殴られるのかよ。」


そうして固まった浅原を置いて、朱音と公園を出る俺。


「悪かったな。」


[あんたの気持ち、嫌でも分かった。]


「なら良かった。あんな喋ったんだ、疲れたか?」


[ファミレス。]


「あいよ。」


感謝も込めて奢ることにした。意外と値段が増えちまったが、まあ助けられたしな。にしても浮気だなんだ…その推測、橘に言ってないよな?

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