第9話 夢から覚めたら現実見るだけ

「あー……夢でよかった……」


そんな安心感を得ながら俺は起きて、静かに二度寝へと


「ちょっと進士!そろそろ起きなー。」


「っち。」


「あんた今」


「おはよう母さん良い朝だね~。」


っぶねえセーフ。二度寝という幸せは遠くなったが、まあいずれ起こされ学校へ行くのが運命か……やれやれ。


「着替えたら降りてくわ。」


「はいはい、朝御飯は机にあるからね。」


「分かった、ありがとう。」


そう言って開いたドアから顔を引っ込める母さん。さあて着替えましたら食べに行かねば、俺の明るい生活が幕を開けるぞ!

とまあやることやって登校時間。今日も今日とて橘やら浅原等々、メッセージが届いていたが見るかどうかは俺次第……だよな?そんな俺にこれまたピコーンと通知の音。


[後ろ]


「ん?おう朱音か。朝から会うなんて珍しいな。」


[逆。あんたが一人ってのが珍しい。]


「それもそうだな。ついこないだまで、橘だとか浅原野郎がいたし。」


[口が悪い。]


「はっはっは……え?てことは朝の通学、もしかして見てた?」


[そりゃもう。朝から必死に橘さんにくっつくあんたと、それで浅原さんともめるとこも。]


何ということでしょう。今日まで私の友人である朱音さんは、その痴態の数々をこっっそり見ていたそうではありませんか。これはいけません。


[ちなみにそれを昼休み、高志や才太と話してた。]


「……まじで?」


[爆笑。]


「へーそうなのかあははー。ちょっと死ぬか俺。」


[ご自由に。]


ワオ止めてくれないぞこいつ。まあしかし……それなら昨日の様子も納得だな。朝からいちゃついてると思って、いざ正解を聞いても信じられないってもんか。


「死ぬには早いから少し待つと。」


[あっそ。]


「まあこれからはお一人様確定だからな、見かけたら話しても良いんだからね!」


[うざ。]


「ひっでえ。」


みたいな馬鹿話がすげえ助かる。考えてみたら元カノさんと話してる時、俺に笑顔はあっただろうか?いやないな。浅原の突っつきだとかそれにカバーない橘だとかあれやこれや言ってきやがって俺だって


[おい。]


「へい。」


[聞いてないだろ。]


「へっへっへっ。」


この後一発貰ったが、無事登校できた事に感謝しとかないとな。


「……そういうことね。」


変な気配に気付かなかったのも、楽しかったからだろうなぁうん。


― ― ― ―  時は過ぎて ― ― ― ―


「お、おはよう進士。」


「あっはい。」


豊美君たらしっつけー。まあこちらから一方的とはいえ、友達なんかじゃねえ!くらいの発言したよな俺?


「あのさ!進士……今さらに聞こえると」


「よーしお前ら、HR始めるからな。」


いやー先生神か?明日から写真でも飾って毎日三回、しっかりお祈りしたらご利益出てこないかな。


「今日は全員いるな。んじゃあこの時間使って、昨日話した班と座席を決めるぞ~。」


「「え?」」


「あれ?俺言ったよな確か……ほら来週の校外学習のために、バスの席と班を決めとけって。」


「あの~……」


「ん?どうした?」


「昨日の今日で……ですか?」


「まあよろしく。」


そう言って担任は用意していた紙を黒板へ張り出した。右に1~6番と○で区切られた紙を、左にはバスの座席そのまま引っ張ってきたであろうコピー紙を。


「はいここで先生からお知らせで~す。早い者勝ち、後で記入してない奴見つけたら適当に組ませてどこかに突っ込むからよろしくな。はいスタート!」


パァン!と先生が大きく手を叩くと同時に、黒板前へと走り出した生徒たち。いやーこれは青春だな、俺は後の余り物に福を期待しよう。

着々と仲良しグループ、イチャイチャカップルグループと固まりが見えてきた。俺?一人……ですかね。ようやく黒板前が空いてきたから立ち上がると、何故か周りが俺を見えくる。え?何故に?と思ったら、なんと俺と同じタイミングに橘と豊美が立っていた……やべえな。


「どうしたんだい豊美くん?先に書いていいよ。」


「……いやいや。進士こそ先に、ね?」


「……」


明らかに!明らかに俺の位置を探ってやがる!?だがまあ……バスは仕方ないが班など仮の決定。どうせ現地に着いたら皆バラバラに散っていくこと間違いない。


「じゃあ俺から書くかな~。」


何も気にせず集中するんだ、バスの余りは……やはり後ろと酔いにくいタイヤ上の席は埋まっている。余りはそこ以外、何なら真ん中に出てくる補助席すら選択肢としてはありだ。

さてと。選ぶなら補助席の気まずいとこか?それとも一切関わりのない、一人席を占有してる奴の隣でも狙うか。


「「……」」


後ろの二人は俺の近くを取るのか?それとも俺という存在の位置を見て、遠くに行きたいのか?なんにせよ……ここだっ!


「よしっと。」


座席には悩んだが、班となれば簡単だ。こういったグループを作るときに、ボッチ同士協力する流れ、それを使わせて貰おう。明らかに繋がりのないグループが1つあったので、遠慮なく名前を入れさせて貰った。


「ほれ後二人、書いた書いた。班は後1つだからそこに組むから、座席任せた。」


担任に急かされ二人は黒板に。俺の座席?一度も絡んだことない人の横。どっちかと横並びでバスよりまし。そして予感は的中、俺の前後に橘と豊美が。

恐らくだがこの縦3列。素早く動いた一匹狼達に一席ずつ取られた為に、他の誰も近づきたくなかったんだろう。まあ好都合だがな。


「よーし決まったな!これも先生の手腕って奴だ。」


「違うと思い」


「ん?」


「……流石です。」


「それじゃあHR終わるからな。」


あの担任……普通にPTAまで話いったらヤバイんじゃなかろうか。まああれで好かれてるから、誰も言わないだろうけど。

班はさっきの三匹狼のチームに、俺と元カノと元トモという奇妙なメンバー。さてさて…ひとまず授業頑張るか。

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