第3話 幸せな結末

「ドラゴンってとっても大きいんですね」


 岩陰に隠れ、眩しい程の財宝の前でとぐろを巻いて眠っている。

 小山のようになっている。身長は私の10倍位だろうか。


「狩りの時間だ。作戦は事前の通りだ。俺とゴンザレスがドラゴンの注意を引く。カリンとペルラはサポート。アリア、お前がドラゴンをぶった切る。なぁに、簡単な話さ」

「腕がなるのぉ」


 カリンさんは目を閉じて精神統一を始めている。

 ペルラさんは懐から小瓶を出している。


「それじゃあ、やるぜ」

「ガハハ」


 二人が走り出す。

 ドラゴンが目を覚まし二人を視認する。


「ギャオー!!!」


 大きな尻尾を振り回す。

 すんで所で回避する二人。二人は左右に分かれる。

 ドラゴンは仰け反るような姿勢をとって喉を大きく膨らます。

 ブレスの予備動作だ。


 咄嗟に傍の岩を持ち上げて、力ませにぶん投げる。


「トリャー!!!!」


 岩は口の中に入り、ドラゴンは目を白黒させる。

 羽を広げて飛び立とうする。


「グラビティ!」


 飛び立ちかけたドラゴンはカリンさんの魔法で地面に縫い付けられる。


「アリア、ゴー!」

「はい!」


 ペルラさんの合図で駆け出す渡す。


「シルフ、彼女に羽を与えて」


 シルフが私に纏わり付いて身体が羽のように軽くなる。

 ダッシュが加速する。


「ジャンプ!」

「はぁぁぁぁ!!!」


 重心を下げてジャンプする。10メートル程飛び上がる。眼下にドラゴンがいる。

 ドラゴンスレイヤーを振りかぶり、渾身の力で振り抜く。

 ドラゴンの首が宙を舞う。地響きと共に地面に落下する。


「よっしゃ! アリア、よくやった」


 首に手を回し、レオンが私の頭をワシャワシャする。


「あはははは」


 変な声が出てくる私。

 みんな無事。世界樹は目の前。早く探さなきゃ。


ーーーーー


「ガハハ、こりゃぁどうやっても全部持ち帰れないわい。いやぁ酒が楽しみだ」

「お前はアリアを見習え。あっちは無欲すぎる気がするけどな」


 金銀財宝の更に奥で、僅かに発光する私の身長程度の気がある。

 名前と比べて小さい。まだ苗木なのかも知れない。

 葉っぱを3枚、なるべく丁寧に枝から抜く。


「まだ小さいのにごめんね」


 葉っぱを採ったら革袋にしまう。


「みんな、ありがとう! 私、お嬢様の元に帰ります!」

「おう、達者でな!ガハハ」

「お前も気をつけろよ」

「また一緒に冒険しましょ」

「バイバイ、アリア、サービスよ」


 ペルラがシルフを遣わさせてくれた。身体が羽が生えたように軽い。

 お嬢様、もうちょっとだけ辛抱ください。きっと一緒に野山で遊べますから。


ーーーーー


「旦那様、奥様、只今戻りました」


 22時過ぎにお屋敷に到着しました。

 バンバンとドアを叩き続ける。


「世界樹の葉は?」

「こちらに」


 革袋からうっすらと発光し続ける葉っぱを見せると、奥様は目を大きく見開き、口元を手で押さえる。


「あなた、アリアが戻ってきましたよ」

「おおっ、本当か」


 お嬢様の部屋に駆け込む3人。

 タイラー先生に葉っぱを差し出す。


「先生、よろしくお願いします」

「任せてくれ」


 乳鉢を取り出すと葉をすりつぶす。水を入れる。


「アリア・・・」

「これできっと良くなります。ご安心ください」


 お嬢様の手を両手で握る。

 先生がお嬢様の口元に水を注ぐこむ。

 か細く荒かった呼吸が徐々にゆっくりと大きな呼吸に変わってゆく。


「アリア、あなたはこの子の命の恩人よ」

「君の勇気に感謝する。ありがとう」


 旦那様と奥様が互いに身を寄せあっている。噛み締めあっている。


ーーーーー


「アリア、こっちに来て」

「はい、お嬢様」


 あの後、お嬢様はすっかり元気になられました。

 今まで外に出られなかった分、こうやって一緒に野山へ駆け巡っております。


「冠を差し上げます。頭をこっちに出して」

「ありがとうございます!」


 お嬢様に跪き、白詰草で作った冠を戴く。


「これからも一緒にいてくれますか?」

「勿論です。ずっとずっとご一緒させてください」

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