最英EX 異世界ハロウィン日和
【前書き】
どうも皆さま、『最弱勇者の英雄譚』作者のハルレッドです。
本日は10月31日、ハロウィン!……と、いう事でハロウィン特別編をお送りしたいと思います。
どうぞ、楽しんでいただければ幸いです。
……あ、それと僕はお菓子は要らないので、トリックオア高評価でよろ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
【愛の力】
「トリックオアトリート、です! ハルマ君!」
狼の仮装を身に纏い、ご機嫌な様子でハルマにお決まりのセリフを投げかけるシャンプー。……そう、今日は皆さんご存じハロウィンである。
ここ異世界も(お察しの通り)かつてユウキによってハロウィンが齎されたことより、今日はどこもかしかもハロウィン一色となっていた。
「お。はいはい、ちゃんと用意しますよ。はい、クッキー」
「……」
そして、そんな雰囲気のなかハルマもしっかりとハロウィン準備は万端の様子。
お決まりのフレーズを投げかけたシャンプーに対し、ハルマは少し早起きして用意した手作りクッキーを渡した……のだが、
「え? クッキーなんてありませんけど?」
「へ? って、あれ?」
何故か渡そうとしていたクッキーは知らぬ間に消滅していた。
……ちゃんと手に持てていなかったのだろうか?
「おかしいな……。あ、ごめんねシャンプー。はい、今度こそクッキー」
「……あの、ないですよ。クッキー」
「え!? あ、あれ!?」
そんなはずはないと手元を見るハルマだったが、やはりクッキーは再び消滅。
何故か影も形もなくなってしまっていた。……これは一体どういう事なんだろうか。
「あれあれ? ハルマ君もしかしてお菓子渡せないんですか? ……それなら、イタズラしないといけませんね!」
「ちょ、ちょっと待って! ある! お菓子はあるんだよ! ほら!」
「ないじゃないですか」
「え!? ちょ、なんでさ!? 何がどうなってんのこれ!?」
「……」
「ん? どうかしたの、ジバちゃん?」
何故か次々と消滅していくハルマのお菓子。
……そんななか、ジバ公は凄い表情でハルマとシャンプーのやりとりを傍目に眺めていた。
「……おそろしく速い早食い。僕でなきゃ見逃しちゃうね」
「へ?」
「いや、なんでもないよ。愛って凄いなって思っただけだから」
「?」
「ほれほれー、早く渡さないとイタズラしちゃいますよー」
「いや、絶対おかしいって! え、ちょこれマジでどういう事!?」
【森王国のハロウィン】
「ついに来たね、エリシュ」
「はい、ついに来たでございますね。王」
「……ハロウィンが、来たね」
「……ハロウィンが来たでございますね」
10月31日、森王国の玉座の間にて。
森王エンキドゥと騎士エリシュは不敵な笑みを浮かべていた。
「待ちに待ったこの日がついに来たよ! ああ、今日まで長かったなぁ……」
「そうでございますね……。今日まで、様々な苦労がございました……」
「ああ、本当に大変だった。だが、その苦労とも今日でおさらば! ついに! 今日こそ私達の努力が実を結ぶんだ!!!」
「はい!」
「……、……良し。それじゃあ……行こうか」
「そうでございますね」
不敵な笑みから一転、神妙な顔つきになった二人。
そして彼らはその表情のまま王城の外へ。そしてそのまま彼女たちが向かって行ったのは……。
―畑―
「王! これはかなり育ちがいいでございますよ!」
「おお、ほんとだ! あ、でもこれもなかなか良い感じじゃないかい?」
「そうでございますね! うん! 今年のカボチャも豊作でございます!」
まるで子供のような無邪気でにこやかな笑みを浮かべる二人。
彼女たちが大変嬉しそうに収穫していたのは……カボチャであった。
「ハロウィンはカボチャがメインなんだろう? なら、これだけあればきっと皆喜ぶだろうね!」
「ええ、そのはずでございます!」
「……」
ふんす、と自慢げな様子で大変丁寧に育てられたのであろうカボチャを収穫していく二人。確かにそのカボチャはとても綺麗な緑色をしており、身も詰まっていて大変美味しそうであった。……が、
「……あの」
現実は、非情である。
「ん?」
「その、盛り上がってるところ本当に申し訳ありません……。実は……なんですが、ハロウィンのカボチャはそのカボチャではないんです……」
「……、……!?」
「……」
「……マジ?」
「……マジです」
「――ッ!!! ……、……、……」
「……」
……きっと、よほどショックだったのだろう。今のソメイ一言で、二人は完全にフリーズしてしまった。
こうして儚く散った悲しき夢。かの騎士王ソメイにも、この夢は叶えることが出来なかったのであった……。
【二刀流】
「ああ……。あああぁぁぁぁぁ……」
床に突っ伏し顔を真っ赤にしながら俯くハルマ。
その様子からして、どうやら彼は結局お菓子消滅の謎を解き明かすことが出来ず、シャンプーにイタズラされてしまったようだ。
「いやー……良い。ハロウィンってほんと凄く良いイベントですね!」
「……どこがだよ。ああ、もう……マジでなんでお菓子消えたのさ……」
一体どんなイタズラをしたのだろうか。
シャンプーはやけに活力と歓喜に満ちた表情で心の底からそう呟く。
一方ハルマはイタズラが終わってしばらくした今でもまだ立ち直れないようで、床に顔を向けたまま嘆きの声を漏らしていた。……ほんと、一体どんなイタズラをされたのだろうか。
「ふふふ。まあでもこれも全てお菓子を渡さなかったハルマ君が悪いんですよ? 私だってお菓子を貰えていればあんな事をしなかったのです」
「……ほんとかよ」
「モチロン、ホントデスヨ」
「……」
……恐ろしく分かりやすいメチャクチャ嘘くさい反応。
だが、今更それを詳しく問い詰めたところで意味はないので、とりあえずハルマはこの話題はこの辺までにしておく。……どうせ十中八九、嘘ついてるだろうけど。
「……」
……さて、まあそんな訳で見事ハロウィンに大敗北し、絶賛床に突っ伏し中のハルマ。だが彼もただ負けっぱなしで終わるつもりは毛頭なかった。
寧ろ彼のターンはここから。くらった屈辱を倍返しにしてやるくらいの心持ちで反撃開始である!
「……シャンプー」
「? なんですか、ハルマくん」
「そういえばまだ俺言ってなかったわ……。……トリックオアトリート!!!」
「――ッ!」
必殺トリックオアトリート返し。
その効果は……まあ、見ての通りである。要するにトリックオアトリートで受けた屈辱はトリックオアトリートで返すという訳だ。
だが――、
――ふふふ……甘いですねハルマ君。貴方がその反撃に出ることくらいとっくに予想済みなのですよ!
英雄の子、シャンプー・トラムデリカはそう簡単には倒せない。
彼女はハルマの必殺トリ(以下略)をしっかりと予想し、既に対策はとっていたのである。……つまり、彼女はしっかりとお菓子所持済みなのだ。
――残念でしたね、ハルマ君。私に必殺ト(以下略)を仕掛けようなど十年早……いや、待てよ?
と、その時だった。そのまま普通にお菓子を渡す直前で、シャンプーの脳裏に一つの案が降臨したのは。
まるで天恵の如くシャンプーの脳に舞い降りた一つの案、それは……、
――これ、もしお菓子渡さなかったら、私ハルマ君にイタズラして貰えるのでは……?
まずそもそもの根本的な理屈を覆すものであった。
だが――、
――そうですよ! よく考えたらなんで私イタズラ回避しようとしてるんです!? ハルマ君にイタズラして、その後され返されるとかただの最高じゃないですか!!!
流石はハルマガチ勢。どうやら彼女はするのも、されるのも全然OK……というか、寧ろカモンカモンなのであった。
……さて、こうなったらもう話は早い。
「……あー! 大変です!」
「ん?」
「私、ついついお菓子を用意し忘れてしまいました! これはイタズラされないといけないですね!」
「え? マジで?」
「はいマジです。ああ、これはもうしょうがないことですね。なんせお菓子を忘れてしまったので! ……では、ハルマ君遠慮なくどうぞ」
「え、え? あ……いや、その……」
「躊躇うことはありません……。どんなイタズラであったとしても私は受ける覚悟ですから! さあ、どうぞ!!!」
「……ちょ、ま……」
予想外にぐいぐいと迫りくるシャンプーに、当初ハルマはイタズラし返すつもりで反撃したくせに、いざ実際にイタズラするとなった途端顔を真っ赤にして動揺し始めてしまった。
結果何も出来ずにしどろもどろするハルマと、一切躊躇うことなくどんどんと突き詰めていくシャンプー。
……どうやら、ハルマの屈辱タイムはまだまだ始まったばかりのようである。
【対策】
「ジバちゃん、トリックオアトリート! お菓子くれなきゃイタズラしちゃいます!」
「えー、それは困ったなー!」
と、全く困ってない顔でそう言うジバ公。誰がどう見てもその顔は究極の至福に満ち満ちていた。
実際、現在の彼の脳内は……、
――やべえ、やべえよ! 魔女の仮装したホムラちゃん超かわええ!!! いや、普段も死ぬ程可愛いけど、今日のホムラちゃんはさらにかわええ!!!
……こんな感じである。一体これのどこが困っていると言うのだろうか。
「さあ、ジバちゃんお菓子をください! じゃないと本当にイタズラしちゃうわよ~」
「あははーそれは困ったなー! それじゃあお菓子を渡さないとー!」
まあ……ジバ公の脳内至福はとりあえず良いとして。
そんな訳でここの二人でもハロウィンの恒例行事が行われていた……訳なのだが、もちろんこちらもこちらで強欲な陰謀もしっかりと存在していた。
つまり、それはどういうことかと言うと、
――……正直、僕はホムラちゃんにイタズラされたい。
こういう事である。
……ま、要するにこっちも大して変わらない事を考えていたという訳だ。
スライムも人間も恋した相手に考えることは大して変わらない。
まあという訳なので、もちろんこちらも当然……、
「あー! これは困った事になったぞ! 僕、お菓子持ってない!」
「え!? ジバちゃん、お菓子持ってないの!?」
「うん! ごめんねホムラちゃん! 僕お菓子ないや!」
こうなる訳である。
そりゃ考えている事が同じでシチュエーションも同じなら、行動も同じになるだろう。これは至って当然の結果だ。
……ところが?
「そっか。じゃあイタズラしないといけないわね」
「そうだね! しょうがないからね!」
「……それじゃ、今からジバちゃんのバスケットベットをびちゃびちゃにしちゃいます!」
「わー! それは大変……、……え?」
「ん?」
「……えっと、ごめん。ホムラちゃん、もう一回言ってくれるかな?」
「え? だから、ジバちゃんのバスケットベットをびちゃびちゃにするって」
「!? ちょ、何そのマジで嫌なイタズラ!? なんで天使のように純情なホムラちゃんがそんな悪質な……――ッ! おいこらハルマァ!!!」
と、推理してすぐに犯人を特定し、心からの憤怒の声を上げるジバ公。
だがその時既に遅し、ハルマはもう何処かへと出かけてしまっている。が、ジバ公はそれを追う訳にもいかなかった。
何故なら今はそれよりもジバ公には優先すべきことがあるからである。それは、
「えーっと、ジバちゃんのベットってどこだっけ?」
「――!!! やめて! それされたら夜までに乾かないから!!!」
……さあ、果たしてジバ公は本日の安眠を守ることが出来るのだろうか。
【勘違い】
「……」
「
「ああ!? 俺とトリクろうってのか、てめえ!?」
「……。……あのー、アラドヴァル。これは?」
「ハロウィンだけど? ハロウィンってこういうイベントだろ?」
「全然違うわ!!! こんなのただの脅迫……いや、脅迫ですらねえ!!!」
「え?」
流石は武の国、ケルト。
どうやら、ここではハロウィンすら恐ろしい命のやりとりになってしまうようであった。めでたしめでたし。
「いや、何が!?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
【後書き雑談トピックス】
ちなみにハロウィンのカボチャはそれ専用の黄色のカボチャがあるみたいです。
……まあでも、ハロウィンってカボチャ料理たくさん出たりしますし、きっとエンキドゥ王とエリシュの努力も無駄ではない……はず。
なおメタ的な話をすると作者は一ミリもハロウィンと接点ありません。
だって俺、そういうイベントで盛り上がったりするタイプの人間じゃないし……。
ロンゴ「どうでしょう、マーリン。お化けの仮装をしてみました」
マーリ「王。それシーツに穴開けて被っただけですよね?」
ロンゴ「……。やはり……これはダメでしたか」
マーリ「いや、別にダメって訳では……」
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