第100話 そして、これからも
【前書き】
今回のお話で100話になります!
これまでの皆様のご声援あって、ここまでやってこれました。
ここまでたくさんの感想やレビューありがとうございました。
まだまだ先は長いけど、今後ともよろしくお願いします!
あ、100話のご祝儀に感想とかたくさん言ってくれてもいいのよ?(チラチラッ
(この前書きに既視感ある人はあれを読んでいる方ですね)
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「朝、か……」
牛老角との激闘から一夜明け、ハルマは王城の客室で目を覚ます。
目線の先にあるのはまだ見覚えのない天井、しかしお馴染みの某セリフは前にもう言えたので今回は言わないでおいた。そう何度も同じネタばかり使うのは面白くないだろう。(自己紹介ネタ? さあ、なんのことやら)
「ソメイは……もう起きてどっか行ったのか。アイツ、いつも何時に起きてるんだろうな」
とりあえずベットから身体を起こすハルマ。そしてそのまま隣のベットに視線を移したのだが、ソメイはもう起きておりそこにはいなかった。
時計を見ると今の時刻は朝6時。この時間よりもさらに前に起きているとは、なんとも早起きなものである。昨日はあれだけ戦ったのだから、身体も疲れているだろうに……疲れ、ちゃんと取れているのだろうか?
「今度ちゃんと眠れてるのか聞いておくか……。で、一方そんなに疲れてはいないであろうジバ公は今もぐっすり、ですか。まあ、コイツの場合は、疲れてようが疲れてなかろうがあんまり関係ないんだけども」
バスケットを加工して(ハルマが)作った専用ベットの中で、猫みたいに丸まっているジバ公は未だにぐーぐーと熟睡中。
まあジバ公の寝坊助は今に始まったことではないので、何となくこれは予想出来てはいたが。(なおホムラに声掛けられるとすぐに起きる模様)
……さて、これで一通り目に映る範囲の現状確認は終了。が、特に何も問題が起きたりはしておらず、平穏な朝そのものだった。
そのことを確認しハルマは小さくほっと一息。
「……うん、特に何事もなく朝を迎えたみたいだな。良かった良かった」
目を覚ましたら、とりあえず現状確認。これが最近のハルマの日課だった。
それはなんとも慎重すぎるような気がしないでもないが、ここは常識が通じない異世界である以上そう油断も出来ないのだ。実際、前に1回目が覚めたら突然襲撃が起きた、なんてこともあったのだし。
特に今回に関しては昨日まで戦っていたのもあって、少々いつもより不安も大きかったのである。……まあ、実際のところは寧ろ気が抜けるくらいになんともなかったのだが。
「さてと、それじゃあ朝の準備始めますか。ジバ公、起きろー。朝だぞー」
「ん……ちっ……ぁ゛……?」
「……起こして、すみません。どうぞ……ごゆっくりお休みください」
「うー……」
単純に怖い。
……どうやら寝起きに不機嫌になるのは、人もスライムも変わらないようである。
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さて、そんな訳で普通に怖かったジバ公はそっと寝かせたままにし、ハルマは一人で朝の準備を済ませていく。
まあ準備と言っても、着替えて、用意された朝食を食べて、歯を磨くくらいなのだが。なおホムラたちは既に全部済ませたようで、朝食は一人で食べることになったハルマだった。
「一人で食べる朝ご飯ってあんなに寂しいのね……。部屋が広かったぶん余計に寂しさが強かったよ」
「じゃあ僕を起こしてくれればいいじゃん。てか、なんでこんな時間まで起こしてくれないんだよ……」
「起こしたわ! 起こしたけどお前がメチャクチャ怖かったから、やむを得ずそのままにしたんですぅー!」
「え、そうなの?」
「おまけに自覚なしか! タチ悪すぎるだろ、お前!!!」
起こして、と頼むくせに起こしたらメチャクチャ怖く、おまえに本人にそのことを指摘しても覚えていないとかいう最悪仕様。
……まさに完全な詰み状態である、これには牛老角の【権能】を突破したハルマもお手上げだ。
「やれやれ……。……それじゃ、行くぞジバ公。もうホムラ達は先に行ってるってさ」
「? どこに?」
「どこにって……エンキドゥさんの所だよ。昨日こととか、これからのことで話があるんだと」
「なるほど。まあそういう事なら、それは良いんだけどさ。……え? 僕がご飯食べたりしている時間は?」
「……ない」
「は!? そんな殺生な!!!」
「いや、こんな時間まで起きないのが悪いんだろうが!!!」
ちなみに現在の時刻は10時過ぎ。
まあ流石にこの時間まで寝ているの人は置いて行かれてもしかないだろう。……まあ、休日とかだと割とこんな時間まで寝てることも多々あるが。
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てな訳で、文字通り『朝飯前』状態になってしまったジバ公は、ハルマの頭の上でぶつくさ文句を言っておりました。
一応、『一人だけご飯を食べている』という選択肢もあったのだが、流石にそれは嫌だったようである。……残念ながら、ハルマはあの孤独感を共有することは出来ませんでした。
「これは選択肢失敗√だぜ、ジバ公。もう1個の方を選んでいれば、俺の好感度は50は上がっただろうに……」
「知らねえよ。あと、お前のとの好感度は特に気にしていないから別にいい」
「おまっ!? 良いのか!? 好感度低すぎると最終的にメインヒロインに裏切られて、殺されたりすることもあるんだぞ!? ……いやー、ホント食の恨みは恐ろしい」
「なんの話してんの、お前?」
いつものパロディートークにもちろんジバ公はついて行けない。まあ、ハルマも最初からついて来れるとは思っていないのだが。
と、そんな感じで変わらぬアホトークをしながら、ハルマとジバ公も玉座の間へ。そこにはもう既に全員揃っており、みんなハルマ達を待っている状態であった。
「おっと、来たね。おはよう、アメミヤ君。昨日はよく眠れたかな?」
「はい、お陰様でぐっすり。特にジバ公はホントによく眠れたみたいですよ」
「ぐっすり過ぎたけどな」
「ふふっ、まあよく眠れたようで良かったよ。……さて、ではこれで全員揃ったね。それじゃあいきなりだけど早速始めようか」
と、ハルマ達が部屋についたことでエンキドゥは早速話の準備を始める。どうやら彼女的にはそれなりに話したいことがあるようだった。
……てな訳で、早速お話開始である。
「……まず初めに。みんな、今回は本当にありがとう。お陰様で、私も本当に助かったよ。今回の襲撃は君達が居なければ乗り越えることは出来なかった」
「いえ、そんな……。大したことはしてないので、そんな気にしないでください」
「いや、今回に関してはお前結構大したことしただろ」
「……まあ、確かに」
実際、今回の戦いにおいてハルマは牛老角の権能を見破るという大活躍をしているのだから、寧ろメチャクチャ大しているのだが……。まあだからといって『大したことあるので、気にしてください』とも言えはしなかった。
流石に事実であったとしても、このセリフは傲慢過ぎるだろう。
「……うーん、それならこの場合なんて言えばいいんだろうか。謙遜すると嫌味みたいに聞こえるし、だからといって受けれいるのも……」
「いや、普通に『どういたしまして』で良いんじゃないか?」
「それだ――! ソメイ、お前頭良いな!」
「どこにでもある普通の回答だと思うんだけどなぁ」
「……」
違う、それは違うんだ。若干呆れた様子でソメイはそう言うが……案外その『普通』というのは難しいものなのである。
なんせハルマからすればここは異世界。つまり果たしてどこまでが『普通』で、どこからが『普通ではない』のかはまったくもって分からないのだ。故に安易にこの世界で『普通』というものを持ち出すことはハルマには出来ないのである。
……決して、『それっぽいフレーズを考えすぎて思いつかなかった』とかではなく、あくまでこういう異世界的な事情で言い出せなかったのだ、……だ!
「なんとなく……ハルマが脳内で無駄な言い訳をしているのは見て取れたわ」
「え、ちょ、そんな! そんな訳、ないし……?」
「嘘下手くそかよ。こないだの演技力どこいった」
「そんな即席で使用できるものじゃあないのよ。演技っていうのはね、日々の積み重ねと数多のイメージトレーニングが合わさって――」
「はい、アメミヤ君。とりあえず演技トークはまた今度にしてもらっていいかな? ちょっとこのままだとまるで話が進まないからね」
「え? あ、すみません……」
エンキドゥに指摘され、自分が話を脱線させつつあることに気付いたハルマは恥ずかしそうな顔をしながら沈黙。
そして再び会話の主導権を握ったエンキドゥは、そのまま今回の話題について話し始めた。
「えっと……ちょっと話がズレちゃったけども、今回私が話したいのは他ならぬ『魔王』についてだよ。……まあ、彼についての文献は後世の影響を考慮してそう多く残されていないから、あまりたくさんの情報は得られなかったんだけど。それでも少しは集められたから良ければ今後の参考にして欲しい」
「――! ありがとうございます!」
魔王、それはハルマ達にとっては一番重要な存在と言っても過言ではない相手だ。だが、如何せんそんな相手でありながら、情報は少なかったのでこのように教えてもらえるのは純粋にありがたい。
……何か少しでも魔王討伐に役立つ情報があるといいのだが。
「さて、では。まず世界を征服することすら可能な力を持つ彼だが……その正体は人間ではない。彼はモンスターと人間の間に生まれたハーフ、なんだそうだ。だから彼は人間の知性と、モンスターの力を合わせもった超人となった……とのことらしい」
「……モンスターと人間のハーフ。そんなことが……あるんですか」
「まあ、やはり普通は聞かない話だけど……その気持ち自体を否定する権利は私達にはないし、その点についてはあまり言及はしないでおこう。とにかく魔王はただの人間ではない、ということを今回は話したかった」
「なるほど、了解です」
まあ、魔王なんて呼ばれてる時点でハルマも普通の人間だとは思っていなかったが。まさかモンスターと人間のハーフ、なんて言われるとは思わなかった。
だが、確かにそれならあの異常な強さも少し納得がいくかもしれない。
「で、そんな彼なんだが……この文献にはその名前も残されていたよ。まさか今の時代にも名前が残った文献があるのは私にも少し意外だった」
「意外……ですか」
「うん。さっきも言ったけど、魔王に関する情報は後世に悪影響を及ぼさないようにと意図的に排除されていたからね。だから今の時代に残るほとんどの文献には魔王が具体的に何をしたのかは記されていないし名前すら載っていないんだよ。……この文献は国の倉庫の奥に眠っていたものだったから、名前やその生い立ちが載っていたんだろう」
「……なるほど。……それで、魔王の名前っていうのは……?」
「まあ、やっぱり気になるよね。うん、まあ名前を口にしたら呪われる、とかはないから安心していいよ」
と、言いつつもエンキドゥは一旦その名を口にする前に一呼吸。
やはり意図的に情報が排除されていてなお、世界に多大な悪印象を残す魔王の名を語るのは少し緊張するらしい。
「……魔王。かつて世界をあと一歩というところまで追い詰め、そしてかの勇者ユウキと激闘を繰り広げた超人。その者の名は――」
「……」
「アルマロス」
「アル……マロス」
「そう、アルマロスだ。通称……といっても100年前のものだけど、彼は魔王アルマロスと呼ばれていたらしい」
「魔王アルマロス……」
どことなくそれっぽいと感じるのは、実際に彼と相対したことがあるからなのか。
元の世界でも探せば外国人に居そうな名前な気もするが、それでもハルマはその名に独特の緊張感と緊迫を感じていた。
「……今、私達はそのアルマロスとの戦いの序曲に立っている訳だ。もし、彼がこのまま本当に復活してしまえば……世界は少しマズいことになるだろうね」
「分かってます。……だからこそ、それを防ぐ為に――」
「オーブを守る。うん、単純だけどそれが一番だと私も思うよ。……ただ、アルマロスは既にオーブを3つに手に入れてしまっているのだろう? なら、気を付けないといけない。彼は8つある内の半分、つまり4つのオーブを手に入れればそれで後は自力で復活出来てしまうそうなんだ。だから、私達に残された猶予は……」
「あと1つ、か……。くそ、なんとなくそう予想はしていたけど……やっぱりそうなのかよ……」
アルマロスがケルトやキャメロットをスルーした時点で、彼にとってオーブは全て集めなくてはいけないものでないことはハルマ達にも分かっていた……が。やはりあと1つしか猶予がない、と言われると良い気分にはならない。
残るオーブはあと2つ。このどちらかが奪われた時点でこちらとしてはアウトなのだ。
「……だからこそ、任せるようで申し訳ないけど君達にはオーブと魔王を求めた旅をこれからも続けてほしい。なに、心配しなくてもこのバビロニアのオーブは私達が死守してみせるさ」
「はい、お願いしますよ。……で、それじゃあ、次に俺達が向かうべきは――?」
「それなら、次に近いオーブのある場所は『海王国オリュンポス』だね。このままマキラ東を北上していった先の海にある国だよ」
「ほう……」
ソメイがさっと地図を取り出しながら説明してくれる。
そこには確かにマキラ東の北に広がる大きな海が描かれていた。そこに、7つめのオーブがあるらしい。
「なるほどね、ってことはまあ結局このままマキラ東を旅していくことに変わりはない感じか」
「そうだね、それ以外には道はないし」
「そっか」
つまり、この大陸の冒険はまだまだ続くということだ。
……まあ、『まだまだ』もなにもまだこのマキラ東に着いてからハルマ達は、『ナインライブス』とこの『バビロニア』しか訪れていないのだが。
「……えっと。それじゃあ、その、早速なんですけど俺達はそろそろ次を目指しそうかと思います」
「うん、まあ少し寂しいけどそれが良いだろう。なに、楽しい時間は全部が解決してからに残しておくさ。……その時はぜひ、君の料理を私にも振る舞ってほしい」
「え。なんで……それを……?」
「なんでって……知らないのかい? アメミヤ君の料理、アラドヴァルが結構いろんなところで褒めちぎってるから……それなりには有名だよ?」
「アラドヴァル――!!!」
知らんところでなんかちょっと恥ずかしいことになっていた。
いや、まあ褒めてくれるのは嬉しいのだけどね? それはそれとして、ってのがあるんですよ……。
てか、これで料理の約束はロンゴミニアドに続き二人目になった。
「……まあ、はい。全部解決したら……その時は」
「うん、楽しみにしているよ。それじゃあ、またいつか元気な顔をみせておくれよ!」
「お達者で! またいつでも来てくださいでございます!」
「はい! ありがとうございました、エンキドゥさん! エリシュさん!」
そんな訳で再びハルマは王と料理の約束を交わし、次なる舞台へと向かって歩みだしていく。
未だ旅の終わりは見えず、不安ばかりの状況は変わらない。
だが、それでも。――いや、それだからこそ。
これからもハルマ達はこの旅を続けていくのだ。
遠き日に世界を脅かした魔王を倒し、再び平穏を取り戻すため。
この旅は、これからも続いていく――。
【後書き雑談トピックス】
投稿4カ月の日にちょうど第100話という粋な計らい(偶然&ギリギリ)。
まあそんな訳なんで、これからもぜひともよろしくお願いいたします。
次回 第101話「瑠璃色の携帯電話」
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