最英EX 最弱勇者の学園譚! ~3時限目~
【前書き】
どうも皆さま、『最弱勇者の英雄譚』作者のハルレッドです。
本日をもちまして、『最弱勇者の英雄譚』は連載開始から3ヶ月となりました!
本当にありがとうございます!&これからもよろしくお願いします。
てな訳で今回も毎月18日恒例の学パロ。
楽しんでいただければ幸いなのですm(_ _"m)
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
――その違和感は、ある日突然やって来た。
「――ッ! ……」
「? どうしたの、ハルマ」
「いや……」
食堂(相変わらずなめろうしか出ない)からの帰り道。特になんともなく普通に廊下を歩いていたハルマとホムラだったのだが、突然ハルマはまるで何かに気が付いたかのように背後に振り返る。
しかし、その先には誰も居ないし、何もない。
ただ長い廊下が行き止りまで続いているだけだ。
「……。ねえ、ホムラは今……何か感じたりした?」
「? 感じる?」
『なんだ? 突然のナンパか? そんなのは僕が起きている間は許さないぞ』
「全然違うから黙ってようね、ジバ公」
とんでもないこと言い出すジバ公にハルマは笑顔で釘をさす。
相変わらずこの謎の自称ネコスライムの言葉は何故かハルマにだけ伝わってきていた。もちろん理由は不明。なんならコイツが何者なのかも不明。
どんなにネコと仮定した場合の矛盾点を指摘しても、『ネコです』での一言で全てを済ませようとするのでどうしようもなかった。
「ハルマ?」
「あ。ごめん、今のは聞き流して」
「別にハルマがジバちゃんとお話してるのはもう慣れっこだけど。……で、何かを感じたか、だっけ?」
「なんかすげえ悲しい慣れをされている事実が発覚したが……まあ今はそれは置いておいておこう。で、そうそう。何か感じなかった?」
「特には何も」
「そっか……」
「……」
ハルマの言いたいことがよく分からず首を傾げるホムラ。
流石に学級委員にして、半獣の賢者と呼ばれる彼女であっても、今の言葉だけで真意を理解出来るほど聡明ではない。
故に、一体どういう意味だったのか質問しようと思ったのだが、
「……、……悪い! ちょっと用事思い出しちゃった。帰るまで結構時間掛かると思うから、ホムラは先に教室戻ってて」
「え? ちょっと待って! そんな急に!」
「それじゃ! また会おう諸君!」
「ちょっと!? あと諸君って私しか居ないんだけど!?」
『ホムラちゃん!? 僕居るよ!?』
ホムラは呼び止めるがハルマはそれに聞く耳は持たず。ジバ公は悲しく訴えるがホムラはそれを聞こえる耳持たず。
そのままハルマは足早とどこかへ退散してしまう。
結果、ホムラは胸中にモヤモヤした気分だけ残され一人にされてしまった。
「……もう! ハルマったら!!!」
これには流石のホムラもご立腹。これは戻ってきたらハルマにちょっとしたお説教が待っていることだろう。まあ、自業自得だが。
『……』
そんななか、ホムラの頭に上にちょこんと座るジバ公は『僕って一人にカウントされてないのか、まあ当然か……』と嘆きつつも、突然退散したハルマを静かな瞳で見つめていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……っと」
さて、一方違和感ありありの退散を果たしたハルマはというと……。
「ここなら良いだろう」
現在彼は3階のとある教室に訪れていた。
そこは、現在はほぼ使われてない多目的室。よっぽどのことでもない限り誰も入ってこない埃にまみれた狭い教室だ。
そんな教室にハルマは一直線で訪れた。その理由は掃除をする――ためではなく、
「出て来いよ。ここなら他には誰も居ないぜ?」
「――ッ!」
感じた違和感の正体を突き止める為だ。
先程感じた違和感を、ハルマは誰かからの視線だったのではないかと推測した。
ならばその主に出てきて貰うのに一番最適な方法はなんだろうか、と考えた末に今に至る訳である。
まあ、これはあくまで予想だったので、ただの勘違いだった場合は死ぬほど恥ずかしいのであるが。
だって、誰かが着いて来てると思い誰も居ない部屋にで語りかけるも無言、たんなるただ自意識過剰でした。なんて結果になれば、それは醜態にも程がある。だが、
「よく、分かったね」
無事にそんな醜態をされされることはなく。
しっかりと予想は的中していた。
「完全に気配は消していたつもりだったんだけど……。やはり君には通用しないのかな?」
「俺には、ってどういう意味なのか気になるけど……。その前に」
「?」
「君は誰だ? 申し訳ないけど、俺は君の顔に見覚えはないぞ」
振り返った先に居たのは――一人の少女。
長く綺麗な金髪と吸い込まれそうな碧眼を持った彼女は、ふふんと不敵な笑みを浮かべながらハルマを見据えていた。
「おっと、そうだね。自己紹介は大切だ。そして心配しなくても今が初対面だよ」
「だとすれば距離感ヤバくない? 出会う前からいきなりストーカーとか次元が違い過ぎると思うんだけど」
「別に誰にもそうしてる訳じゃないよ。あと、あれは決してストーキングでもない」
「思い切り尾行しておきながら……?」
「……、……私の名前はガダルカナル」
「ちょ、今無理に誤魔……、え? ガダルカナル!?」
「その様子だと聞き覚えがある感じかな? まあ、光栄なことにこの学園では今も私の名前は結構有名なようだから、君が知っていても不思議ではないけれど」
ガダルカナル、それは確か3年前に卒業した生徒の名前だ。
ホムラから聞いた話によると、彼女は無茶苦茶に頭が良く、この学校の狂気の一つである『図書館摩天楼』の誕生に深く関わっている人物……とのことだったはず。
まあとにかく、一言でいえば『ヤベェ先輩』という訳だ。で、現在何故かそのヤベェ先輩が眼前に居る。
「……。……えっと、俺に何か御用で?」
「急に畏まったね。……うん、君と少し話たいことがあってさ」
「話したいこと?」
「ああ、そうだとも。ねえ、アメミヤ君」
「君は、この学園の狂気に気が付いているんじゃないかい?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「なっ……!」
その言葉に、ハルマはシンプルに驚きを隠せなかった。
それはまさか今になってこの話題に言及されるとは思っていなかったからだ。
「……ふふ」
試すような口調でそう質問するガダルカナル。
そんな彼女の顔は、さながらいたずらっ気に満ちたネコのようであった。
「……学園の、狂気って」
「そのまま、言葉通りだよ」
「……」
この学園のおかしいところであれば、ハルマはもう嫌という程に気づきまくっている。
謎生命体ジバ公、図書館摩天楼、少女司書、獣人のなめろう食堂、半魚人の体育教師、そしてそれら全てに違和感を抱かない生徒達。(なめろうはそうでもなかったが)
普通の学校には絶対にありえない狂気が、この学園にはたくさん潜んでいる。
「なるほど。その様子だとやはり推測は正しかった訳だ。君も気づいているんだね」
「ああ。うん、気付いている。で、気付いている上で一つ質問したいんだけど」
「何だい?」
「あのさ。どうして君はそれが分かったんだ?」
「え? いや、それは見てれば普通に。なんか凄い大袈裟にツッコミ入れまくってたし」
「……あ、いや、そうじゃなくて……。どうして君は俺と同じように違和感を感じなかったのかって意味でね……」
「ああなんだ、そっちか」
普段のツッコミ乱舞を改めて指摘され、恥ずかしさから若干気まずくなるハルマ。だが、今はそれ以上に話の内容の方が気になるので、なんとか恥ずかしさを抑えて会話を続けていく。
「それは僕が学生だった頃の生活によるものだと思うよ」
「どういうこと?」
「それはまら追々ね。それよりも、今回大事なのは君の方だ」
「俺?」
「そうだとも。……君は、何故かこの学園の狂気に気付くことが出来ているとても貴重な存在なんだ。ねえ、なんでそれに気付けるのか何か心当たりはないかい?」
何かに期待するかのような目でガダルカナルはこちらを見つめてくるが……。
残念ながら特に何もないハルマだった。
別に特殊アイテムとかは持ってないし、そういう能力も持ち合わせていない。
「うーん……特にはないかな。あ、でも強いて言うなら『転校生』とか? これはそんなに大事では――
「転校生! 君は転校生なのか!」
「え?」
大して重要でもないと思っていたのに、話してみたら意外といい反応が返ってきた。
どうやら彼女的には『転校生』というのは結構大事なポイントだったらしい。
「やはりそうか。まあそうなんじゃないか、とは思っていたが」
「どゆこと?」
「……実はね。君意外にも居るんだよ、過去にこの学園の狂気に気付いた人物が。……今はもう卒業してしまったが。で、その人物も転校生、いや転生者だった訳だ」
「……なんで今言い直した? なんで転校生をラノベの主人公にした?」
「理由1、かっこいいから。以上」
「……なるほど。……で? つまりは何故か当たり前になっているこの学園の狂気に、唯一転校生だけが気付けるってことなのか? だから俺も普通なの?」
「ああ、恐らくそうだろう。多分元は学園の外部からの人間だから狂気が適用されないんだろうね」
「……」
うむむ、と考えながらガダルカナルは自らの意見を口にする。
まあそんな訳で、地味に謎だった『なんでハルマだけ普通なのか』という疑問は無事解消された。
がしかし、……よく考えたら、まずそれ以上に大事なことが解消されていないことを思いだす。
「ストップ」
「ん?」
「その前に一つ聞かせてくれ。俺が学園の狂気に気付いている事が、君に何の関係ある? 君は結局何の為に俺に会いに来たんだ?」
それは、根本的な彼女の目的だ。
彼女はさっき『ハルマと話すため』とは言っていたが、何故話したいのかまではまだ聞いていない。
別に彼女を警戒したりはしていないが、ここまでいろいろ話されたら気になるのは仕方がないことだろう。
「おっと。すまないね、また大事なことを忘れていた。どうにも話すのは好きなくせに苦手でね。許しておくれ」
「それは別に良いよ。で? 結局何用なわけ?」
「僕の目的、それは至ってシンプルだ。……僕はこの学園を狂気から解放したい。その為に手を貸してほしいんだ」
「ふむ……。まあ、別に手を貸すのは良いけど、狂気から解放したいってのは何で? まあ、確かに変な所だけど……別に大した実害はないだろう?」
ハルマの言う通り、基本的にこの学園がは狂ってこそいるが、別にそれがこちらに害を及ぼすことはない。
強いて言うなら『非常に疲れる』くらいであり、別に怪我をしたりするような類の狂気はは何一つとしてないのである。
故に、何でそんなわざわざ絶対も面倒くさいであろうことをしてまで、狂気から学園を解放したいのかイマイチハルマにはピンとこなかった。
まあ、ただ単純に狂っているから戻したい。というのも分からなくもないが……。
と、ハルマはそう考えていたのだが――
「実害が……ない? とんでもない、あるよ。おおありだ!」
「え?」
ガダルカナルはそう思っていない様子。
寧ろ、何か物凄い害を感じているようである。
「一体、何があるって言うんだ? まさか! 人命が脅かされるような……」
「……食堂さ」
「……、……はい?」
「食堂だよ! あそこ、この狂気のせいでなめろうしか出ないじゃないか! こんなの害以外のなんだと言うんだい!?」
「……」
あれれ~おかしいぞ~。
なんか直前までは凄い真面目な雰囲気だったのに、急に話が馬鹿らしくなった。
いや、まあ確かに昼食毎回固定はちょっと辛いが……。
でも、ええ……。
「頼む! 僕は君の協力が欲しいんだ! 君を逃せば、この学園に次いつ転校生が来るかは分からない! だからこそ、学園に彩りのある昼食を共に取り戻そうじゃないか!」
「……あーうん、まあ俺に出来る範囲なら……」
「! ありがとう!」
突然馬鹿らしくなった話に、一気に気が抜けるハルマ。
真面目な話なのではないかと思ったのが馬鹿だった。
これはこういうものだ、決して真面目系ではないのである。
と、そのタイミングで鳴り響くチャイム。
つまりは昼休み終了の時間である。
「! やべ! 悪い、俺もう戻るわ!」
「ああ、構わないさ。また今度じっくり話すとしよう」
「……うん」
弁当持って来ればそれで良いんじゃないかなぁ……と思いながらも、一応同意。
こうしてハルマとガダルカナルの間に『昼食奪還同盟』が人知れずとして結ばれたのであった。
「……」
走り去っていくハルマの背中を、ガダルカナルは複雑な目で見ていたことに彼は気づかず。
【後書き雑談トピックス】
なんか迷走してる気がするけど気にするな。
多分、きっと、恐らく、未来の僕が良い感じに纏めてくれるはずだから。
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