第82話 大丈夫だから
――目にも留まらぬ、という言葉がある。
それは案外日常生活の中でも耳にする言葉だが、実際にそんな速度にまで至るのはかなり難しい。
何故なら、人間の目というのは脆弱なようでいて案外敏感に出来ているからだ。素早いものを捉えることは出来なくとも、その残像を目に留まらせることくらいは凡人にだって出来る。
故に、言葉通り「目にも留まらぬ」速度を出したいのであれば、それは遥かに常識を凌駕した速さにまで至らなければいけない。
それはそう易々と人間に行えるようなことではないはずだ。
……だが――
現在『雪の集落』で続く苛烈な戦いでは、まるで皮肉かのように戦士たちは何の迷いもなくその速度へと至っていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はあっ!!!」
雷を纏う氷が飛び交う。
その全てが洗練された敵意を纏い、確実に対象を仕留めるべく流れるように空中を滑るのだが――
「ふっ――!」
対象とされた相手は微塵もその意に介することはなく、小さな笑みを零しながら無慈悲に氷を振り払う。
迎撃したのでも、躱したのでもない。何事もなかったかのように簡単に振り払ってしまった。
「もう! 本当にどういう強さなのかしら!? しかもまだ後4倍も強くなる余地があるって言うんだからとことん嫌になるわね!!!」
一切隠すこともなく、紡ぐ言葉に思い切り腹立たしさを乗せるホムラ。
まあ、あんな常識外れにも程がある回避をされてしまえば、いくらか相手に怒りを覚えるは当然のことなのだが。
それに、それをした相手が相手なので、今のホムラは余計に怒りやすい。
「不快感を味合わせたのであれば失敬、非礼を詫びるとしよう。もっとも私は別になにかしたつもりはないのだがな」
「それなら適当な謝罪なんか要らないわ! 余計に腹立つじゃない!!!」
「おっと、そうだったか。失敬失敬」
ハハハと、穏やかに魔王は笑う。当人達の気持ちはともかく、傍から見れば微笑ましい日常の一幕のようにすら感じるほど穏やかに。
ただし、そんななかでも彼の戦いの手は一切緩まってはいないが。
そのまま、魔王は穏やかな笑みを残しながらホムラと交戦を続ける。
戦況は互角。一見するとホムラが劣勢に見えなくもないが、実際はしっかりと均衡は取れていた。
何故なら、
「――ッ!」
この戦いにおいてホムラは一人ではないからだ。
笑いながら戦う魔王が見せた刹那の隙。
その限りなく短い一瞬をソメイは見逃すことはなく、容赦なくその剣をもって斬りかかる。
だが、
「良いぞ! 今のタイミングはなかなかだった! あともう少し速ければ私にも届いていたな!」
「それは、ありがたいアドバイスだ」
魔王はそれにすら追いついてみせる。
ソメイは確かにがら空きだったはずの背中を狙ったのだが、剣が彼に届くその瞬間には魔王はこちらを向いて剣を抑え込んでいた。
まるで、初めからこちらを向いていたかのように。
そんな規格外の反応速度には、流石のソメイも苦笑しかねない。
騎士として今まで数多くの戦場を渡り歩いてきた彼だが、流石にここまでの規格外と戦うの初めてだった。
「ああ……良い! 実に良い! 100年という長い年月が流れようと、世から強者が消えることはなかった! それは素晴らしい、とても素晴らしいことだ!」
「伝承の時代の英雄達と同列のように語られるのは荷が重い。僕はただの騎士であってそれ以上でも、それ以下でもないのだが」
「謙遜するな! 白昼の騎士! お前も、あの賢者も! 勇者ユウキには及ばすとも、100年前の英雄くらいとなら十分に渡り合える強さを持っている! もっと自らを誇ると良い!」
「……生憎、それが出来る立場ではないんだ。僕は」
ボソッと、遠くを見る目でソメイは小さく呟く。
その言葉に魔王は首を傾げるが……その疑問を解消することは叶わない。何故なら、その傾げた首が戻る前にねじ切ろうとする炎が飛来してきたからだ。
「おおっと! ははは、なかなか大胆なことをするじゃないか! だが賢者よ、兄の身体を取り戻すために、その首を斬り落としては本末転倒というものだぞ?」
「舐めないで、それくらいの加減は分かってるわ。まあ、ある程度は重体になるかもしれないけど、それくらいは必要な負傷ね。兄さんならそれくらいは分かってくれるでしょう」
「……。……やれやれ、この身体の主も、なかなか重い信頼と愛を向けられたものだな」
割と本心からの同情と呆れを感じた魔王だったが……今はそこに深く触れている場合ではない。
実際そんなことを気にしているほどは、彼にも余裕はなかった。
何故なら、ホムラは本気で魔王を仕留めようとしているのだから。
ホムラの周囲に顕現する無数の武具。
炎剣、炎槍、炎斧、炎弓、と炎によって形作られた数々の武具が、雪を溶かしながら彼女の周囲にて撃ち放たれる時を待ち望んでいる。
もちろんその武具が飛び込んでいく先は言うまでもない。
「くらえ!!!」
「――!!!」
正面から降り注ぐ炎の雨。
これには流石の魔王も若干余裕の雰囲気が薄らいだが、それを躱すことはソメイが許さなかった。
「なッ! 挟み撃ちか!!!」
「ああ、そうだとも。……だが、出来れば挟み撃ちなんてなんと卑怯な! とは思わないでほしい。ここまで力量差があれば、これくらいは許されるべき行為だと僕は思う」
「!!!」
初めて微弱ではあれど焦りを見せる魔王。
だは、その時には既に遅く。彼は正面と後方の攻撃どちらを追撃するにも間に合わない状況に陥っていた。
× ×
「う、ぐっ……!」
「ソメイ! 大丈夫!?」
「ああ、問題ない。これくらいの傷はどうということはないよ」
黒い煙のなかからソメイが飛び出してくる。
その身体には至る所に傷が(なお半分はホムラの攻撃の流れ弾)あったが、どうやらどれも致命的な傷ではないらしい。
その証拠に、彼はニッと魔王と異なる雰囲気の穏やかな笑みをしてみせた。
「……で、どうなったのかしら」
「……」
未だ立ち込める黒煙。そのなかには魔王が今も居るはずだ。
流石に今の攻撃で倒せる、とまでは思っていないが……いくらかのダーメジくらいは負っていてほしいところ。
黒煙を睨み続けるホムラとソメイ。
段々と薄れていく煙のなかに、確かに魔王の姿はあった。
確かに両方の攻撃をまともにくらったはずの彼は――
「――!!!」
「……ふう」
変わらず両の足で堂々と雪を踏みしめていた。
……だが、流石に彼もノーダメージとまではいかなかったらしい。
明らかに先ほどと比べれば弱っているのが目に見えて分かる。
「……ぐっ! は、ははははは! ああ、本当に良い! ここまで私が傷付いたのはこれで二度目、あの勇者以外ではお前達が初めてだ!」
「それはどうも。……でも、その割にはまだまだ笑ってるじゃない、余裕残ってるってこと?」
「……そう、だな。あると言えばあるし、ないと言えばない」
「?」
変わらず穏やかな笑みを浮かべながら不可解なことを言う魔王。
そのまま彼は、訝し気な表情をするホムラとソメイに言葉の真意を説明し始める。
「賢者、お前はそもそも変に思わなかったのか?」
「……変?」
「そうだ。そっちの騎士は前回居なかったから仕方ないとしても、前に私と遭遇しているお前なら私の動向に違和感を感じてもおかしくないはずだ」
「……」
「気が付かない、か。良いだろう、なら分かりやすく説明してやる。まあ極めて根本的で簡単な話だがな」
穏やかな笑みに変わり、ニッと悪意に満ちた笑みが魔王の表情を彩る。
その満ち満ちた悪意にゾッとした何かを感じた2人は、全身を走る鳥肌を感じながら彼の言葉を聞き続けた。
「私の行動における不可解な点。それは、私があの長老をすぐさま殺さなかったことだ」
「……え? いや、それは前の時も……」
「いいや、違うぞ。確かに私は前回も『別に殺したい訳ではない』とは言ったが、それでも抵抗するのであれば殺すつもりだった。それはお前もよく分かっているはずだが?」
「……」
魔王の言う通り。彼は積極的にそうしないだけで、目的の邪魔をされれば平然と相手を殺すような人物だ。
だからこそ、マルサンク王は泣く泣く彼にオーブを手渡したのである。
「そんな私が何故、長老をすぐさま殺さなかったのか。……分からないか?」
「……、……! ま、まさか!!!」
「で、ではお前は最初から僕達を!!!」
言葉の真意に気付いた2人は、その時初めてその顔に恐れを表した。
その様子を見てまた魔王はニヤリ。
口に出さなくても、今彼が心底こちらを嗤っていることがよく分かる。
「そういうことだ。……さて、それじゃあ――」
「……!」
「第2ラウンドと行こうじゃないか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はあっ……! はあっ……!」
「アメミヤさん大丈夫ですか!? かなり辛そうですが!」
「そ、そうっすね……。実際……めっさ息苦しいですが……止まってる方が……余計に辛くなるんで……気にしないでください……!」
「……分かりました!」
全速力で集落へと走っていくハルマとシャンプー。
シャンプーは割と平然としているが、ハルマはそうもいかない。
ようやく歩き慣れてきた雪道を20分近く全力疾走していれば、そりゃ疲れても無理はないだろう。
というか、正直言うと辛過ぎて若干視界が歪んできていたのだが……それを理由に立ち止まる方が精神的にさらに辛かったのでハルマは走り続ける。
ホムラとソメイが全力で戦っているなか、自らの疲れを理由に怠惰を貪る訳にはいかない。
辛くても苦しくても、足を止める訳にはいかないのだ。
「もうすぐです! もうすぐ集ら――ッ!!!」
「! くそ……! やっぱり……グレンが襲撃して来たのか!?」
視線の先に見えてくるのはボロボロになった集落だ。
建物が崩れ、あちこちで煙が上がり、雪は血に染まって赤くなっている。
子の様子からしても、やはり何か良くないことが起きてしまったのだ。
「ハルマ! 早くホムラちゃん達と合流しよう!」
「分かってる! 急ぎましょう、シャンプーさん!」
「は、はい……!」
目に見えて恐怖しているシャンプーだったが、それでも彼女は足を止めることはなかった。
そのまま、2人は壊滅しかけている集落を奥へ奥へ。
そして、その先には――
「ホムラちゃん!!!」
「……あ、ジバ……ちゃん……?」
「ホムラ、ソメイ! 大丈夫か!?」
「ハ、ハルマ……。すまない……僕らは……」
「馬鹿、喋るな! 傷が開くだろうが!」
傷だらけになって倒れ込むホムラとソメイ。
致命傷……とはまではいかないが、それでも重体であることに変わりはない。
一刻も早く治療を――とハルマは思ったのだが。
「その通りだ。治療を受けるまでは大人しくしておくべきだぞ?」
「――!!!」
聞き覚えのある声が、ハルマの耳に入り込む。
最悪の聞き覚えの声。つまりは――
「グレン……いや、魔王!!!」
「待ちわびたぞ、アメミヤ・ハルマ」
苦しさと怒りに満ちた表情で、声のした方を睨む。
そこには身震いするほどの悪意に満ちた魔王が、悠然とそこに立っていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「まったく……いくら待っても来ないものだから心配になったぞ? よもや逃げ出したのではないかと思ったくらいだ」
「なッ!? 誰が逃げ出したりなんか!!!」
「ははっ、ムキになるな。実際少し思いもしたが、すぐに思い直した。お前がそういう人間ではないことくらいは分かっているさ」
朗々と、まるで昔からの友人のように自らの知るハルマについて語る魔王。
その言葉の内容からも分かるように、前にたった一度邂逅しただけだでも魔王は随分とハルマを買っているようだった。
でなければ、こんなことは言わないだろう。
「……」
「ん? どうした、聞かないのか? 『お前がこんなことをしたのか』と」
「聞かなくても分かることは聞かない主義なんでね。……どう考えてもお前しかいないだろうが。もし逆にこれでお前じゃなかったら、俺は驚きすぎて文字通り腰抜かすわ」
「まずその実力で魔王を前にして、腰を抜かさないことに驚きなのだが……まあいいとしよう。で? その様子だともう大体状況は把握出来たと言ったところか?」
「……まあな。オーブ、もうお前に取られちまった後なんだろ?」
「ご名答。まあ、先ほどと違って流石に待ち惚けている姿を見れば、気付いても当然か」
「……」
ならば屈指の実力を持つホムラとソメイでさえ、敗北してしまったのもそれが原因なのだろう。
魔王はオーブを手に入れる度に8分割された力を取り戻すことが出来る、だからオーブ3つ分になってしまった魔王の力に2人は力及ばなかった、と言ったところか。
「一応お前が居なかった間の筋書きを説明するとこうだ。まず2人はオーブ2つ分の私と交戦。様々な戦法を見せ、なかなかいい勝負をした。しかし……」
「オーブ、か」
「その通り。2人の体力がなくなってきたタイミングで私はオーブを使用し、見事に形勢逆転。2人は成す術もなく敗北……というのが事のあらましだ」
「最初からオーブを使わないあたり、性格の悪さが滲み出てるな」
「私は強欲なものでね。どうしても出し惜しみしてしまう性格なんだよ」
ニヤリと笑いながら魔王は痛烈な皮肉を言い放つ。
もっとも、それが皮肉となるのはホムラとソメイにであり、ハルマには伝わらないことなのだが。
……さて、変わらぬ態度で魔王と語り続けるハルマだったが……。内心では冷や汗で全身だくだくになっていた。。
理由は、現状がはっきり言って史上最強レベルに最悪だから。
主戦力のホムラとソメイが敗北し、集落の人々も倒れた今、戦えるのはハルマ達しかいない。
だがしかしそのハルマ達も、『最弱』のハルマと、ハルマ程ではないにしろ脆弱なジバ公と、戦いに恐怖を感じてしまうシャンプーという最悪の面子。
勝機がまるで見いだせない。
状況の悪さを再確認しより一層しかめるハルマ。
とその時、魔王はようやくシャンプーのことに気付く。
「……ん? なんだ、よく見ればもう一人居るじゃないか」
「――ッ!」
「おっと、いきなりの声掛けで驚かせてしまったかな? で、お前は一体どこの誰……ああ、なるほど。お前はこの村の長老の孫娘か」
「!? ど、どうしてそれを!?」
「それくらい見れば分かるさ。動きの癖や身体のつくり、そういった些細なところに情報はいくらでもある」
当然のことのようにそう言いながら、満足そうな表情になる魔王。
そして彼はシャンプーとハルマを迎え撃つべく、再び戦闘態勢に入ったのだが……。
「……ん?」
その直後に、その表情は訝し気なものに変わる。
「……おい、少女。何故、お前はなにもしない」
「!!!」
「集落の宝であるオーブが奪われそうだというのに、何故長老の孫娘であるお前は――。……、……なるほど、そういうことか」
再びシャンプーを観察し、何か気付いた魔王。
それが彼にとっては面白いことだったのか、その表情は再び笑みに戻る。
悪意と侮蔑に満ちたそれはそれは嫌味な嘲笑いに。
「……お前、私に怯えているな?」
「――ッ! あ、わ、私は――!」
「ははははは! そう無理に取り繕おうとしても無駄だ! 残念だがそれも見れば私には分かる。そうかそうか、私が怖いか!」
「……ぁ、……うぅ」
「これは驚いた! まさか私に一切恐れることもなく果敢に挑んできた、あの英雄の子孫に恐怖されるとは! 私も随分と大層な者になったものだ! それとも何だ? 100年の間に変わったのは私の方ではなく、お前達の気概――」
「黙れ」
「……ん?」
「黙れ、魔王。何も知らないお前如きにこの人を嗤う資格はない」
「ア、アメミヤさん……」
敢えての穏やかな口調に嫌みったらしい皮肉を混ぜてシャンプーを嘲る魔王。
そんな彼の言葉を止めたのは、今までで一番怒りに満ちたハルマの声だ。
その声に満ちた威圧は凄まじく、魔王さえも一瞬たじろき言葉を止めてしまう。
「……シャンプーさん、大丈夫です。あんな奴の言うこと気にする必要ありません。前にも言いましたけど、恐怖するってのは当たり前のことですから」
「で、でも……私は……あの英雄の……!」
「英雄の子だろうと同じですよ。英雄だって人間だし、英雄の子だって人間です。人間は怖いもの、痛いものに恐怖して当然。寧ろあんな人外のキチガイに感覚合わせる方がよっぽど変ですよ」
「アメミヤさん……」
先程の声とは打って変わって慈悲に満ちたハルマの声。
慈しむように。いたわるように。愛おしむように。
シャンプーの恐怖を優しく受け入れる。
「だから、無理はしなくて平気です。怖いのは怖いでしょうがない! だって人間だもの! byみつ――と、ここで本名出したら怒られそうだから、それは流石に自粛。……あれ本名なのか? まあいいか」
「……」
「てな訳で……アイツは俺にお任せくださいな。そんな無理に怖いの我慢して戦う必要なんてこれっぽちもないんですから」
「そ、そんな訳には――!!!」
「大丈夫、……大丈夫だから」
「――!」
そしてハルマは堂々と魔王の前に立ち塞ぐ。
もう先ほどまで感じていた劣勢に対する焦りはない。
彼は恐れることはなく、震えることもなく。寧ろこれから物凄い悪戯に挑む子供のような無邪気な笑みを浮かべながら、魔王の前に立つ。
「『人外のキチガイ』とは……また随分な物言いをしてくれたな」
「おう、どうした? まさかとは思うが、天下の魔王様が弱っちいクソガキの罵詈雑言如きでムカついてるんじゃねえだろうな? 確かに俺の罵倒の切れ味は某金ぴか王の宝具レベルだが、それでもこんなことで一々腹立ててるとかダサ過ぎて笑えてくるぜ? 俺も随分と大層な者になったものだ! ってか?」
「……ほう」
「……そもそもの話。てめえ如き、わざわざシャンプーさんが出張る必要なんかねぇんだよ。勇敢な奴ばっかり贔屓して、臆病な人には手のひらクルクルの悲しみ哀れ罵倒マンなんかが、英雄の子孫サマと一戦交えられると思ってんじゃねぇ。身の程を弁えろクズが」
「そうか。では、あれか? そんな私の相手を英雄の子孫サマの代わりに務めるのが貴様だと?」
「よく分かってんじゃねえか、その通りだ。てめえみたいなクズの相手は最初から俺で十分なんだよ。ちょっと事情が込み合ったおかげで、たまたまホムラやソメイと戦えたからって調子に乗るな」
「その言葉、最後の部分をそっくりそのままお返しするとしよう」
「はっ! 言ってろ、クズが!!!」
向かい合う『最弱』と魔王。
奇遇なことに、2人は同じ感情……抗いがたい憤怒を抱きながら、その場に立っていた。
『最弱』は笑い、嗤いながら。魔王はただただ無表情に。
そして、しばしの間互いに奇妙な睨み合いを続けていたが――
「「――ッ!!!」」
前触れもなく2人は動き出す。
互いに互いへの憤怒を煮えたぎらせながら。
――この瞬間、『最弱』と魔王の戦いが、火蓋を切った。
【次回予告】
次回 第83話「シャンプー・トラムデリカ」
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