~可憐! 美少女たちの休息~
転移の腕輪が使えるようになるまでジックス街で自由時間になりました。
久しぶりのあたしのおうち。
嬉しい~!
「すまんな、セツナ」
「なに、道具のせいにしても仕方あるまい。それに、その道具によって無事に逃げられたのだ。文句を言うとバチが当たるというもの」
バチってなんだろう?
と、思いながらシュユちゃんと一緒にお隣の『黄金の鐘亭』に行くことになった。
せっかくジックス街に戻ってきたんだから、リンリーさんに挨拶しておこうと思ったので。
あと、シュユちゃんを紹介しておきたい。
新しい友達です。
えへへ。
「ねぇねぇ、バチってなぁに?」
「あぁ、天罰のことでござるよ。神さまに怒られる、という感じで言うでござるな」
なるほど。
あたし、バチ当たったことあるよ!
「はい、ここが最初に寝泊りしてた宿だよ」
裏口から案内するのは変なので、中央広場に出てから宿へと入った。
宿の中はいつもどおりの雰囲気。
裕福そうな商人さん達がのんびりと過ごす――フリをしていた。
その狙いは看板娘のリンリーさん……とか言われてるけれど、本当にそうなのかは聞いたことがないので、分かんない。
でもみんながチラチラとリンリーさんを見ているのは分かる。
いや、リンリーさんを見てるんじゃなくて、大きなお胸のリンリーさんを見てる!
ひどい!
もっとリンリーさんを見てあげてよぉ、とは思う。
かわいいのに。
「おっきいでござるなぁ。お金に余裕がある感じでござる」
「お風呂もあるよ」
「ほほぅ。それは良いでござる。素晴らしい」
シュユちゃんもそうだけど、ナユタさんもセツナさんもお風呂は好きっぽい。
義の倭の国ではお風呂が大事~、というか当たり前に毎日お風呂に入る文化らしく。それに加えて、ずっと旅をしてきたので、お風呂になかなか入る機会が少なくなってて。
それでお風呂にはちょっと惹かれてしまうらしい。
でも分かる。
あたしもお風呂好き~。
師匠といっしょに入るときは、いろいろ洗ってもらえるし、洗ってあげるので。
うへへへへへ。
ルビーがいっしょの時は師匠が大変なので、洗ってもらえないのが残念。
でも一生懸命に隠す師匠が可愛いです。
ふひひひひひ。
「リンリーさん。ただいま~!」
「え? あ! パルちゃん!」
受付カウンターでちょっとヒマそうに頬杖を付いていたリンリーさんは、こっちに気付くとキャーと叫んで出てきた。
立ち上がった瞬間にバルンと胸が動いてる。
すごい。
むしろ怖い。
「いつ帰ってきたの!? もっと早く言ってよぉ~!」
「あはは。いま帰ってきたとこだよ~。というか、まだ用事あるから立ち寄っただけ」
そうなの?
と首を傾げるリンリーさんに、あたしとシュユちゃんはうなづいた。
「パルちゃん、そちらの、え~っと、こ、個性的な服の方は……?」
「ニンジャのシュユちゃんだよ」
「ニンジャ!?」
リンリーさんは驚いて声をあげる。
さっきから商人のおじさん達に注目されているけど、より一層と注目されちゃった気がする。
視線がシュユちゃんに集まるけど……すぐにリンリーさんに集まった。
なぜか?
答えは簡単――
「初めまして、リンリー・アウレウムです」
自己紹介したリンリーさんは、シュユちゃんに視線を合わせるためにちょっと前屈みになったので。
おっきなおっぱいの谷間がガッパーと見えた。
師匠がめっちゃ嫌がりそうな光景。
あたし達の後方へ、ずざざざざ、と移動する商人のおじさん達。
そんなことするから、リンリーさんが巨乳なのがイヤだって思っちゃうんだよ。でも、見たくなるのは分かる。あたしも見たい。
むしろ、その谷間に指をツッコミたい。
あったかそう。
「「えい」」
我慢できなくて人差し指を谷間に突っ込んだら、シュユちゃんも同じこと考えてたみたいで。
ふたりでリンリーさんのおっぱいに指をうずめた。
「ひああ!?」
慌てて胸を引っ込めるリンリーさん。
胸を引っ込めるって何?
そうじゃなくって、後ろへと下がる、というのが正解かな。
自分の胸を隠すようにして後ろへと下がるけど……隠しきれてないのが更なる凄さを物語っている。
おそろしいおっぱいだ……
「はっ!? も、申し訳ないでござる! こ、こんな立派な物を目の前にしたのは初めてで、つい」
ご容赦をぉ、とシュユちゃんは土下座した。
なんか最近、しょっちゅう他人の土下座を見てる気がする。
気のせい?
「と、とりあえず休憩もらってくる! 食堂でお話しましょ」
リンリーさんはカウンター奥のスタッフルームに入って行った。
嫌われたわけじゃなさそう、とシュユちゃんはぺったんこのお胸を撫でおろしている。
ついでに、リンリーさんの姿が見えなくなったので商人のおじさん達は早々と解散を始めた。
と、思ったらリンリーさんが奥から出てきたので再集合するおじさん達。
ちょっと面白かったです。
「休憩もらえたから、こっちこっち」
リンリーさんが案内してくれる。
カウンターには宿の主人であるリンリーさんのお父さんがどっかりと座って、ギラン、とにらみを効かせた。
商人さん達が一気に解散していく様子が、かなり面白かったです。
「改めてよろしくね、シュユちゃん。えっと、シュユちゃんとはどこで出会ったの?」
「学園都市で出会ったよ。挨拶した時にあたし達が襲いかかったの」
「え?」
「シュユが返り討ちにしたでござる」
「え?」
ね~、とふたりで首を傾げるようにしてうなづきあった。
リンリーさんがびっくりしながらも食堂に案内してくれて、紅茶とクッキーを出してくれる。
「あ、そうだ。リンリーさんにお土産買って来ようと思ってたけど、なんにもないや」
クッキーを食べながら思い出した。
なにせダンジョンの中から直接こっちに転移してきたので、なんにも持っていない。
「シュユちゃん何か持ってる?」
「これならあるでござるよ。お土産にはならないかもでござるが、お近づきの印にあげるでござる」
シュユちゃんはケースを取り出した。
「お土産なんて、別にいいけど。なぁに、これ?」
リンリーさんがケースを持ち上げると意外な重さにびっくりしてた。
「開けてもいい?」
「いいでござるよ」
なんだろ、とケースのフタを開けたリンリーさんは、テーブルの上に中身をごろごろと出した。
「え?」
もちろん、その中身は金。
「金? いや、そんなはずないよね……い、石? 石のお土産なんて珍しいなぁー、あは、あははははは……」
「金だよ」
「金でござる」
「もらえない!」
なぜかリンリーさんにつっかえされちゃった。
「いえいえ、美味しいお茶とクッキーをごちそうになったでござる。そのお礼を思って受け取って欲しいでござるよ」
「うんうん。ちゃんとしたお土産は、また次に帰ってくるときに買ってくるから待っててね」
「ま、まままま、待って待って、落ち着いて!」
落ち着け、と言われたのであたし達はスンと姿勢を正してリンリーさんを見た。
「落ち着かないで!」
「どっち!?」
もう、リンリーさんったら久しぶりに会えたからテンションあがっちゃって~。
楽しいのは分かるけど、初対面のシュユちゃんに迷惑をかけちゃダメだよ。
「ごめんなさい、取り乱したわ」
「問題ないでござる。金貨一枚にも満たない量でござるから、遠慮しなくていいでござるよ」
「そ、そういうものなの……?」
うんうん、とあたし達はうなづく。
リンリーさんは丁寧にハンカチに金を包むと、ポケットの中に入れようとしてやめた。
「もっと安全な場所……え~っと……」
キョロキョロとするリンリーさんに、あたしはアドバイスする。
「世界一安全な場所があるよ」
「どこどこ?」
「そこでござる」
シュユちゃんも同じこと思ってたのか、指をさした。
リンリーさんの谷間。
「こんなところに重い物いれたら、落ちちゃうでしょ」
冗談でしょ、と思ってるリンリーさんは胸の谷間に金を包んだハンカチを入れてみる。
「……落ちない!」
なぜか、悔しそうだった。
「あたし達はぺったんこで良かったよね~」
「そうでござるよね。この方が愛してもらえるでござる」
ね~、とふたりで笑い合った。
「む。シュユちゃんも、まさかエラントさんの……」
「違うでござる。シュユにはちゃんとご主人さまがいるでござるよ」
「ごしゅ、じんさまって……あの、ご主人さま?」
「どのご主人さまかは分からないけど、ご主人さまでござる。立派な人でカッコいいんでござる。シュユの恩人です」
あ、シュユちゃん最後にござる付けるの忘れてる。
んふふ~、ちょっと照れちゃってるところで本音になっちゃった感じかな~。
「それでその格好……なるほど……」
何かリンリーさんが勝手に納得しちゃってるけど、まぁいっか。
「次は、いつ出発するの?」
「すぐに出発するよ~。休憩に寄っただけ、みたいな感じ」
「そうなんだ。忙しいのね」
「リンリーさんは忙しくなかった? お仕事だいじょうぶ?」
問題ないわ、とリンリーさんは笑う。
「またすぐに帰ってきてね。パルちゃんとのんびりお茶したり、夕飯食べたりしたいわ。ルビーちゃんは元気?」
「自分の部屋で本を読んでるでござる。リンリー殿の挨拶には、また今度、と言ってたでござるよ」
こんな時まで本を読むことないのに。
なんて思うけど。
自分の部屋が一番落ち着くっていうのも分かる。
「相変わらずマイペースね~」
もしも今は夜だったら。
リンリーさんに会いに来たかもしれないけど。
気分じゃなかったら師匠のおねがいも断っちゃうのがルビーなので、マイペースなのは確かかも。
その後、リンリーさんといっしょにお洗濯を手伝ったり、宿のお掃除を手伝ったりして、転移の腕輪がチャージされるのを待った。
「おーい、そろそろ出発するって」
宿にナユタさんが呼びに来てくれる。
ナユタさんを見たリンリーさんがびっくりしてた。魔物、とか、リザードマン、とか言っちゃわないか心配だったけど、リンリーさんは驚いただけで後は普通にお話をしてた。
きっと色んなお客さんがいるから、珍しい種族とかも慣れてるのかもしれない。
さすがリンリーさん。
大人の女だなぁ。
なんて思いました。
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