~卑劣! 出会ってしまった赤い巨乳~
メイド服を二着。
それもサイズは小さめの物。
という微妙な注文にもすぐに答えてくれたメルカトラ氏の素晴らしさを褒め讃えたいのだが、更に申し訳ないことに無料で譲ってもらえることになった。
なんでも――
「一応と作ってはあるのですが、さすがに子どものメイドは雇えませんからなぁ」
というごもっともな意見で、メイド服は使われずに余っていたそうだ。
処分するつもりだったが、良い生地を使っているだけにしまい込んでしまっていたらしい。あまり場所も取らない子どもサイズということもあって余計に処分する機会を失っていたのだろう。
捨てるつもりだったというので無料で貰えることになった。
「子どもが雇えないのは……やはり技術の問題で?」
「それもあるのですが」
メルカトラ氏が屋敷内を見渡す。
そこにあるのは、数々の絵画や調度品だ。
「これらは貴重な物でもあります。人類の宝、というには少々仰々しいですが。それでも二度と作れない品々でもありましょう。それに、いざとなったら売り払ってお金に変えることのできる財産でもあるのです。その手入れを含めますと、やはり普通程度のメイドでもダメでして」
「あぁ、なるほど」
つまり、子どもだからダメなのではなく、『普通のメイド』ではダメということか。
「超一流のみ働ける職場。というわけですね」
「えぇ。ですので一応は子どもサイズも用意していたわけですが。年齢ではなく技術で雇うつもりでしたから。しかし、さすがに今後も出番は無さそうですな。どうぞ遠慮なく持って行ってください。サイズが合うと良いのですが……ところで何に使うんです? 子どもサイズということはプレイではないと思いますが――」
「プレイ……に使ってみたいのはやまやまですが。というか、メルカトラ氏は使ったのですか?」
俺の質問に氏は意味深な笑みを浮かべるだけだった。
こいつ、使ったな。
男ならば誰もが一度は憧れるメイドプレイ。
しかし、貴族でもおいそれとメイドさんに手を出してはいけないので、夢を叶えられる人間は少ない。
「うーむ。俺も結婚したいものですなぁ」
はっはっは、と笑ってごまかしておいた。
まぁ、パルに着せるんだけど。
サチにも着せるつもりだけど。
それはそれでメイドプレイっちゃぁプレイに近いかもしれない。
まぁ、コスプレか。
しかし――嫁ねぇ……
どうにも弟子と結婚する未来っていうのは、まだなんとなく思い浮かばない。というか、そこまで俺に愛想を尽かさず付き合ってくれるのかなぁ、パルは。
今は憧れとか、大人の余裕、みたいなもので好きとか言ってくれてるけど。
あと三年くらい経ったら、近づかないでくださいよ師匠、とか言われそう。
もういっしょにお風呂とかベッドに入ってくれないんだろうなぁ。
師匠は悲しいです。
「婚約指輪と結婚指輪のご相談なら、いつでも歓迎いたしますぞ」
「その時はぜひ」
と、謎の固い握手をしてからメルカトラ氏の豪邸を後にした。
「はぁ~」
ひとつ息を吐き、肩をすくめる。
デカイ家に住むっていうのも、逆に肩がこりそうな気がするなぁ。気ままな盗賊生活がいいのかもしれないが……それもいつまで続けられるか分かったものじゃない。
「手っ取り早くギルドの重鎮にでも納まりたいものだ」
他人を使って他人で金儲けをする。
日々、ちょっと美味しいものが食べられる生活であれば、なお良し。
「勇者が今も頑張ってるっていうのに、贅沢な望みだ」
こんなノンキな夢を見れるっていうのは、あいつのお陰でもある。
勇者が勇者的活動をしているからこそ、いまのところ魔王領は広がっていない。
残念ながら人間領も広がっていないけど。
「さて、そんな勇者を助けるためにも――」
弟子を立派な盗賊に育てあげないといけない。
とか何とか思いつつ王都の街を歩いていると……
「おぁ! 師匠だ!」
と、弟子の声が聞こえてきた。
どうやらお風呂に行ったパルとサチと鉢合わせしたらしい。
「よう、パル。風呂は気持ちよかったか?」
「大変でした! 殺されるかと思った。ねぇ、サチ」
「……うん。わたしは倒れちゃいましたし」
「ん?」
なんだか知らんが、とりあえず何かあったらしい。
内容を聞こうと思ったが、パルとサチの後ろにいた赤毛の女が俺をジロジロと見てニヤリと笑った。
「この男がパル嬢ちゃんの師匠かい?」
「あ、はい。あたしの師匠です!」
「ふ~ん」
と、赤毛のウェーブがかった長髪を揺らしながら女は俺をジロジロと見ながら周囲を廻る。
がっつりと胸元があいた服は、これみよがしに谷間を強調している。
ふむ。
暗器使いだろうか。おそらく、あの谷間に武器を仕込んでいるに違いない。加えて男ならば思わず見てしまう『視線誘導』も兼ねている。うまくいえば『誘惑』のパッシブスキルも発動しているかもしれない。
もっとも――
俺にはな~んにも効かんがな!
はっはっは!
そんな俺の感想は別として、赤毛女は俺をジロジロと見ながら俺の周囲を二週まわった。
なんとも露骨な品定めだ。
「お眼鏡にかなったかな?」
「あぁ。敵うどころか適うどころでもなく、叶うところさ。パル嬢ちゃんも大したもんだと思ってたけど、師匠はそれどころじゃないねぇ」
「そいつはどうも」
巨乳の女性に褒められてもそんなに嬉しくはないが、まぁ一応はお礼を言っておく。
「どうだい、師匠さん。パル嬢ちゃんといっしょに王都の盗賊ギルドに乗り換えないか?」
「移籍か」
盗賊ギルドの拠点を移す、というのは多くは無いが普通に行われる行為だ。もちろんギルドを抜けても殺される訳ではないので、当たり前っちゃぁ当たり前だが。
慣れたホームではない場所に移動して、改めて最初から歩みを進める。
まぁ、ジックス領で手痛い失敗でもすれば考えるが……
「ふむ。ありがたい申し出だが、今は任務の途中でね。学園都市まで遠征する途中だ。さすがに仕事中に鞍替えは出来ない」
「そうかい、残念だ」
赤毛巨乳は肩をすくめた。
あっさりとお断りを受け入れたらしい。
というか移籍を進めてくるってことは幹部レベルってことか。
ここで縁を作っておくのも悪くないが――
「だったら、今晩は王都に泊まっていくんだろ? 一晩付き合ってくれないか?」
え~……
そういう誘われ方をするとは思わなかったんですけど~……
「ダメです!」
さてどう言い訳して断ろうか、と思ってたら先にパルが声をあげてくれた。
素晴らしい!
さすが俺の弟子だ。師匠を立ててくれる、とはこの事か。
「師匠はロリコンですから、お姉さんの相手はできませんよ!」
「――ぱぁ~るぅ~!」
「はい、なんですか師匠? あいだだだだだだだ!?」
俺は師匠の地位をどん底まで堕としたダメダメ弟子の額に連続でデコピンを炸裂させてやった。速度優先、連打優先のために威力はそこまで強くないが。
それでも連続で五発、同じ場所に喰らわせてやった。
ちょっとだけ赤くなったおでこを抑えながらパルはきゃぁきゃぁと騒いで逃げ出した。
「あっはっは! あんた小児性恋愛体質か」
「なんだそのオブラートに包みまくった言葉は」
赤毛巨乳がニヤニヤと俺を見ている。
怖い。
通報されちゃう……
「いやいや、なんでもないよ。なんでこいつメイド服なんか持ってるんだ、しかも二着も。これぜったい今夜はパル嬢ちゃんとサチ嬢ちゃんに着せて遊ぶつもりだからあたしの誘いを断りやがったな、とかひとつも思って無いからね」
「思ってるじゃねぇか……」
はぁ、と俺はため息をついた。
「まぁ個人の性癖はどうでもいいからさ。気が向いたら移籍を考えておくれよ。王都のギルドは規模がでかくて、万年人手不足でね。師匠さんだったら、即戦力だし。パル嬢ちゃんも合わせれば任務の幅が広がるからねぇ。幹部になれば、毎晩パル嬢ちゃんみたいな子を抱けるようになるかもしれないよ?」
「そんな盗賊ギルド、俺が滅ぼしてやる」
「おや、案外マジメなんだね。こりゃ本格的か。イエスロリ・ノータッチ、だっけ?」
小さな少女が好きなのもは別に構わない。
だが、小さな少女を泣かせるヤツは許さない。
ロリコンたちの永遠のテーマだ。
ハリネズミのジレンマに似ている。
好きなのに、手を出しちゃいけないので。
赤毛巨乳が妙に納得した顔で俺を見た。
「まぁ、気が向いたらジックス街のギルドに声をかけてくれ。ギルドの判断に従うし、報酬が良ければ仕事も請け負う。弟子が世話になったみたいだし、それぐらいはするぞ」
「世話になったのはこっちなんだけどね。まぁいいわ。そのうち声をかけるかもしれないから、覚えておいてね」
と、赤毛巨乳はことさら自分の胸を強調するように俺の腕に押し付けた後、ほっぺにキスをしてくる。
それを素早く避けて、巨乳の谷間から俺の腕を脱出させた。
「やるねぇ。あたしのキスを避けたのはあんたが初めてだよ」
「カッコイイ言い回しだが、ただのビッチじゃないか。誰彼かまわずキスをするような女はお断りだ」
「おや。だったら師匠さん一筋になってもいいよ。ほら、パル嬢ちゃんもサチ嬢ちゃんにも出来ないワザを、いっぱい持ってるからね。挟みたくなったらいつでも来なよ」
はっはっは、と笑って。
赤毛巨乳はそのまま手を振りつつ去っていった。
「おぉ、こわいこわい。やっぱり巨乳の女ってのは怖いなぁ……って、なにやってんだふたり共」
見ればパルもサチも自分の胸を両側から挟むようにして谷間を作ろうとしていた。
やめてもらいたい。
今、君たちは一番美しく輝いている姿だというのに。
今のままが、一番可愛い時代だっていうのに!
「師匠、知ってました?」
「なにをだ?」
「女には武器を隠せる場所がいろいろとあるんだって!」
「……知りたくないなぁ」
「あはは!」
無邪気に笑う弟子の頭を撫でつつ。
本気で知りたくはないが、パルに暗器を教えるのは悪いことではないなぁ。
なんて考えつつ。
パルとサチを連れて宿に戻るのだった。
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