第13話 課外授業前夜
「少し休むから冷蔵庫に入れといてね。あとお茶も頂戴」
「急に人使いが荒いね! 入れるけど!」
出雲は楓に指示されるままに冷蔵庫に入れていき、お茶をコップに注いで手渡した。
「ありがとー。疲れた時にはお茶が一番ね! 美味しいわー出雲も飲めば―?」
「飲むー」
出雲も自身のコップにお茶を注いで飲み始めた。
「美味しい! お茶好きだわ」
「そうよね! お茶は美味しい!」
二人がお茶を堪能していると、出雲がハッとした顔をした。楓が帰ってきたら渡すものがあったと思い出したのである。
「そうだ! 紙にサインをして欲しいのがあるの!」
出雲はそう言い、自室に戻って藍からもらった紙を手に取った。そしてその紙をリビングにいる楓に見せた。
「これは何?」
「今度課外授業があって、魔物とかと戦うんだって! 参加するのに親のサインが必要だから、お願いしようかと思って!」
「魔物と戦うの!? そんな危険な授業があるのね……」
「でも比較的安全な場所に行くらしいし、先生も複数人一緒に行くらしいから!」
「それでも危険はあるのだから、心配だわ……」
出雲に楓がそう言うも、出雲が危険はあるけど気を付けると言い続けていると、楓は絶対怪我だけはしないでよと言いながら紙にサインを書いていた。
「ありがとう! うん! 怪我をしないように気を付ける!」
「そうよ。 怪我をしたら家族全員が悲しむわよ」
「そうならないようにする!」
出雲と楓が話していると、奏が正人と共に帰って来た。
「ただいまー! お兄ちゃんもういるのー?」
「ただいま。もう楓もいるのかー?」
奏と正人が話しながら階段を上がっていくと、リビングにいる出雲と楓がお帰りと二人に言った。
「いるよー。ちょうど母さんにサインをもらったところだよー」
「出雲が今度課外活動で魔物がいる地域に行くらしいのよ。それでサインを書いたところよ」
「そうなのか。課外授業なんてのがあるんだな! 行っていいけど怪我だけはするなよな」
「そうだよお兄ちゃん! お兄ちゃんはいつも何かに首を突っ込んだりして怪我をすることが多かったんだから、絶対に気を付けてよね!」
奏達に心配をされた出雲は、頬を軽く掻き始めた。昔から出雲は多くのことに首を突っ込んでは事故に遭い怪我をすることが多かった。そのことを知っていた奏は出雲のことを心配していた。
「心配してくれてありがとう。俺はもう大丈夫だから、首突っ込まないから!」
「本当? 絶対だよ!」
「うん!」
二人がそう話していると、楓がとりあえず着替えなさいよと奏に言った。
「まだ制服だった! 着替えてくる!」
奏がそう言いながら自室に向かって行く。出雲は晩御飯の準備を手伝い始めると、奏がラフな服に着替えてリビングに入ってくると料理を手伝うと言った。
「私も手伝うー! 料理何作るのー?」
「今日はカレーよー」
「カレー! 私好き!」
奏が喜んでいると、出雲が運ぶの手伝ってと話しかけた。奏は分かったと返答をすると、出雲からカレーがかけられている皿を手渡されてテーブルの上に置いて行く。
「カレー早く食べたいー! 早く食べようよ!」
「俺も早く食べたい!」
「はいはい。食べましょう」
「いただきまーす!」
四人はそう言いカレーを食べ始めた。出雲と奏が美味しいと言いながら食べ進め、すぐに食べ終えてしまった。
「美味しかった! 母さんのカレーはやっぱり美味しい!」
「ね! 凄い美味しい!」
二人が美味しいと言い続けていると、正人が本当に美味しいなと二人に同意をしていた。
「でしょう!」
家族で楽しく話しながら夕食を食べ終えた出雲は、課外授業の準備を始めていた。
「この紙には注意事項しか書かれていないけど、何を準備すればいいんだろう? 授業で行くから持ち物はないのかな?」
悩んでいる出雲は、とりあえず持って行くのは絆創膏とか消毒液とかかなと思っていた。寝る前に通学鞄の中に入れると決め、出雲は光属性の本を手に取った。
「この本はもう魔法書って感じでいいのかな? 普通に売っている魔法書は基本的な属性魔法は書かれているけど、この本はまだ一個しか書かれていないし、これから増えると思うけど……」
出雲は唸りながら魔法書を捲っていくと、魔法書を通学鞄の中に静かにいれた。既に夜も遅くなってきたので寝ようと準備を始めた。そして数日後、ついに課外授業の日がやって来た。
出雲は学校に登校をすると、一時間目から六時間目まで本日は課外授業ですと龍雅と藍が話し始める。
「今日は一日課外授業です! ついにやってきましたよ!」
「ついにきた! 楽しみにしてました!」
「怖いけど実力を試すチャンスだわ!」
気合を入れている生徒が多いようで、出雲は溜息を吐いていた。大和や美桜も溜息をついているようで、何やら疲れているようである。
「説得してサインをやっともらえた……あの頑固親父め……」
大和は父親の悪口を言っているようである。美桜も大和と同様に親の悪口を呟いていた。
「お父様に何とか納得をしてもらったけど、罵声を浴びたのは最悪だわ……お前の我儘に付き合わせるなとか親の言うセリフじゃないわよ……」
美桜は父親が酷すぎると何度も呟いているようであった。出雲には周囲が騒いでいるので美桜の声は聞こえていないようである。
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