第12話 課外授業の説明

「出雲も属性の魔法を扱えるようになって良かったな! これで安心かな?」

「まだ安心とは言えないよ。全然属性の魔法を使えないし、みんなから遅れてるからね」

「そうか。何かあれば協力をするから言ってくれよな」

「ありがとう!」


 出雲が大和と話していると、遠くから美桜が目を見開いて驚いていた。なぜなの、どうしてなのと小さな声で何度も繰り返し呟いていた。


「あれはもしかしてお父様が言っていた光属性の魔法? 何であの人が扱えているの!? あれは失われた古代の魔法で、あの魔法を扱える人はいないはず……」

「斑鳩さんどうしたの?」

「顔を強張らせてどうしたの?」

「あ、いえ……なんでもないわ……」


 美桜は友達二人に心配かけてごめんなさいと言い、遠くにいる出雲を見続けていた。そして、大和も試験を難なく終えて授業が終了した。出雲と大和が二人で教室に戻っていくと、美桜がお父様に相談をしないとと呟いていた。


「さて、みんなも学校に慣れてきたと思う。そこで課外授業をしようと思う」


 帰りのホームルームにて龍雅が課外授業をすると言うとクラスメイト達が喜んでいた。


「課外授業! 学期の始めに来るとは聞いてたけど、こんなに早く来るとは思ってなかった!」

「どんな場所に行くんだろう! 楽しみだわ!」

「チームとか組むのかな!? 一緒に組もうぜ!」


 クラスメイト達が楽しく話していると、藍が静かにしてと言い始める。静かになった生徒達を見た藍は、プリントを配り始めた。


「このプリントをよく見て、ご両親のサインと自身のサインを右下の欄に書いてね」


 藍が説明をすると、龍雅が付け加えようと前に出た。


「今回の課外授業は比較的安全な地帯に行くが、魔物が存在する場所でもある。私達二人と教師陣が数名参加をするが、油断してはダメだぞ」

「分かりました! 気を付けまーす!」

「私も! 気合を入れます!」


 クラスメイト達がそう返事をしている中で、出雲は困惑をしていた。


「まだ始まったばかりで、もう遠征!? 流石国立中央魔法学校だけど、属性の魔法を今日たった一つだけ扱えるようになったばかりだぞ!?」


 たった一つだけ属性の魔法を使えたばかりの出雲にとって、この課外授業は過酷なものになりそうであった。国立中央魔法学校高等部では、学期のいずれかの季節に数回課外授業を行い、実戦の感覚や魔物との戦いの感覚を感じる授業である。


 この課外授業は学年やカリキュラムの進行度によって行く場所が選ばれることとなっている。今回は入学からそれほど日数が経過しておらず、生徒達に魔物との戦いの経験を積ませたいとのことから安全な魔物が少ない地域を選ぶこととなっていた。


「そのプリントは今回の遠征の注意事項などが書かれているので、よく読んでおいてね」

「ちゃんと読んでサインをもらうんだぞ。 危険が少ないとはいえ、魔物はいるんだからな」


 龍雅と藍が説明をしていると、出雲は大和にくっついていこうと心に決めていた。美桜はそんな出雲の背中を見つつ、お父様が許可をくれるのだろうかと悩んでいた。


「お父様が許可をくれるのかな? くれない気がするんだけど、光属性のことを言えばもらえる可能性は高いわね……」


 美桜は目の前にいる出雲のことを話題に上げれば父親が了承をしてくれるだろうと考え始めていた。


「これでホームルームは終わりだ。来週頭に課外授業に行くから、ちゃんとご両親に見せるんだぞー」

「了承を得ないと参加出来なくなるからねー! 気を付けてよー!」


 龍雅と藍が念を押すと、出雲を含めた全員が分かりましたと声を上げた。それから生徒達は帰り支度を初めた。出雲は大和といつも通りに帰宅するために荷物を纏めた。


「大和一緒に帰ろう?」

「ん? そうだな。帰ろうか」

「何か考えてたの?」


 出雲がそう聞くと、大和は眉毛をピクリと動かした。大和は口をへの字に曲げると、ちょっとなと出雲に返答をした。


「親に見せるのが面倒でね。仲が悪いんだよ俺の家族」

「そうなの? 俺の家は仲良い方かな? 結構家族全員で出かけたり笑い合ったりしてるし」

「そうなのか? そういう家族が一番だと思うよ。冷めきった家族とか地獄でしかないからな」


 大和は出雲の家族を羨ましいと何度も言っていた。羨ましいと聞いた出雲は、大和の家はどんな家族関係なのか少し気になっていた。出雲と大和は学校を出て、通学路を歩きながら談笑をしていた。二人は課外授業のことや魔法のことを話しているようである。


「しかしもう課外授業とは速すぎるな。もっと後かと思ってたよ」

「そうなの? 例年はもっと後ろの時期なの?」

「聞いた話だけど、三学期末に例年は行っているらしいよ」

「そうなの!? だいぶ早いな……」


 例年より早いことに意味があるのかと考えていたが、いくら考えても答えが出てこない。二人は行けば分かるかと笑い合っていた。


「じゃ、俺はこっちだから。 またな」

「うん! またねー」


 出雲は大和と別れると家路を急いだ。家に到着をするとまだ誰もいなかったので自室にて寛いでいた。光属性の本を開いて見るも、テストで使った光弾の項目しか書かれていないようである。


「もっと光属性の魔法が増えるのかな? でもどうやって増えるのか……他の属性の魔法書は初めから魔法が書かれているし、本屋で普通に買えるから初めから学生が使う範囲の魔法は見れるし……」


 出雲が唸りながら考えていると、物音がしたから聞こえてきた。出雲が静かに下の階に降りると、そこには楓がビニール袋を持っていた。


「母さんかー。物音がしたから誰かと思ったよ」

「私しかいないに決まってるじゃない! 重いからこれ持って!」


 楓は出雲にビニール袋を持たせると、リビングに入ってソファーに座った。

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