第11話 テスト

「本が変わった!? これってもしかして光属性の魔法書になったの!?」

「中を見てみようよ!」


 大和が本を開いてと言うと、出雲は生唾を飲み込みながら本を開いた。すると、一ページ目に再度読めない言語で文字が書かれていた。


「昨日見た文字とはまた違う文字だ。 これどう読むの?」

「俺も見たことがない文字だ……」


 出雲と大和が頭を抱えていると、教師が練習はそこまでだと声を上げた。出雲は何も練習してないと驚き、もう試験なのと落胆していた。


「そろそろ練習時間は終わりだぞー。 並んだ順からそこの的に上手く当ててくれ」


 その言葉を聞いたクラスメイト達は、まだ完全じゃないよと思い思いの言葉を発していた。


「まだ完全に出来ないよー!」

「俺も狙いが定まらなってない!」

「テストだなんて無理だよー!」


 出来ないと言っているクラスメイトが多いなかで、美桜と友達達はやるぞと意気込んでいた。


「斑鳩さんに教わったから私も出来るようになってきたわ! テストで活かすわ!」

「私も斑鳩さんに教わったようにやってみるわ!」

「そうね。 そうすれば必ず出来るわ」


 美桜が二人を鼓舞して生徒達の列に並んでいた。出雲と大和もその列に並んでいく。出雲はその際にどうすればいいんだと冷や汗をかいていた。クラスメイト達が成功し、失敗をしている中で美桜達の出番が迫っていた。先に二人の友達がテストをし、苦戦しながらも成功をしたようである。


「斑鳩さん頑張って!」

「斑鳩さんなら大丈夫よ!」

「ありがとう。 やってみるわね」


 そう言い美桜が右手の掌に神経を集中し、そこに氷魔法の氷塊を発生させた。そして美桜は氷塊と力強く声を発すると、右手の掌に凝縮された氷の塊が勢いよく遠くにある的に衝突した。


「斑鳩美桜、合格!」

「やったね斑鳩さん!」

「凄い勢いと威力だったわ!」

「ありがとう。 でも、もっと良いの出来ると思うわ」


 美桜は今のでは物足りないようで、もっと威力のある氷塊を作れると思っていた。その様子を見た出雲は、俺の番が来ると不安を感じていた。


「次が俺の番なんだけど……どうしよう……」

「やるしかないよ。 その本を使うしかない」


 そう大和に言われた出雲は、そうだよなと返すしかなかった。出雲は自身の名前を呼ばれると、的を撃つために引かれた線まで歩いて行く。テストは校庭の中心に立ち、校庭の端に設置されている的を魔法で攻撃をするテストである。魔法を放つために、出雲は本を開いて謎の文字を凝視し始める。


「この文字を読めれば魔法が……でも読めない……」

「どうした? 属性魔法を発動させて的を壊しなさい」

「すぐにします……」


 出雲がそう返し本の文字を再度見た瞬間、本に書かれている文字が発光し始めた。


「うわ!? 急に本が光った!?」


 出雲が持っている本が突然光りだしたので、教師クラスメイト達が驚いていた。出雲自身も驚いているので、その場が騒然としていた。


「ど、どうしたんですか! 何かしたんですか!?」

「お、俺は何もしていないです! 急にこの本が光って!」


 出雲がそう弁明をすると、教師は早く止めなさいと言う。


「止めようにも止まらなくて!」


 出雲がそう慌てていると、自然と本の発光が収まった。出雲は教師にすみませんと謝ると、光が収まった本を見ることにした。すると、先ほどまで読めなかった文字が読めるようになっていた。


「さっきまで読めなかったのに、文字が読める! 読めるようになってる!」


 出雲が文字が読めると何度も叫んでいた。その出雲の言葉を聞いた教師は、早くしてくださいと怒り気味の口調で出雲に話しかけていた。


「ごめんなさい! すぐにやります!」

「お願いします」


 教師に言われた出雲は本に書かれている魔法を言うことにした。


「光弾!」


 左手を的に向け、魔力を練り上げて左手の掌に集めるイメージをした。すると出雲の左手の掌に光輝く光の球体が出現した。


「これが魔法!? 俺が属性魔法を扱えた!」


 出雲が感激していると、左手の掌から光弾が的に向かって勢いよく飛び出す。出雲が属性魔法を使ったこと、見たことがない魔法を使用したことにより教師を含めたその場にいた全員が驚いていた。


「今何の魔法を使ったんだ? 聞いたことがない魔法だったぞ!」

「あの本が光った時に何かあったのかな?」

「不適格者が何をしたんだ?」


 クラスメイト達が出雲のことを不思議がっていると、大和はやはりそうなのかと何やら考えているようである。


「失われた魔法……あれは本当のことなのか?」


 大和は独り言を呟いていた。美桜は出雲を見て、あの魔法はどこかで聞いたことがあるようなと大和と同様に独り言を呟いていた。


「黒羽君! その魔法は何ですか!?」

「い、いや……俺にも何やら……」

「御手洗先生に聞いてみますから、結果はそのうちに伝えます。 とりあえずテストは合格です」

「ありがとうございます!」


 出雲はそう言い大和のもとに戻っていく。大和は出雲が戻ってきたのを見ると、あの魔法はと聞いた。


「俺もよく分からないけど、光弾って読めたから光属性の魔法だと思う! やっぱり夢の通りに失われた魔法を俺が使えるんだよ!」

「それは分からないけど、属性魔法が使えるようで良かったな!」

「うん! でも現代魔法を使えないから何かしら言われる気がする……」


 出雲のその悩みの通り、現代で認知されている属性魔法を扱えないので、不適格者の烙印を押されたままである。だが、光属性の魔法を扱えることが分かったのでそこだけは嬉しいと感じていた。

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