第10話 謎の本

「待ってよ! 消えないで!」


 出雲が女性がいた場所に手を伸ばすと、意識がそこから遠のく感覚を感じていた。出雲はそのまま勢いよく体を起こすと、目の前に大和が本を読んでいた。


「目が覚めたか? 急に倒れたからみんなが心配してたぞ?」

「ごめん……もらった古い本を読んでたら頭痛がしていた痛みに耐えられなくて」

「あ、そういや先生からもらった本はどうした?」

「え? それなら手にずっと持ってて……あれ? ない……」


 出雲が慌てて周囲を探していると、寝ていたベットの枕元に夢の中で話した女性からもらった本が置いてあった。


「この本は、夢の中でもらった属性魔法の本だ」

「夢の中でもらった? それ本当なの?」

「うん。 夢の中で話していた女性からもらった本で、光属性の魔法を使えるようになるって言ってた」


 大和は光属性と聞いて驚いていた。そんな属性があることは知らないし、現代において光属性などという魔法が存在がなかった。その属性を出雲が使えると聞いて、嘘だと思っていた。


「まさか、そんな属性は確認されていないしその本も先生が改めてくれた本じゃない?」

「そうなのかな? あの夢はただの夢でしかなかったのかな?」


 出雲が唸って考えていると、大和が下校時刻だから帰ろうと出雲に言った。


「嘘でしょ!? もう下校時刻なの!?」

「そうだよ。 うなされながらずっと寝てたよ」

「まじか……今日寝てて学校生活終わった……」

「そういう時もあるさ……」


大和は出雲の右肩を数回叩きながら、床に置いていた出雲の通学鞄を手渡した。


「ほら、持ってきたから」

「ありがとう」


 出雲は感謝の言葉を大和に言うと、職員室によって帰ろうとした。二人は話しながら職員室に移動をすると、そこには龍雅が椅子に座っていた。龍雅を見た出雲は小走りで駆け寄った。


「先生! 迷惑かけてすみません!」


出雲が話しかけると、龍雅は気にする必要はないよと笑顔で言う。


「ありがとうございます。 結構意識失っていたみたいで……」

「出雲君が無事ならそれが一番さ、それに私の研究は進んでいるから問題ないよ」


 出雲は龍雅が発した最後の言葉を聞き取れなかったが、龍雅が心配してくれてよかったと思っていた。


「ありがとうございます! ではこれで失礼します!」

「気を付けて帰るように。 黒羽出雲君……君の存在が私の研究を加速させる……」


 龍雅は職員室から出て行く出雲を横目で見ながら微笑をしていた。その姿を遠くから見ていた藍は、御手洗先生と何やら呟いている様子であった。出雲は大和と学校を後にすると、そのまま駅に向かった。


 家に到着すると、自室のベットに座ってベットに置いてあった謎の白い本を開く。そこには何も書かれておらず、龍雅からもらった本と同じように何も書かれていないようである。


「この本にも何も書かれていないか……本当に俺は光属性を使えるのか?」


 出雲が数ページ捲っても何も書かれていないページが出てくるばかりであった。とりあえずこの本は鞄に入れて置こうと思い、通学鞄に入れることにした。


「俺は本当に光属性なのか?」


 口を尖らせながら悩んでいると、どうしたらいいのかと呟いていた。すると、鞄の中に入れていた白色の魔法書が淡い光を発していた。しかしその光に出雲は気が付かずスマートフォンを操作していた。 


 翌日になると魔法の技術の教師による魔法の授業が行われていた。出雲達は前日とは違い、武器を用いずに魔法の基礎練習や命中度を高めるために的に魔法を当てていた。


「大和は火属性を扱えるから、威力高いな。 的が粉々だよ」

「その代わりに魔力の消費量が少し高いから気を付けないといけないけどな。 すぐ魔力切れになりかねないから」

「そうなのか。 俺は属性魔法を使えないから、基本の一般的な魔法しか使えないよ」


 出雲は教科書に書かれている基本の魔力を固めて放つ魔力球を作っていた。大和はその魔力球を見ると、精度が高いなと言う。


「こういうのしか出来ないからね。 それに入学試験でこの基礎魔法の試験があるから、これだけはと思って練習をしてたんだ」

「そうだったのか。 確かに属性魔法が使えないと基礎魔法を高めるしかないしな」


 大和に言われた出雲は、そうなんだよと苦笑いをしていた。そして、授業が進むと、続々と属性魔法を習得していた。出雲と大和と違う場所で美桜も友達と共に練習をしていた。


「私はこの氷塊って魔法を練習しようかしら。 教えられた氷魔法しか知らないから、こんなにも沢山あるなんて思わなかったわ」

「斑鳩さんはその魔法をするのね! 私はこの風刃にしようかなー」

「なら私は土塊にするわ!」


 美桜は氷の塊を極限まで圧縮してそれを飛ばす魔法を練習することにした。友達二人も美桜の魔法に似た魔法を練習することにし、談笑をしながら楽しそうに練習を始めていた。出雲は楽しそうにしている美桜を見ながら、楽しそうだなと思っていた。大和は出雲に属性魔法でしないとダメみたいだぞと言った。


「そうだっけ!? 俺は使えないんだけど!?」

「さっき側を通り過ぎた教師がそう言ってたよ? 属性魔法で習得したのをあとで見せてもらうって」

「そんなぁ……俺絶対無理じゃん!」


 出雲が落胆をしていると大和があの白い本はどうしたと聞いてきた。


「あれは一応持ってきてるけど、全て何も書かれていなかったよ。 だから教室に置いてある」

「持って来れば? 見た夢の通りなら出雲も魔法が使えるかもしれないよ?」


 そう言われた出雲は教師に鞄から忘れ物を取ってきます言い、教室に向かった。教室で出雲は通学鞄に入れていた白い本を手に取ると、校庭に戻っていく。


「戻ってきたらみんなが魔法放ちまくってた……こんなに差が開いているんだな……」


 そう呟いていた出雲に大和が近寄って来た。大和は出雲に話しかけると本は持ってきたのかと話しかける。


「持ってきたよ! でも途中で中を見たけど何も書かれてなかったよ」

「でも、夢の中で不思議な女の人にもらったんだよね?」

「そうなんだけどなー。 あ、そう言えば頭痛がした時に何か言葉を話したような……」


 出雲が考えていると大和が何か気が付いたのかと聞く。すると出雲は静かに口を開けて、光属性魔法第一節と呟いた。その瞬間、白い本が淡く光り輝いた。


「本が光った!? 何だこれ!?」

「出雲の持っている本が光り始めた!?」


 二人が驚いていると出雲が持っている白い本が金色に変化し、表紙の真ん中には光という文字が出現した。

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