第6話 自己紹介
「お待たせ―! 晩御飯何かなー!」
出雲が楽し気にリビングに入ると、正人と奏が遅いよと出雲に話しかけた。
「寝ちゃってたんだ。 さっき起きたばかりだよー」
「お兄ちゃん夜眠れなくなるよー? 私はゆっくり寛いでいたりテレビを見ていたわよ!」
奏が出雲に言うと、俺もテレビを見ていればよかったと落ち込んでいた。落ち込む出雲を見ていた正人は早く座りなと出雲と楓に言う。
「はーい」
出雲が席に座ると、楓が料理を机の上に置いて行く。夕食はカレーとサラダなようで、奏が喜んでいた。
「やったー! お母さんのカレー美味しいから好き! お兄ちゃんも好きだよね!」
「うん! 好きだよ! この味が大好き!」
出雲と奏が料理に喜んでいると、正人が足元から二つの小さな紙袋を取り出した。
「お父さん何それ!? 何か良いものなの!?」
「突然どうしたのそれ?」
出雲と奏が驚いていると、正人がお祝いだよと言う。
「お兄ちゃんのお祝い!? 良かったねお兄ちゃん! でも、紙袋二つあるよ?」
「もう一つは奏の分だよ。 出雲だけじゃこのプレゼントはダメかと思ってね」
そう言い紙袋を二人に渡し、そして正人は開けてと言う。
「何かなー何かなー。 こ、これって! お父さん!?」
「そんなに驚くモノなの? こ、これって!」
二人が驚くのも無理がなかった。そのプレゼントとは最新式のスマートフォンであったからである。出雲はすぐに箱を開け、奏は箱を見ているようである。
「父さんありがとう! スマートフォン欲しかったんだ!」
「お父さんありがとう! 私も欲しかったの!」
出雲と奏が喜んでいると、正人と楓が優しい顔で微笑んでいた。楓は先に食べちゃいなさいと二人に言うと、二人は急いで食べ進めた。
「美味しい! 美味しいよ母さん!」
「本当に美味しいわ! たくさん食べれる!」
喜びながら二人が食べていると、正人と楓の二人も食べ始めた。四人は談笑しながら食べていると、出雲と奏が瞬く間に食べ終えた。
「早いな二人とも、もっとゆっくり食べないと」
「お父さんが悪いの! プレゼントをくれたから!」
「そうだそうだ!」
二人がそう言うと、正人が返してもらうよと言った。
「ごめんなさーい!」
「取らないでー!」
二人はすぐに謝った。正人と楓は壊さないようにねとだけ言い、食事を再開した。
「電源が入った! 綺麗だし軽いし高性能のやつ! CMでも沢山宣伝してるし!」
「お兄ちゃん! 後で連絡先交換しよ!」
「しようしよう!」
二人がスマートフォンを触りながら話していると、正人と楓が私達とも交換しようと二人に言った。
「お母さん達も交換しよう!」
「ありがとうね。 ほら正人さんもスマートフォンだして」
そんなことをしながら夜が更けていき、四人は寝る準備をし始める。ちなみに、奏は朝になるまでスマートフォンを操作していたので寝不足となったようである。
翌日になると、出雲はもらったスマートフォンを通学鞄に入れて持ち歩くことにした。せっかくもらったのだし、持ち込み禁止ではないのでいいだろうと考えていた。
「よし、準備完了! 学校楽しみだなー。 後ろの席の人は今日登校するのかな? どんな人なんだろう、楽しみだなー」
出雲は心を躍らせながら家を出て学校に向かった。学校に到着をして教室に入ると、既にクラスメイト達は席に座って近くの人と談笑していた。出雲は自分の席に向かうと、大和が近寄ってきた。
「よお! おはよう! 結構ギリギリな時間に来るんだな」
「そんなに遅くはないと思うけど、少しゆったり出来る時間はあると思うよ」
「確かに十分くらい余裕はあるな。 あっそう言えばスマートフォン持ってる?」
「持ってるよ! 昨日父さんからもらったんだ!」
そう言って出雲は通学鞄の中からスマートフォンを取り出した。そのスマートフォンは流線型のフォルムをし、手触りや性能の高さが売りであった。出雲が持っているスマートフォンを見た大和は、最新機種だと驚いていた。
「大人気の機種なのに、よく買えたね! 俺は買えなかったよ!」
「そんなに大人気なの!? 妹の分まで買ってきてたよ!?」
「それは凄いな! 穴場なショップでもあったのかな?」
「それは分からないけど、買ってきてくれたのは嬉しい」
出雲がそう話していると、大和は既に自身の連絡先を出雲のスマートフォンに登録をしていた。
「俺の連絡先を登録しておいたから、いつでも連絡してくれよな!」
「分かった! ありがとう!」
二人がそう話していると予鈴が鳴って生徒達は席に座って静かに待つことにした。それから数分が経過すると、龍雅と藍が教室に入って来た。
「みんなおはよう。 ホームルームの後にロングホームルームとして自己紹介や昨日配れなかった生徒手帳を配るぞ」
「ではホームルームを始めますねー」
龍雅と藍がそう話すと、ホームルームが始まった。その後、続けて一時間目のロングホームルームを始めることとなった。
「さて、ドア側の人から順に自己紹介をしてもらいましょうか!」
藍の言葉を聞いて、ドア側の席の先頭の生徒から自己紹介を始めた。出雲の出番にはまだ遠いので、クラスメイトの自己紹介を眺めていた。大和の番になると、出雲は体と共に大和の方向を向いた。
「東堂大和です。 東奥中学校から来ました。 使える属性は火属性です。 よろしくお願いします」
大和は淡々と自己紹介を終えた。出雲は拍手をしていると、大和がありがとうと出雲に小声で言っていた。その後も滞りなく自己紹介が進むと、出雲の番になった。
「次は……黒羽出雲君ね! 自己紹介をお願いね」
「はい! 分かりました!」
出雲がそう答えて椅子から立ち上がると、突然教室のドアが勢いよく開いた。そのドアから肩を少し超した長さの栗色の長髪の女性が入って来た。
その女性は目鼻立ちがハッキリしている綺麗な顔をしており、二重の目からは医師を強さを感じることが出来た。着ている服は制服であったので昨日来なかった女生徒なのだろうと察することが出来た。
「もしかして斑鳩美桜さんですか?」
「そうです。 遅れて申し訳ありませんでした。 父の仕事の都合で海外に行っておりました」
斑鳩美桜と呼ばれた少女は昨日登校出来なかった理由を龍雅に説明をした。すると藍が聞いているから大丈夫ですよと美桜に優しい口調で言った。
「ありがとうございます。 連絡が出来ない場所にいましたので不安でした」
「もう大丈夫ですから、席は窓側の一番後ろですよ」
藍に言われると、美桜は指示された席に歩いて行く。その際に出雲と目が合うがすぐに視線を外して席に座った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます