第2話 不思議な光
「今日は祝杯だな! 色々な準備もあるから後日手続きなどをしていこうな」
「うん! これで夢が叶うよ!」
「夢って、確か随分前に女の子と約束したんだっけか?」
「そうだよ。国一番の魔法学校で再開しようって約束したんだ」
「約束が叶いそうで良かったな。そのまま多くの夢を抱いて突き進むんだぞ」
「ありがとう!」
出雲が正人と話していると、楓がお祝いの買い物に行ってくるねと二人に言った。奏はその話を扉に耳を当てて聞いていた。奏は勢いよく扉を開けると、私も買い物に行くと楓に元気よく言った。
「私もお兄ちゃんのお祝いをしたいし、買い物に行く! お兄ちゃん期待して待っててね!」
「分かった。楽しみに待ってる!」
出雲が楽しみに待ってると言うと、奏が期待してなさいねと微笑していた。
「俺は部屋でゆっくりしてるね。送られた書類一式は渡しておくね」
「おう。こっちで色々しておくから、今はゆっくり休みな」
「ありがとう。部屋に戻るね」
出雲は正人にありがとうと言って部屋に戻っていく。部屋に到着した出雲は部屋の左側に設置しているベットに寝転がった。
「はぁ……なんとか試験に合格出来て、国立中央魔法学校に入学出来る……これであの時の女の子とまた再会出来るかな……」
出雲は十年前に出会った女の子のことを思い出していた。自身は基礎である身体強化や魔力を体の部位に流して力を増す魔法しか使えない。出雲はその状態で魔法学校に入学して授業についていけるのか、そして女の子に出会って属性魔法が使えないことを知られて嫌われないか不安に思っていた。
「俺には属性魔法を扱える素質がなかった……今判明している属性に当てはまらなかったし……」
出雲が言っている属性魔法とは、火・水・土・風の四属性に加えて、派生している氷属性などの属性魔法である。生まれてくる人は誰しもいずれかの魔法を使えるはずなのだが、出雲はどの属性にも当てはまらない色を纏いながら生まれてきた。
その際に医者や家族が調べてどの属性なのだろうと当てはめるも、どれにも当てはまらなかった。公的機関にも頼んだが、それすらもお手上げであった。出雲はそれ以降属性魔法の練習が出来ずに、この世界の不適格者の烙印を知らず知らずのうちに押されていた。
「俺も属性魔法を扱えたらなぁ……なんで俺は扱えないんだろう……」
出雲はどうしてだろうと思いながら布団を被って目を瞑った。目を瞑っている最中に、出雲はどうしてだろう、なぜだろうと頭の中をその言葉が巡り続けていた。
「俺はどうして属性魔法が扱えないんだ……誰でもどれかの属性を扱えるはずじゃないの?」
どうして、どうしてと考えても答えは見つからない。そんなことを考えていると次第に眠くなってしまい、静かに出雲は寝てしまった。どれくらい寝たのだろうか。出雲が静かに寝ていると不思議な淡い光がベットの脇に立っていた。
その姿は人型であるにも関わらず男とも女とも分からない姿をしていた。その人型をしている淡い光は、寝ている出雲に対して目覚めの時ですと鈴が鳴る声で出雲に語り掛けていた。
「目覚めの時です。あなたの力が目覚める時が来ました……これから多くの試練が訪れることでしょう……しかし、あなたの力は世界を救う力となります。その力で未来への道を繋いで——」
その言葉を言い終えると、人型の淡い光は掻き消えるようにその場から姿を消した。出雲は寝ているのにも関わらず、その人型の淡い光が発した言葉が頭の中で響いていた。出雲は夢の中でその人型の淡い光と会っていた。
夢と現実のどちらが本体か分からないが、出雲はその言葉を聞いてどういう意味なのと夢の中で返答をするも、その言葉は人型の淡い光に届くことはなかった。出雲は夢の中でも人型の淡い光が消えると、静かに目を開けた。一体何が起きたのか分からない出雲は、自身のベットの横から暖かい何かを感じていた。
「なんか暖かい光を感じたけど、気のせいかな? この宙のこの辺りが暖かいんだけどなー」
十二時過ぎの丁度いい昼食時に起きた出雲は、髪の寝ぐせを触りながら不思議な顔をしていた。出雲はゆっくりとベットから出ると、リビングに歩き出す。
「寝てたのにまだ眠い……寝てたはずなのにとてつもない疲労感が……」
頭を右手で抑えながらリビングに入ると、そこには正人達が夕食の準備をしていた。出雲はご飯あるなら呼んでよと口を尖らせて言った。
「ごめんごめん。まだ寝てるかなと思って先に準備をしていたんだ」
「お兄ちゃんを起こしに行ったら爆睡してたから準備が終わるまで寝かせようって優しさだよぉ!」
「それはありがとう! もっと早く起こしてほしかった」
出雲は欠伸をしながら冷蔵庫を開けてお茶をコップに注いだ。その注いだお茶を飲みながら食卓に並べている椅子の一つに座ると正人がカットされているフルーツケーキを出雲の前に置いた。
「これどうしたの?」
「奏が選んだのよ。お兄ちゃんはこういうケーキが好きだって言って」
「そうだったんだ。ありがとう奏! 絶対美味しいやつ!」
奏は喜ぶ出雲を見て良かったと安堵をしていた。出雲は楓が昼食として作ってくれたサンドウィッチと共にフルーツケーキを食べていた。
「美味しい! 母さんの作ってくれたサンドウィッチも最高! 何個でも食べてられる!」
「そう言ってくれてありがたいけど、食べすぎはダメよ? 奏も、そんなに勢いよく食べないの!」
「はーい。気を付けまーす!」
奏が左手を宙に上げて楓に言うと、ゆっくり食べなさいと楓に言われた。
「美味しいから仕方ないわ! 美味しいのが悪い!」
「なら、悪いサンドウィッチは回収しますねー」
「ごめんなさい! 許してー!」
奏はサンドウィッチが置かれている皿を楓に片付けられそうにいなってしまい、楓の腕を涙目で奏は掴んだ。
「持ってかないでぇ……まだ食べたいのー!」
「美味しくて悪いサンドウィッチを食べたいの?」
「食べたいですぅ! ごめんなさぁい!」
奏のその顔を見た楓は、小悪魔な表情を浮かべて奏の前に皿を置いた。奏はありがとうございますと言いながら、泣きそうな顔をしつつサンドウィッチを食べ進めていた。
「相変わらず母さんは怖いな……怒らせないようにしよう……」
「俺もそうする……ていうか、昔に何度か怒らせて家から追い出されているからな俺……」
男二人はそんなことを話しながら静かに昼食を食べていた。その後は家族で談笑をしながらゆっくりと過ごしていた。そして、ついに出雲が国立中央魔法学校高等部に入学する日が来た。
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