第3話 緊張の初登校

 入学式当日。出雲は学校からもらった紺色のブレザーの制服を着ていた。ブレザーの左胸の辺りには校章と刺繍がしてあり、現実に国立中央魔法学校高等部に入学するのだと実感が湧いてきていた。


「ついに入学の日が来た! あの女の子はどんな風に成長しているのかなー。俺の姿を見て嫌わないといいなー」


 出雲は容姿に自信がないので、どんな風に思われるのか不安であった。不安に思いながら学生鞄を右手で掴みながらノートや筆箱を入れていく。出雲は部屋を出る前に当時であった女の子の姿を思い出していた。


「栗色の肩まである優しい印象を感じた髪と、ピンク色の宝石をイメージさせるような綺麗な目をしていたな。それに目鼻立ちがハッキリしている可愛い系の顔をしていて、当時は緊張しすぎて初めはほぼ話せなかったなー」


 出雲がそう思い返していると、楓がそろそろ時間よと教えてくれた。出雲は今行くよと返すと、小走りで階段を下りて一階に移動をした。


「お兄ちゃん遅いよー。先に行っちゃうよ?」

「待ってくれ! 今行くから!」


 出雲が慌てて階段を降りると、奏が制服である紺色のセーラー服を着ながら玄関の前で待っていた。出雲の姿を見た奏は行こうと笑顔で話しかけた。


「お待たせ! じゃ、行こうな!」

「うん! お兄ちゃんは憧れの学校だね! 昔から言ってた女の人に会えるの楽しみ?」


 奏が駅への道を歩きながら、横を歩く出雲に話しかけた。すると、出雲は凄い楽しみだよと返答した。


「楽しみでしかないよ。またあの女の子に会えるかもしれないし、なにより国立中央魔法学校高等部で魔法を習うのが嬉しいよ! 俺も魔法が扱えるようになるかもしれないしね!」

「それもだね! お兄ちゃんが魔法を扱えるようになると嬉しいな!」

「ありがとう。いつも心配かけてごめんな」

「そんなことないよ! お兄ちゃんが頑張っていたり悩んでいることは知ってるから、謝ることはないから!」

「ありがとう!」


 出雲と奏は笑顔で話しながら、地元の駅で電車に乗り込んだ。数駅進んだ先にある駅で二人は分かれた。出雲はそのまま電車の乗り続けて国立中央魔法学校駅で降り、奏は乗り換えで降りた駅で向かい側の電車に乗って中学校がある駅で降りる。


「ここが国立中央魔法学校駅かー。生徒ばかりだ!」


 出雲が入学する国立中央魔法学校高等部がある国立中央魔法学校駅は、中学校から大学院まである国立中央魔法学校グループ全てが集約されている町となっている。国立中央魔法学校の学生街が駅周辺に作られ、奥に行くと研究施設や大学とその関連施設が建てられている。


 出雲が通う国立中央魔法学校高等部は中等部と離れた位置にある敷地に建設されている。向かう道は同じだが、途中の分かれ道で中等部と高等部に分かれる。右に進めば高等部、左に進めば中等部となっている。


 出雲はその道を右に進んでいく。出雲と同じ道を進む人達が多数いるなかで、同じ新入生かなと思いながら道を歩いていた。


「道の両側にある桜並木が綺麗だなー。それに周りにいる人達は新入生なのかな? それとも在校生かな?」


 出雲が周りを見渡しながら道を歩いていると、国立中央魔法学校高等部の校門が見えてきた。黒塗りの校章が頂点に描かれている校門を潜ると、綺麗なガラス張りの四階建ての建物が目に入った。


「綺麗な建物だよな。入学試験で来た時も思ったけど、ガラス張りで綺麗な建物だし、右側には体育館があって左側には講堂があったり建物が多数あって草木も植えてあって楽しい学校生活になりそう!」


 出雲はガラス張りの建物である本校舎の入り口に入ると、多数の下駄箱が見えた。


「確か一クラス四十人で三クラスで一年生が百二十人いて、三年生までいるから三百六十人くらいかな? その全員の下駄箱がここにあるからかなりの生徒がいるな」


 出雲は玄関口を見渡すと多くの生徒達が談笑しながら、各々の下駄箱に向かって上履きに履き替えていた。出雲は左の奥に立て看板が立てられていることに気が付き、その前に移動をした。


「新入生の下駄箱はここです? ここか! えっと……あっ! 俺の名前が紙に書かれてる! 俺は一年一組だ!」


 出雲が喜びながら自身の下駄箱に歩くと、そこには同じクラスメイトと思われる男女様々な人達が履き替えていた。


「同じクラスの人かな? みんな緊張してる? 俺もだけどさ……中々話しかけられない……」


 緊張している出雲は、誰かと話したいが話すきっかけがなくて挙動不審であった。それでも、教室に行けば何とかなると思っていたので、三階にある一年一組に向かった。出雲が三階に上っている階段には、多くの部活動のチラシが貼られていた。そのチラシにはサッカー部やバスケットボール部の他に多数の部活動の名前やイラストが描かれているチラシが三階に渡るまでチラシが貼られ続けていた。


「色々な部活もあるんだな! あっ、この剣闘武闘部って部活気になるな!」


 出雲が部活のことを考えながら階段を上り続けると、ガラスの窓から景色が見えてきた。その景色は天候も相まって遠くまで見通せるほどであった。


「良い景色だ! この景色を三年間見れるって最高!」


 出雲がそう思いながら階段を上っていると、三階に到着した。三階の階段前に一年一組を見つけた。出雲は自身の教室に緊張しながら入った。


「し、失礼しまーす……」


 出雲が静かに教室に入ると、そこにはクラスメイトが既に全員椅子に座っていた。


「よ、よろしくお願いしまーす……」


 出雲は左手で自身の後頭部を触りながら黒板に貼ってある紙に書かれている名前を頼りに席に座る。


「えっと……俺の席は一番窓側の後ろから二列目か。良い位置でよかった」


 出雲は左側の窓から空を見つつ椅子に座る。自身の机には通学鞄をかけられるフックがあるので、そこに通学鞄をかけた。


「クラスメイトは男女半々みたいだな。話している人はいないみたいだ」


 出雲を含めて緊張をしているようで、全員椅子に座って前方の黒板を見ているようであった。知り合い同士はいないようで、全員が初対面であるので、どう話していいのかも分かっていない状況である。

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